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第49話 犠牲フライで一点と醜い女の争い

 相手ピッチャーは嵯峨との口論でサインどころではないかなめを一瞥して笑うと余裕のある感じでサードに牽制球を投げた。


 島田は難なく戻っていつもなら出るはずのスクイズのサインが出ないことに首をひねっていた。


 そのまま第二球目。


 変則ピッチャーの内角高めのストレートを窮屈そうに振りぬいたパーラのバットは見事にとらえて打球は外野へと高々と舞い上がった。


「ほら見ろ、西園寺がスクイズのサインを出す必要なんかないんだ。一点入った。西園寺の無駄な戦術のおかげでうちが何回勝ち星を落としたか……アイツはそもそも監督には向いていない」


 カウラの嫌味の言葉の間に数メートルバックしたセンターはこれを掴んだ。


 すぐに島田はホームへ向けて走り出す。


 センターの送球はとても現役を引いて長いおじさんのものとは思えない勢いでホームに帰ってきた。


 しかし、俊足が売りの島田はスライディングすらするすることなく楽々とホームを駆け抜ける。


「ほら見ろ、これでスクイズなんて出してみろ。島田は三本間に挟まれて憤死。パーラも三振でツーアウトだ。だったらちゃんとここは選手の自主性に任せる!それが基本なんだよ!」


 嵯峨がかなめへの嫌味と言うように大声でそう言って悔しがるかなめを憐みの視線で見つめているのが目に入ってきた。


「お待たせした、誠君。とりあえず投球練習……ああ、そんな時間は取れそうにないね。たぶんすぐに君の打順だし、君では初見のあのピッチャーは打てない」


 ブラジャーを取り換えただけにしてはやたら時間がかかったかえではいつの間にか自分の席にカウラが座っているのを見つけると冷たい表情に切り替わった。


「ベルガー大尉。ここは第二小隊の席なんだ。君は第一小隊の小隊長だろ?あそこで、君の部下であるアンが手持無沙汰にしている。そういう時は話題を振って士気を高めるのも小隊長の仕事なんじゃないかな?」


 かえでは何度か胸の先を触りながらカウラに向けてそう言った。


「貴様にそんなことを言われる筋合いはない。これは私的な行事だ。私が座る場所は私が決める」


 明らかに挑発的なかえでの口調にいつもは表情を表に出さないカウラはムキになってそう言い返した。


「そうか。それでは僕なりの第二小隊の小隊長のやり方をするために君の席を移動してもらえるかな?そこは僕が座る場所だ。そこに座って僕と誠君が親睦を深める。これが私的な催しならばそれを利用して部下との親睦を深めるのは当然の事だろ?」


 かえではそう言ってカウラを押しのけようとした。カウラもムキになってそこを動こうとしない。


 にらみ合う二人。


 そんな二人を置いて誠はバットを持ってネクストバッターズボックスに入った。


 右打席で余裕の表情を浮かべていた三番のアメリアは変則ピッチャーの絶妙にタイミングを外す投法の前にまさに『大型扇風機』と言った感じで三球空振り三振を喫した。


「あのピッチャー打ちにくいわよ……しかも、あちらさんはそのピッチャーに慣れたと思ったら違うタイプの変則ピッチャーを繰り出して来るんだもの……やってられないわ」


 ネクストバッターズボックスの誠にアメリアはそう言って悔しそうにダグアウトに引き上げていった。


 誠はバットを握りしめ相手のいつどこから球が出て来るか分からないピッチャーとの対戦の為に左打席へと向かった。

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