10 異様な実験結果
私の目の前でスケルトンとコーイチが楽しそうにじゃれついている。人の気も知らずに、能天気に。
正直、実験がここまで順調にいくとは夢にも思わなかったわ。人間と魔族の配合なんて身勝手な酔狂程度にしか思っていなかったもの。
だけど現段階で成功率は100パーセント。もともと成功しやすいものだったのか、それともコーイチが特殊なのか。
もしかしたら私自身のこともわかるかと思ったけれども、下手にとっつくとわからないことが増えるのね。まぁ、私のことはついでだからいいけれども。
失敗したら失敗したで私の立場が悪くなるけど、ここまで成功してしまうのもマズイ。作った子供が役に立たなければ、使っただけの時間が無駄になってしまう。子供が育つとなれば、5~10年は軽く見積もらなければならない。
これは、やってしまったのかもしれない。
結果的に実験が失敗したら、私が魔王の器じゃないって証明になるんでしょうね。
いけない、酷すぎて笑えてきたわ。全くもってうまくいかないんだから。
視線を向けると、げんなりしながらも口元が笑っているコーイチがいた。
コーイチ、ただのさえない男が面白いほど私を狂わせてくれる。いったいどこまで狂わされるのかしら、ぞっとしないわ。
剣術の練習をしたと思ったら武器に振り回される。鎧は重くて着られない。勉強でさえ全く頭に入っていない。魔法の素質はゼロ。
こんなダメダメな男に何を期待し、そして恐れているのだろう。私は。
ボサついた髪は薄くなっていて疲れているし、背も低くて頼りない。服も貧乏くさい村人の服を好む。何より総合的に弱い。
寝ているときも無防備だし。コーイチが私を襲うと言ったときには、そういう気概もあったのかと感心したのだけれどね。逆に私がコーイチを襲うことを全く考えていないんだもの。気分次第でいつでも殺せるというのに。
わかっていて、コーイチ。あなたの運命は私の手中にあることを。あなたは虫かごの蝶のように脆いのよ。
……やめましょう。考えが卑屈だわ。ホント、調子が狂う。
実験、続けてもいいのかしら。
でも、もう漕ぎ出してしまったものね。最後までやりきってしまおう。
「ほらコーイチ。じゃれついてないで、そろそろ戻るわよ」
従順に返事をし、犬が尻尾を振るように喜んで戻ってきた。この男にはプライドはないのかしら。
私はコーイチを引き連れて部屋へと戻ったわ。