第7話 またもや懸賞品となる誠
「言うねえ……監督としてはうれしい限りだ。じゃあこちらも良い条件を出さねえとな。もし神前が『菱川重工豊川』を完封したら神前の童貞をオメエにやる……それだけじゃねえ。これから一生神前を好きに弄んでいい……どうだ?変態のオメエには最高の条件だろ?」
かなめは完全に誠を懸賞品扱いしてそう言った。
「ちょっと!かなめちゃん何勝手に決めてるのよ!誠ちゃんの意志はどうでもいいとして私の意思が反映されていないじゃないの!私はそんなの認めない!誠ちゃんを搾り取るだけ搾り取って出し殻にするのは私!それは私が決めたことなの!」
かなめの言葉を聞いて立ち上がって抗議したのは他でもないアメリアだった。そしてその抗議の方向は誠の思った方向から完全にずれていた。
『アメリアさん……今、僕の意志はどうでもいいとか言いましたよね?そして出し殻にするまで搾り取るとか言いましたよね……僕の人権ってやっぱりこの『特殊な部隊』には無いんだな……』
みそ汁を啜りながら誠はしみじみとそう思った。
「西園寺も日野もアメリアも勝手なことばかり!確かに神前ならあの強打の『菱川重工豊川』の打線を完封することも不可能ではない。ただ、そうすると守備に相当な負担がかかるぞ……その点は西園寺……考えが有るんだろうな?もしセカンドがサラ、レフトが大野という穴だらけの守備陣なら3点どころかそれこそ10点以上取られるワンサイドゲームになるぞ」
あくまでも冷静に事態を分析していたのはカウラだった。カウラは鮭の切り身に伸ばした箸をおき、島田とじゃれあうサラと既に弁当を食べ終えてのんびりしている大野に目をやった。
「え?アタシ試合に出られないの!そんなの嫌よ!詰まらないじゃないの!」
サラは何も考えずにそう抗議した。
チームのエラー数の半分を稼ぐセカンドのサラの存在。島田のごり押しで万年補欠で内外野守れるユーティリティープレイヤーのパーラを押しのけて不動のセカンドに座っているサラとしてはこの状況は確かに面白くなかった。
「サラ。アタシは今年は勝ちに行く……出るからには優勝を目指す……そのための準備も色々進めてるんだ……当然、オメエは補欠。そもそもオメエは試合に出る意味がねえ。打てねえ、守れねえ、走れねえ。オメエより野球が下手なのはチームでは菰田だけだ」
かなめははっきりとサラに向けてそう宣言した。いつもならごり押しでサラを外すことに猛抗議を始めそうな島田はかなめの『優勝』という言葉を聞いて静かにうなずいて黙っていた。
場は練習前の朝食の場にはふさわしくない緊張した雰囲気に包まれていた。




