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一個人の心の内

それは、恋と呼ぶにはあまりにも切実で

作者: 樫宮穂月

さあ、契約を交わそう

今、この瞬間から

互いが互いのために存在するのだ

お前が私の

私がお前の生きる理由となる

共に、永劫の地獄のような長く退屈な時を過ごそう

死が、ふたつを分かつまで


誰とは言わない

愛などなくとも構わない

ただ、ほんの少しの好意さえあれば成立するはずなんだ


誰か、助けて

私をここからすくい出して

もう、こんな世界では生きていたくないの

人多し、されど誰ともつながらない

こんな場所でひとりはさびしすぎる

誰か、私のそばにいて下さい

私があなたの存在理由になるから

もう、ひとりじゃないと抱きしめに行くから

ねぇ、どうか顔をあげて

私を見て

それだけで私は生きてゆけるから

どうか――


さあ、契約を交わそう

死が、ふたりを分かつまで


もし一人きりだった場合、病気になった時など、どうすればいい?

世の中持ちつ持たれつ

しかし

与えすぎず、貰いすぎず

お互いに補い合う関係がちょうどいい


「自分がして欲しいことは人にしろ」とは言うが

結局、して欲しいことなんてそれぞれ違う

「黙っていてもわかってくれる」?

そんな期待ははじめからごみ箱に捨てて、言葉にしよう


ロマンティックのかけらもない

そこにあるのはただ切実な望みだけ

「できるだけうまく生きてゆきたい」

身も蓋もない、純粋な願望


さぁ、契約書の用意はできた

サインはお互いの血で、OK?

助けあおう、救いあおう

死が、ふたりを分かつまで


恋なんて甘いものじゃない

そんなものにすがるのはもう止めだ

欲しいのは確かな証

お前の思い、お前の行為、お前の体――


さぁ、契約を結ぼう

契約破棄に必要なものは

「お互いの納得できる理由を示すこと」

ただ、それだけ

ずいぶんと簡単なんだな、なんて言うのは愚か者


戦おう、争おう

理がふたつを分かつまで

選び抜かれた言葉によってなされるそれは

まるで愛の呼びかけのようで

相手を理解しなければ、説得など不可能だ

もっともっと深く知れ

さすれば道は開かれん

言いつくせ、さらけ出せ


さぁ、契約を交わそう

死が、ふたつを分かつまで



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