第5話 シスコンマゾヒストかえで、姉に逆らう
「おい、かえで!そのことは後で全員集合した時にアタシから発表するって言ってただろ!何フライングしてるんだよ!」
入り口近くのいかにも上座と言う場所で弁当を食べ終えてかえでと誠をにらみつけていたかなめがそう叫んだ。
「お姉さま。どんなスポーツでも戦争と変わりが無いのが分からないのかな?確かにその方がお姉さまの気分は良くなるかもしれないが、スポーツも戦争もいち早く正確な情報を手に入れた方が勝つ。だから僕は今こうして我がチームの大黒柱である僕の愛する誠君に正確な事実をいち早く告げた。その方が勝利に近づくには近道なんだ……そんなことも分からないから去年も千要草野球リーグで10チーム中5位。確かに後期に二試合レギュラーメンバー全員が出動で勝負にならなかった試合があったとしてもその程度の成績しか残せなかったというのは監督であるお姉さまの感情と勘でスタメンやサインを決める体制に問題があるんじゃないのかな?」
かえでは余裕の笑顔を浮かべて怒りに震える姉のかなめを見つめていた。
「ほう、随分とデカい口を叩けるようになっただな。胸だけじゃなく言ってることまでがでかいや。じゃあ、新正捕手よ、アタシの采配にどんな問題があるというんだ?オメエは自分のメイドをスパイとして敵チームのすべての試合の情報を手に入れたとか言ってたじゃねえか。じゃあそれなりの対策……特にあの無敵最強、現在29連勝中の『菱川重工豊川』の弱点でもちゃんと手にしているんだろうな?」
これまでサディストでかえでを徹底的な変態マゾヒストに調教した自分に従うことしかしてこなかったかえでの反抗的な態度にかなめは怒りに震えながらそう言った。
「そうだね、『菱川重工豊川』……ここ10年ほどは都市対抗野球の南関東予選は敗退を続けているチームだが、草野球リーグには全国大会に出場した経験のあるベテランも多い。そもそも南関東予選自体が都市対抗野球の予選の中でもレベルの高い大会なんだ。この3年連続出場を果たしている新東和製鉄君浦は毎回ベスト4まで進んでいるし、2年前のエースは阪鉄バイソンズに一位指名されてプロ入りしている。そんな名投手との対戦を経験しているバッターがゴロゴロしているチームにお姉さまのような精神論では歯が立たないと僕は思うよ。もっと頭を使わないと。だからこうして僕はその強打者対策を話し合おうと誠君の隣の席に座ったんだ。そのことが気に障るなら僕はキャッチャーを降りるよ。キャッチャーは大野君にでも頼んでパスボールの山を築いて試合を台無しにすると良い」
かえでの隣に座る誠はこれほどまでにこれまでシスコンで一切かなめの言うことに逆らわず、それどころかマゾヒストとしてかなめに虐待されることを生きがいとしていたかえでの変化に戸惑いながら姉妹のにらみ合いをただ黙って見つめていた。




