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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第2章 建築!!魔王城『タカハシ』
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112 忘れ去られた村

 見かけた村を侵略しようと思った俺たちは、遠くから観察することにした。双眼鏡(そうがんきょう)は開発済みだ。

「通りすがったときにもチラっと見たけど、よく生活できてるよな。こいつら」

 開けた荒野にお粗末な建物が点々と立っていた。細く頼りない木を組み合わせて作った建物は、どうにか枯れた葉っぱで屋根が作ってある程度。壁も申し訳ないぐらいに、ボロい板を立てかけてあるだけだ。

「なんだか寂しい場所だね」

 アクアが同情するように目を伏せる。

 村と呼ぶにはおこがましいくらいに(さび)れている。アクアじゃなくても哀愁(あいしゅう)を覚えちまうぜ。

「みんな元気がないね」

 エアが残念そうに呟いた。村人はみんな、くたびれた老人のように見える。実際に年をくってる人もいるんだろうけど、見た目より若い人もいるかもしれない。

「それにしても、身に着けているものが貧相だね。ミーなら遠慮したいよ。女性の露出(ろしゅつ)大歓迎(だいかんげい)だけどね」

 シャインがほざいた。ハーフ状態から人間状態に戻っていて、みんなより少し身長が高い。青いワイシャツに白くスラットした貴族っぽいパンツを穿()いている。

「よく見てくださいシャイン。男のポロリもありそうですよ」

「やめてくれシェイ。ミーは男の汚いケツなど見たくない」

 シャインとシェイが漫才している。村人たちは使い古したボロ布を身体に巻き、肌をギリギリ隠していた。

不潔(ふけつ)なぁ、感じもするなぁ」

 お風呂どころか川すらない。体臭もキツイかもしれない

活気(かっき)がないですね。こんな場所じゃ張合いもありませんか」

 グラスの言うとおりだ。草木も生えず、動物もいない。襲ってくる人間すらもいないからか、塀すら立ってない。

 シャイン同様、グラスも完全人化の姿をしていた。

 茶色い切れ長の釣り目に、ワイルドな金髪ショートヘアをしている。服は無地の黒タンクトップに群青色のカーゴパンツだ。

「ケッ、張合いのなさそうなやつらだぜ。こいつら侵略しても意味ねぇんじゃねぇか」

 デッドじゃないが毒をはきたい気分もわかる。目的は殺すのではなく労働力にすることだからな。

「でもでもー、女の子も一人いるよー」

「何、どこだ!」

 ヴァリーの一言で全力サーチをする俺。双眼鏡は視野が狭いのがネックだ。おっ、いたいた。

 まだ子供だからか、緑色の瞳はキラキラ輝いていてとてもいい笑顔だ。表情がちゃんと生きている。年齢は小学校、高学年くらいかな。黄土色のボサボサ髪をサイドテールしている。

 場所のせいで肌は薄暗く汚れていて、身体つきも細い。

「ヴァリー。あなたの不用意な発言のせいで、コーイチのロリコンが発動したじゃない」

「チェル。人のロリコンを発作(ほっさ)みたいに言うのはやめてくれ」

「ロリコンは認めるのね」

「おうよ!」

 チェルは呆れたようにため息をはいた。

 認めざるを得ねぇだろ。幼女はあどけなくて、隙だらけで、かわいいんだから。眺めていても警戒(けいかい)されにくいし。

 街ゆくお姉さんの胸とか凝視(ぎょうし)するのは、視線がバレそうな気がして怖いんだぞ。小心者(しょうしんもの)の俺はすぐに目を逸らしちゃうんだからな。

「ねぇ。ロリコンって何」

「それはねーアクア。ヴァリーちゃんたちを愛する人のことだよー」

 ヴァリー。間違っちゃいないけど、アクアに余計な知識をつけるのはやめてくれ。ここは話を逸らさなければ。

「チェル。この村の情報はあるか」

 いかにもマジメくさった感じで双眼鏡を外し、チェルに鋭い視線を向ける。

「忘れ去られた村『ヴェルダネス』総人口は約五〇人。若い村人が稼ぎに出て、食料を持ち帰ることでどうにか存続(そんぞく)しているわ。けど……」

「このままじゃぁ、どの道ぃ……(ほろ)んじゃうねぇ」

 フォーレが言いにくいところを、のんびりと引き継いだ。

「ンだな。いきなり働かせても、あいつらの体力が持たなそうだ」

 まずは栄養バランスのいいメシを与えてやらないとな。開拓(かいたく)はその後だ。

「キヒっ。めんどくせぇから占領(せんりょう)してから考えよぉぜ」

「でもデッド、見た感じ三〇人ぐらいしかいないよー。きっと若いのは出稼ぎ中だよー」

「若いのは後回しでいいでしょう。今は目前の村人を対処しておきたいです」

 シェイの言うとおりだ。俺たちは時間をかけても問題ないが、村人たちのタイムリミットが近そうだ。

「よし、早速だが侵略を開始するぞ。お前らの成長を俺に見せてくれや」

 子供たちを振り返ると、凛々(りり)しい表情で肯定(こうてい)が返ってきた。頼もしい限りだ。思わず口元が(ゆる)んじまうぜ。

「よっしゃ。ヴェルなんやらの村……」

「ヴェルダネスよ」

 チェルが嘆息しながら補足する。

「ヴェルダネスの村人たちに夢を見せてやろうぜ。とびっきりの悪夢(あくむ)をな!」

「おー」

 俺のかけ声に合わせて、子供たちが(とき)の声を上げた。

 やってやるぜ。きっと俺は悪い笑みを浮かべていんだろうな。

「コーイチ。とても笑顔が輝いていてよ。幼稚(ようち)園児(えんじ)が冒険を企て(くわだ )るような微笑ましい笑顔だわ」

 チェルは何を見ているんだか。今から村人襲うんだからな。初めての侵略行為なんだからな。

 村人を言いなりにして労働力にするために、メシを無理やり食わせてやるんだからな!

「よし、行くぜみんな!」

 俺たちは悠々(ゆうゆう)と、正面から歩いていったのだった。


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