第64話 海へと向かうバイクを愛するヤンキー
怪しげな白いバンを追い抜いた辺りからは島田もやる気になってきていつも通り制限速度を無視して有料道としてはかなりの急こう配の山道を一気に登り始めた。
「このくらいじゃ屁でもねえか……さすがホンダのエンジンだ。俺の期待に答えてくれてる……とりあえず海を見て……そこの道の駅でパンでも食って帰りは一般道でどれだけの悪路に耐えられるか見てやろうじゃないか」
島田は快調に吹き上がるエンジンに満足しながらそのまま次々と先行車両を追い抜きながら下りに入った賀茂川有料を飛ばした。
次第に山道が途切れてシャチで有名な水族館の看板が目に付くようになる。背後には例の白いバンの姿は無かった。
「あの伴天連さんは諦めてくれたか……俺はああいった面倒なことを言って来る連中は好きに慣れねえんだよな。サラはなんでも自分は熱心なカトリック信者だと自称してるけど……アイツが教会に言ってるところも見たこと無いし、確かに部屋にはやけに立派な聖書が置いてあるけど読んでるところなんて見たことがねえぞ……まあいいや、今日はこの愛車に一日をささげたんだ。それを楽しもう」
そう言うといつもの事ながら突然有料道路の終了を告げる緑の表示が目立つようになり、目の前に料金所が現れた。
島田はライダーズスーツのポケットから小銭入れを取り出し係員に料金を払うとそのまま海へと向かう県道を進んだ。
この時期の南房相。
まだ、北関東や東北は雪で覆われているのでバイクの数はやたら多い。
「いいねえ、バイク乗りの天国だよ、今の時期のここは。地球じゃあガソリンエンジン車は公道を走れねえって話じゃねえか。西園寺さんのビッグスクーターはエタノールエンジンだけどゲルパルト製だろ?あれは地球では走れるのかな?」
そんなどうでもいいことを考えていると海が見えてきた。
その何処までも続く水平線に突き当たると房相半島の外周を回る国道に合流し、そのまま島田はバイクを流した。
前にはビッグスクーター二台があり、後ろからはアメリカンな大排気量バイクがついてくる。
「良い感じじゃねえか。この東和はガソリンエンジンバイク乗りには天国だな」
そんなことを考えていた島田の目に道の駅の看板が目に飛び込んできた。
「よし、ここで言いか。クバルカの姐御ならこの時期に外房に来てこれを食わねえなんて信じらんねえとか言うけど、俺は食いもんには特にこだわりはねえから安いパンとマックスコーヒーでも買って済ますか……実際コイツを買って金がないし」
そう言って島田はどこにでもあるような道の駅にバイクを乗り入れた。




