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第40話 完璧な『兵器』という物

「まあ、そうなんですけどね。戦争屋はどうしても良い性能の万能兵器を求めたがる。すべてに完璧な兵器が作れるのならそんな国はとっくにこの銀河を征服していますよ。与えられた兵器で同成果を残すか……それが戦争というものです」


 嵯峨はいつもの『駄目人間』の面影などみじんも感じさせない真面目な表情でそうつぶやいた。


「そうですね、私達メーカーも万能な兵器など作れると最初から思っていませんから。何かを伸ばそうとすれば性能のどこかを犠牲にしなければならなくなる。それが兵器というものです……まあ、うちで預かってるそちらの持ち物の『方天画戟』たしかにあれはその例外かもしれないですがね」


 武田の口から『方天画戟』という言葉が放たれた瞬間、嵯峨の表情は厳しさを増した。


 かつて遼帝国からの依頼と法術関連の未公開技術を使用して菱川重工が開発した『オリジナル・シュツルム・パンツァー』と呼ばれるスペックを持つ兵器『方天画戟』。遼帝国の南北分裂から、その後の内乱状態の間、今は司法局実働部隊の副隊長であるクバルカ・ラン中佐の愛機として長年使用されてきた機体だった。


 そもそも出力に限界のある位相転移エンジンではなく戦艦に使うクラスの対消滅エンジンを搭載し、東和宇宙軍の誇る電子戦特化型飛行戦車のECM発生装置を持ち、コストパフォーマンスを無視した強力な腕部と脚部の流体型アクチュエイターによるパワーは完全に嵯峨の言う『完璧な兵器』の条件をすべて満たす機体だった。


 ただし、そのあまりにてんこ盛りの昨日ゆえにコックピットがやたら小さく、身長112cmのランが乗り込むのがやっとというのがその機体の欠点と言えば欠点だった。


「武田さん……その『方天画戟』の納入なんですが、いつになりそうですか?うちも高梨部長のおかげでその予算は来年度分は確保できてるんですよ。4月は……無理でしょうね。遅くとも6月には何とかなりませんかね?うちとしても色々都合があるんで」


 嵯峨は酢昆布をまるでタバコを吸うように手に持ってそう言った。


「そうですね、うちとしては明日にでもアレを手放したいくらいですよ。あの化け物がテロリストの手に落ちると大変だという本社の指示で菱川警備保障の武装警備員を24時間体制で張り付けているんですが……そのコストが……菱川警備保障。同じグループ会社とは言えあそこの人間は同も好きになれない。ベルルカンで連中がしていることを聞くと人としてどうかと……」


 嫌悪感をあらわにして武田はそう言った。


「まあ、軍を辞めてまで戦争をしたいなんて言う酔狂な民間軍事会社の社員なんてみんなあんなもんですよ。まあ、戦争を職業としていて今でも似たようなことを仕事にしている俺の言えたことではありませんが」


 嵯峨はため息交じりに再び酢昆布をくわえながらグラウンドで練習を続ける敵チームの華麗なプレイを見つめていた。

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