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第59話 勝利投手とそれを奪い合う女達(そのうち一人は『男の娘』)

「神前よくやった……」


 ダグアウト前で立っていたかなめは意外に喜びの様子も見せずに誠を迎えた。その視線は隣でかなめを見下すような笑みを浮かべている妹のかえでにもちらちらと向けられる。


「お姉さま、誠君は全ての力を出し切ったのですよ。もう少し褒めてあげてもいいんじゃないのかな?違うかい?」


 挑発するようなかえでの言葉にかなめは歯ぎしりをしてかえでに歩み寄った。


「オメエとの賭け、あれは取り消し。アタシは関白。そして神前はアタシのもの。だからオメエには指一本触れさせねえ!」


 かなめの脳内にはどうやら先日のかえでが最少失点で抑えればかえでが誠を好きにしていいという賭けの事しか頭に無いようだった。


「貴族が一度言った言葉をひっこめるというのかい?それはずいぶんと恥ずかしいさまだね。それこそ関白ともあろうお方のする事ではないよ。僕は今日から誠様だけのものになる。それをあの賭けで決めたんだろ?じゃあ、ちゃんとそれを守ってくれないかな?」


 そう言って誠に近づこうとするかえでを遮ったのは意外にもカウラだった。


「日野、貴様には神前に近づく資格は無い。貴様は変態だ。それは貴様自身も認めているんだろ?これ以上うちの部隊におかしな人間を増やす訳にはいかない。だから神前は貴様には渡さない」


 そう言うとカウラは誠の右手を握りしめた。


「ほほう……ベルガー大尉は相当誠君にご執心のようだが……誠君は僕とのキスの味を忘れられないみたいだよ?それにこれからもより僕の味を覚えていけば僕のすべてを自由自在に味わえる快楽の沼から抜け出せなくなるのは間違いない……なんと言っても僕は完璧なんだから……君のような胸の無い男だか女だか分からない存在は誠君にはふさわしくないね」


 かえではキャッチャーの防具を脱ぐとすぐに分かるような巨大な胸を見せつけてカウラをにらみ返した。


「あのー、さっきの賭けはかなめちゃんとかえでちゃんが勝手にしたことで対象となる誠ちゃんの承諾もないし、当然、私も認めていない。だからあれは無効。取引しましょう。今日の祝勝会ではカウンターでゆっくり誠ちゃんと語り合う時間をあげる。バッテリーとしてそれだけの仕事をしたんだからそれくらいは許すわ。でもそれ以上の関係は私は認めない。ねえ、リンちゃん、アン君、そしてパーラ」


 アメリアはそう宣言すると背後に立っていたリン、アン、そしてパーラに声をかけた。


「私はかえでさまの家宰ですがかえで様の日常を常に見ている立場から言わせていただくと誠様にふさわしいのはかえで様でなくこのリンであることは間違いないですね」


「僕は……神前さんの事を諦めていません」


「誠ちゃん!かえでちゃんと結ばれたら人間失格一直線よ!駄目よそんなの!人間普通に生きるのが一番なの!」


 リン、アン、パーラの言葉にかえでは少し当惑した顔をした後、大きくため息をついて誠を見つめた。


「なるほど、これは僕にとっては逆に面白い展開だね。簡単に手に入るものには僕は興味がないんだ。今日の所は僕は諦めよう……リン!少しれいの『アレ』を手伝ってくれないかな?ちゃんといい保存状態でその日に備えたいんだ」


 かえではリンにそう言うとキャッチャーの防具をリンに渡してロッカールームに消えていった。


 誠は変態になるという悲劇から解放された安心感と『モテない宇宙人』である遼州人の宿命、『死ぬまで童貞』という環境から抜け出せない自分の複雑な気分になりながらロッカールームに引き上げていく仲間達についてグラウンドを出た。

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