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第62話 愛車と謎の宗教団体の車

「待たせたな、相棒……バイクの慣らしってのは何度やってもいいものだな」


 球場脇の駐車場まで歩いて来た島田は目の前の愛車CBR750を見つめた。


 幼いころからその存在は知っていた。そしてその実車を先月ようやく手に入れた。


 普段なら部下の整備班員にも多少の技術指導のつもりで触らせることもあるが、このバイクにだけは島田は指一本触れさせなかった。


「今日は天気もいい……楽しいツーリングになりそうだ……こいつの慣らしが済んだら……サラと一緒に上河内にでもツーリングに行くのもいいかな……俺は『純情硬派』で売っちゃあいるが、俺にだって『モテない宇宙人』である遼州人らしい性欲ぐらいあるんだ。確かに30になったらサラとは結婚するつもりで、それまでサラを抱かないつもりだったけどこいつを見ると上河内のいいホテルで初めて……なんていうのも悪くねえな。17の時に付き合ってた姉ちゃんみたいに激しくするのも若さを感じて俺らしいかもしれねえしな」


 そう言ってニヤケながらヘルメットを被ると島田はバイクにまたがった。


 エンジンをかけ、ゆっくりとスロットルを開く。


 高いエンジン音が駐車場一杯に響いた。


「悪くねえ、こりゃあ楽しみだ」


 そう言うと島田はそのままバイクを国道に乗り入れた。


 休日で少ないはずとは言え車の通行量の多いことで知られる国道16号線はトラックや営業用の車両でかなり混んでいた。その間をすり抜けるように島田のバイクは次々と先行車両を追い抜いていく。


「ハンドリングも問題なし……レストアは完璧だ……まあ、俺の前ではどんな錆びだらけの旧車も一月もあればメーカー出荷直後の新品同様になるのはいつもの事だけどな」


 技術者としての矜持が島田にそんな言葉を口にさせていた。


 ただ、バイクでツーリングしている島田は最近気になることが有った。それは以前『同盟厚生局違法法術研究事件』で本来は担当することの無い法術犯罪と言う事件を操作する場に身を置いて自分が警察官でもあるという自覚を持つようになってからの事だった。


 追い抜いた白い軽自動車の中に赤い十字架の下に島田の見たこともない文字の書かれた車をバイクで走るたびに見かけることが有る。


 記憶をたどればこのような車を見かけるようになったのは島田が可愛がっている後輩である神前誠が『近藤事件』で法術の存在を宇宙に知らしめた後しばらく経っての事だと思いついた。


「なんだよあのマーク……十字架ってことは伴天連さんか?あの事件の後急に増えたってことは……もしかしたら連中は地球人……連中、俺達、遼州人に『法術』と言う地球人とは無縁の力が眠っていると知った時から妙に粘着してきやがる。例の厚生局の事件でも宗教と法術の区別のつかなくなったマッドサイエンティストがいたな……俺達の力はアンタ等が勝手に妄想した神とやらとは関係ねえ存在なんだよ。関わり合いにはなりたくねえな……正直迷惑だ」


 しまだはそう言いながらそのまま南房相へと向かう高速道路の入口へと車を走らせた。

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