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第44話 クリーンアップ問題

 かなめはかえでとカウラのやり取りが面白いらしくしばらく黙り込んだ後、そのまま顔を上げて一同を見回した。


「続けていくぞ!三番、サード・アメリア!四番、ピッチャー・神前!」


 この言葉に弾かれた様に前に飛び出してきたのがアメリアだった。糸目をさらに細めて怒りの表情でかなめをにらみつける。


「何よ!それ!私は四番サード以外はやらないっていつも言ってるじゃないの!四番を譲るくらいならサードも止めてかえでちゃんの代わりにキャッチャーをやった方がマシよ!これ以上かえでちゃんと誠ちゃんが近づくのは面白くないから!」


 完全に私情だけでアメリアはそう叫んだ。


「かえでの代わりがオメエに務まる?オメエは神前のフォークが捕れねえじゃねえか。かえでの奴はアレを捕ったぞ?今のオメエは大野と同じレベルのうちでは使えねえキャッチャーにまで落ちぶれたんだ。そんな奴に四番を任せるわけにはいかねえな。それにだ。この球場は広い。センターは120メートル。両翼だって100メートルある。ただでさえ飛ばない軟球でスタンドインさせるパワーはオメエにはねえ!」


 かなめはそう言ってアメリアのかなり無茶のある要求をはねつける。


「そんなのかなめちゃんがこの試合用に買った新製品の飛ぶバットの力を借りればなんとでもなるんでしょ?なんでもあれは一本5万もするらしいじゃないの……それで私がホームランを打てないならメーカーの詐欺よね」


 まだ納得がいっていないというようなアメリアだったが、その隣にいつの間にか現れた嵯峨の存在に驚いてアメリアは身を引いた。


「かなめ坊よ。お前さんはこの試合勝ちたいんだろ?だったら四番の重責を神前に任せるのは俺としてはお勧めできないね」


 相変わらずタバコ替わりの酢昆布をくわえながら嵯峨はそう言った。


「叔父貴、どういう意味だ?」


 こめかみに怒りの爆発の前兆の右手を当てながらかなめはそうつぶやいた。


「この試合。間違いなく一点を争う試合になる。つまり投手力と守備力が勝負を決める。双方ともに重量打線が売りだが、それ以上に投手力にも定評があるチーム同士の戦いなんだ。そうなると、神前には七番あたりを打たせて打つことよりも投げることに専念させるというのが俺が監督ならとる布陣だ。それにいつもお前さんが言ってる通り神前はハートが弱い。チャンスで打順が回ってくる四番よりは……」


 嵯峨がここまで行ったところでかなめがキレた。


「アタシが監督!叔父貴はただの一選手!監督の決定に選手が口出しするんじゃねえ!」


 かなめはそう言うと右手を大きく振り上げて嵯峨を威嚇した。


「そうだよね……俺は一選手。プレーには集中しますが戦術には口を出しませんよ……」


 嵯峨はそれだけ言うとアメリアを置いて部員達の間に紛れ込んだ。


「アメリア、オメエも一選手だ。監督のアタシの言うことに従え」


 隊長である嵯峨さえ追い散らすかなめの剣幕にさすがのアメリアも引き下がらざるを得なかった。

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