第63話 地球圏から来た島田を追う新興宗教の車
高速道路ではいつもなら後ろに彼女のサラが乗っていない限り制限速度など無視してバイクの限界性能を試すようにかっ飛ばす島田も、子供のころから欲しかった愛車の慣らし運転と言うこともあって慎重に走り続けた。
3月のさわやかな風の中で高速道路をバイクを走らせる島田の気分は最高だった。
あくまで慣らしと気分を落ち着けて走行車線を大人しく走る自分をらしくないと思いながら島田はバイクのエンジンの振動に酔うようにして南へとバイクを走らせていた。
「まったくもって快調……何の問題もねえ。さすが俺様の技術は完璧だ。こんなことだったらサラを連れ去って二人で出かけるんだったな……そして南房相の山中で……いや!俺は『純情硬派』を売りにしているんだ17の時の大人に逆らって好き勝手やってた時の俺とは違うんだ!それにそんなことをしたらあのどうしようもなかった俺に救いの手を差し伸べてくれたクバルカの姐御に申し訳が立たねえ。俺は『純情硬派』のヤンキー。不死身の永遠の不良ってことで良いじゃねえか」
島田は時に沸きあがる淫らな妄想を打ち消しながらバックミラーを見た。
そこには白いバンが写っていた。島田が高速に入って、そのまま加茂川道に乗り入れてもそのバンはずっと島田のバイクを追尾してきていた。
「なんだよ、あのバンは……尾行にしちゃあ間が抜けてるし、そもそも俺を尾行する理由……俺が不死人だからか?でもそのことを知ってるのはうちの隊の連中くらいだぞ。不死人を尾行するならそのことが公になってるクバルカの姐御やあの『駄目人間』の隊長を尾行するんじゃねえかな……俺は技術部長代理とは言え死なねえこと以外は何のとりえもねえ存在だぞ……どこの地球の国の政府機関だ?確認してやる」
そう言うと島田はバイクを急減速させてそのままバンの横に張り付くように回り込んだ。
まず島田の目に着いたのは十字架の下にミミズがのたくったような文字の書かれた最近よく見かける宗教団体のマークがバンのスライドドアに大きく描かれている事だった。
「なんだよ……伴天連さんが俺に用?俺に神様を信じろとか言いてえの?俺金持ってねえよ……このバイクを買ったおかげで今はサラとデートにも行けないほどのすっからかんぶりだし」
島田はそんなことを言いながら運転席を覗き見た。運転している背広を着たどう見ても白人の男は島田の急減速と横に回り込んだことに驚いたようにブレーキを踏んで島田の後ろに下がろうとした。
「まあ良いか……布教活動頑張ってね……クバルカの姐御が言うにはこの国の遼州人はあまり新興宗教には興味が無いらしいから無駄だと思うけどさ」
そう言って笑みを浮かべると今度は島田はフルスロットルにしてバンを追い越しそのまま加茂川道の山越えの有料道路としてはカーブの多い山越えの道にバイクを加速させた。




