第70話 突然襲い掛かる白いバンの女
「一気にきやがった」
島田はハンドルさばきに注意しながらそう愚痴った。
これまでのアスファルト舗装が荒いコンクリート舗装の道へと変わる。
道の広さも自動車一台が通るのがやっっとと言う狭さ。
時々、道に走るクラックがサスペンション越しに島田の腰を痛めつける。
「こんくらい耐えてくれないと困るんだよね……確かにオフロード車じゃ無いけどこれくらいの道は地方に行ったら普通にあるよ。都会しか走ったことが無い素人じゃねえんだからな、俺は。ちゃんと走ってくれよ相棒」
そうつぶやきながら島田はさらに山道を最高地点に向けてバイクを加速させた。
相変わらず白いバンはつけてきていた。いや、正確に言えばもう真後ろを堂々と走ってきている。
「なんだよ、こんな山道で俺を追い抜くの?無理だよ……この車幅を見ればわかるでしょ?通れないって」
島田がそんなことを行った時だった。
急に白いバンが島田を追い抜きにかかった。いや、正確に言うならば島田をバイクごとがけ下に追い落とそうとするように山際に進路を取って島田のバイクの横に出ようとした。
「おい!殺す気か!」
島田はそう言いながらバンの前に出ようとアクセルを吹かす。しかしバンは決して譲ろうとしない。
「何考えてるんだよ!こんな道でそんなところに走られたら俺はどうしたらいいんだよ!」
島田は叫びながら横に並んだ白いバンのドアを蹴飛ばした。
すると白いバンは明らかにガードレールに島田のバイクを押し付けるように迫ってきた。
「ヤバい!俺は死なねえけどバイクは!」
そう思った島田はそのままバイクから跳ね上がってがけ下に向けてジャンプした。
空中に浮いた島田の身体がそのまま木々の間を転がり落ちて最終的に朽ちた枝にライダーズスーツを貫いて島田は突き刺さった。
「なんでこんな……なんとかこの腹に刺さったのを抜かねえとな……俺は死なねえから良いけど……おニューのスーツが血でべたべただ……まったくどうしてくれるんだよ……」
なんとか島田は力を込めて腹に刺さった朽ちた枝から抜け出した。痛みと出血による体力の減退からそのまま腐葉土に覆われた地面に島田は寝ころんだ。
その視界のはるか先。島田の落ちた県道のガードレールの所では島田を幅寄せしてこのような状況に追い込んだ白いバンの女運転手がそのあまりに急峻な崖に降りることを躊躇しているように立ち尽くしていた。
「アンタの助けなんかいらないよ……おれは不死人だからあと数時間もすれば動けるようになる。そしたら町まで行ってタクシー拾って帰るから……どうしようCBR750。盗まれないように脇に置いて葉っぱでもかけて隠しておくか……」
そんなことを考えているうちに失血による意識の混濁により島田は不死人とは言え意識を失っていった。




