第65話 金のかかるバイクとその苦労を楽しむ技術屋
道の駅の駐車場は車よりもむしろバイクの数の方が多いような状況だった。
しかも、明らかにこだわりを感じるような旧車ばかりが目立つ。
そんな中CBR750で乗り付けた島田にはバイク自慢に花を咲かせていたバイク乗り達の羨望の視線が集まってきているのが島田には心地よかった。
島田はご満悦でそのままエンジンを止めてキーをかけるとヘルメットを脱いで道の駅の食堂ではなく軽食ばかりが並ぶ売店に足を運んだ。
「おばちゃん、そこのサンドイッチとカレーパンちょうだい」
店番をしていた白髪交じりの老眼鏡のおばちゃんに島田は軽い調子で声をかける。
「あいよ!でも良いのかい?ここ等に来たら魚料理を食べるのが普通だよ……こんな街でも食べられるようなもの……」
おばちゃんは島田の人懐っこい態度に心を開いたように商売っ気抜きでそう言った。確かに、隣の魚料理を食べさせるらしい食堂の前にはライダーズスーツを着た行列が長々と出来ていた。
「なあに、魚料理なら俺は仕事で嫌でも食わされる時があるんでね。正直飽きてんだ。まあ、調理パンはそれ以上に飽きてるけどね」
島田はそう言いながらおばちゃんからサンドイッチとカレーパンを受け取るとそのまま隣の自動販売機の所に行く。
百円玉を取り出し、コイン投入口に入れいつも通りマックスコーヒーの暖かいのを買った。
「さあて、飯を食いながら愛車を鑑賞しよう……あれは何度見ても飽きねえな……良いバイクはどこで見てもいいもんなんだ」
島田はそう言うと自分のバイクの停めてある駐車場に向けてダッシュした。
島田のバイクCBR750の周りには人だかりができていた。
「これ……地球製の本物だぜ……完全にレストア済みの新品なんて初めて見たぞ」
「どこの金持ちだ?確かにボロボロの車体は良くオークションとかでも見かけるけどこいつのレストアって相当金がかかるはずだぞ……なんつうところに金を使ってるんだよ」
「こりゃあ、慣らし運転と言うところか?カウルに隠れてるけどエンジンにまるで汚れが無いぞ。こんなすげえのにお目にかかれるなんて今日は良い日だな」
集まったギャラリーのため息交じりの声を聴きながらご機嫌の島田はギャラリーが自分の愛車を褒めるのを見ながらとりあえずパンであるという意外に取り柄の無いような不味いサンドイッチとカレーパンをマックスコーヒーの甘みで胃に流し込んでいた。
『良いぜ……もっと褒めろよ。レストアに金がかかる?そのレストア作業がバイクの一番の楽しみなんじゃねえか。その楽しみのために金を使うような馬鹿じゃねえんだよ、俺は。さあ、もっと褒めろよ……これでこそここに来た価値があるってもんだ』
今日は何をやってもうまくいくような日。島田はこの時までは今日と言う日をそんな日だと考えていた。




