第66話 現れた『族』、そしてかつての自分を見るような島田
そこに島田には聞きなれた騒々しい爆音を上げるバイクの群れが視界に飛び込んできた。
轟音が出ることを優先にエンジンを調整しマフラーを切り落としたバイク。どのバイクもド派手にカラーリングされ、シートの後ろには明らかに空気抵抗になりそうな背もたれが伸びていた。
『ああ、俺にもあんな時代はあったな……でもまあ、そんなのは正式にバイクの免許が取れるようになったら卒業しな。バイクは走るのが楽しい乗り物であって楽器じゃねえんだから。音がでかいということはそれだけエンジンに無駄があるという証拠だ。そのシートだって走りの邪魔になるだけだろ?そもそもメーカーの技術者さんも政府の規格の中で最高の性能を出せるように作ってあるんだよ。いじるとしたらそのメーカーさんの思いもしなかったような着眼点でエンジンや足回りで自分に足りないところを足すのが正しいバイクのいじり方。俺の兵隊たちにもそれを言ってるんだがまるで聞きやしねえ。アイツ等もそんなところなんだろうな』
そんなことを思っている島田は目の前に現れた明らかに『族車』と分かるバイクにまたがった集団を見ながらそんな境遇から自分が卒業してもう十年の年月が流れていることを思い出し自然に笑みを浮かべている自分に気付いた。
そして島田が驚いたのはそのヘルメットを脱いだ若者たちが明らかに成人以上の年齢だったことだった。
『おいおいおい、その年でまだそんなバイクに乗ってんの?いい加減大人になりなよ。あんなバイクは中高生が乗るもんだ。高校も卒業近くになったら社会が見えてきてそんなバイクも高校と一緒に卒業するもんだろ?まあ、俺の場合はクバルカの姐御に無理やり卒業させられたんだから……人の事は言えねえか』
若者たちを見守って苦笑いを浮かべた島田の表情が変わったのは彼等が島田のバイクに足を向けたからだった。
「お!すげー旧車じゃん!でもまったくいじってねえ!だっせー!」
「どうせ古いのが好きなだけのおっさんが乗ってるんだろ?おっさんなら四輪車乗れよ。邪魔なんだよ」
「奇麗だけど、もっとかっこよくするためにカスタムするとか思いつかねえのかねえ、このバイクのオーナーは」
島田は昔自分が同じような立場で同じようなことを言っていたことを完全に棚に上げて自分の愛車を囲んでニヤニヤ笑う若者たちに近づいていった。
『西園寺さんじゃねえが……アイツ等が一度でも俺のかわいいCBR750に手を触れてみろ……射殺するからな。まあ、俺は銃を持っていねえから殴り殺す!』
怒りの表情で島田は革ジャンや派手なスカジャンを着た金髪や長すぎるリーゼントなどの格好だけの若者たちの群れに向けて足を速めた。




