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Fac diaboli  作者: toshi0517
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ん・・・


もう朝か?


目を閉じていても分かる明るさを感じでそう思い


そう思って目を開けて驚いた



見渡す限り真っ白な空間


「おいおい…どういうことだよ」


そんな言葉が漏れていたのも仕方がないだろう


そもそも昨日は自分の自宅に帰宅した記憶がきちんと残っている


だが起きれば真っ白でだだっ広い空間に1人



そして認めたくないが心の奥底では認めてしまっている自分がいた


「俺死んだんだ…」


そうだ、普通に考えてあり得ない


どんなに軽く見積もっても10km四方が真っ白な空間


上を見上げても天井らしきものが見当たらない


そんな空間が東京にあると思えないし、あればどこかで必ず噂になっているだろう



そんなことを考えていたせいで反応が遅れてしまった


『自分の現状を把握してるなんざ中々優秀な人間じゃないか、くくく』


「だ、誰だ!?」


後ろを振り返ってみると黒一色で統一した服を着た美丈夫がいた


『俺か?お前たちの言葉でいうなら悪魔ってところか』


「あ、あくま…」


一瞬納得ができない、と思ってしまったがすぐに理解できてしまった


美形で100人いれば100人が“イケメン”というだけの容姿だ


人によっては“天使”という人もいるだろう


だが確かにその表情には天使とは言えない後ろ暗いものがあるから醸し出せる艶があった


「でなんでここで悪魔なんだ?こういうときはお約束で神様とかが出てくるんじゃないのか?」


『くくくっ』


そう聞くと急に悪魔が笑いだした


『お約束ときたか、ではお約束とはいったいなんだ?どういったことを指す?』


質問に質問で返され少しムッとしたが聞かれたことに素直を答える


「ミスによって輪廻転生の輪から外れてしまったので代わりに異世界にいく、とかだろ?」


そう答えると彼は矢継ぎ早に質問を繰り返す


『なるほど、ではお前たち人間の考える神とはどんな存在だ?』


そう聞かれたので俺は


「すべてを知っていて間違わない存在?」


と答えた、どうやらこれは彼のおきに召したようだ


笑顔を浮かべながら


『そうだ、その通りだ。神とは全知全能にしてすべてをつかさどる存在だ。そんな奴がこんなところにきてミスをしたと頭を下げると思うか?』


そう言われて初めて俺はそんなことはありえないと気付かされた


『そうだ、やっと理解できたようだな。神のミスではなく俺がお前をここに連れてきた』


「ど、どういうことだよ!?」


『お前が望んでいた違う世界に行きたい、という願いをかなえるために俺がここに連れてきたんだよ』


「なっなんでそんなことをするんだよ!」


『その願いを持っているものの中でお前の魂が一番大きく濁りが少ないからだな』


「魂?」


『あぁ、我々悪魔は契約主義でね、願いをかなえる代わりに対価を必ずもらう。まぁほとんどがそのものの魂何だがな』


そう聞いた瞬間顔から血の気が引いていく


「じ、じゃあ俺は異世界についたらすぐに殺されるのか…?」



『ん?転生や世界移動は寿命などがきてからだな。そのかわり死んだら俺たちのエネルギーになるから二度と転生なんかはできなくなるがな』


「そうか…その代償は何かあるのか?」


『輪廻の輪から外れるということは存在がなくなるということだ』


「だから転生できなくなるんだろ?」


『違うな“存在がなかったことになる”んだ』


「だから…っ!!」


『そうだ、分かったようだな、過去現在未来それらがすべてなかったことになる、家族友人恋人の記憶からなくなり過去にお前の魂があった時から存在が消える。歴史に名を遺した英傑であったとしても別の存在が代わりにあてがわれる。文字通りこの世から消える』


完全に言葉が出てこなくなってしまった


自分が今まで生きてきた26年間がすべて否定されてしまう


そうなったときに人はどう思うか


怒り、憤り、戸惑い、すべて違う


正しい感情は悲しみと絶望だろう


生きていく以上誰だった何らかの形で努力をしている


あるものはスポーツに、あるものは芸術に、あるものは勉強に


人によっては文字通り血反吐を吐くレベルのことをしている


それらが無意味だと知ったならば…


その努力が高密度、高難易度であればあるほど絶望も大きい


そして彼に突き付けられたのは生まれてから今までの26年間のすべての時間が否定される


と宣告したに等しい


そしてそれを理解できるだけの知能があった故に彼は旋律してしまった


『おぉおぉ、賢いってのも考えものだなぁ。今までの奴は“すぐに異世界に行きたい!”っていうやつばっかりだったのになぁ』


「そりゃこうなるでしょ…自分の人生を自分で否定なんてそうできるもんじゃないですからね」


『なるほどねぇ人ととのつながりを重視する人間特有の考えかただねぇ。でもさ逆に考えてごらんよ。ここに君がいるってことはすでに死んだ事実は覆すことができないんだ。ならば残された家族や友人、恋人などの悲しみはどうするんだい?それならばいっそのこと契約して遺族の悲しみを取り除いたほうがよっぽど建設的ではないかな?』


それはまさに悪魔のささやきだろう


自分の魂、26年という人生と引き換えに願っていた異世界への片道旅行、さらに家族や友人から自分の存在が消えることで悲しみからも解き放たれる


たとえそれがろくでもない結果につながるとわかっていても受け入れない理由のほうが少なかった


「分かった、その契約をうけよう」


気づいたら無意識に口からこぼしていた


その言葉に対し悪魔の青年は笑顔で


『僕は契約は必ず守る、君を異世界に届けた後に先に家族から君の記憶は消しておこう。心置きなく異世界ライフを楽しんでくれ。』


「ああ、ありがとう」


『ではもういいな?向こうでは後悔しないように生きろよ。サービスとして君の知っている世界にしておいたからね、せいぜい活用してくれよ』


そういって何かつぶやきだしたと思った時には意識が薄れていった


だが大事なことを思い出した


契約は守ってるけど異世界について事前情報ぐらいよこせよ!!


せめて近未来なのかファンタジーなのかとか!


いきなり戦場にほうりだされたりとかしないよな!?


そんなことを思いながら俺は26年という地球での人生を終えた

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