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第37話 朝からろくな話をしない『助っ人』の『駄目人間』

 試合当日は誠はかえでの高級乗用車で県営スポーツセンターの駐車場に乗りつけた。


「いい天気じゃないか……これは誠君と僕とのはじめてにふさわしい日だ」


「かえでさん、かえでさんが言うとどうしてもやらしい響きにしか聞こえないんですけどそれは僕がおかしいんですか?」


 車の後部座席から降りて伸びをするかえでの言葉にどうしても裏の意味を感じ取って誠はそうツッコミを入れた。


 駐車場にはすでに『特殊な部隊』チームの部員達の改造車がならび、その中にはカウラの『スカイラインGTR』の姿もあった。


「神前!かえで!リン!こっちだ!」


 大声で野球場の一塁側ベンチに繋がる通路前でたむろしている人々の中で一番態度が大きいかなめがそう言って誠達を呼びつけてきた。


「分かりました!今行きます!」


 誠はそう言うとゆっくりと歩き出そうとした。そんな誠の左手をかえでの左手が包み込むように握りしめた。


「今日が君と僕とのはじめての共同作業だ。しかも、お姉さまとの賭けに勝てば更なる共同作業が待ち構えている……必ずその賭けに勝って今夜は一晩中甘い夜を過ごそうじゃないか」


 言ってる内容はスケベ以外の何物でもないのにあまりにもさわやかにそう言って笑うかえでをどうにも理解できないまま誠達はかなめ達『特殊な部隊』野球部の集まる場所まで歩いて行った。


「これで全員じゃねえんだよな……叔父貴だよ……アイツこういう時はきっちり遅刻してくる。遅刻魔で知られるひよこやサラまで時間通り来てるんだぜ?まったくあのエロ中年は朝からお蔦とヤッテルのか?それで遅れてるのか?もしそうだったらぶん殴ってやる」


 かなめは部員一同の前で明らかに苛立ちながらそう叫んだ。


「おう、みんな揃ってるんだ……。それとかなめ坊。お前さんも少しは俺の事を分かって来たみたいだね。でも半分正解で半分外れ。昨日はうちに秀美さんが泊まっていったから俺が朝した相手は秀美さん。秀美さんは感じやすいからしばらく伸びてて慌てて出て行ったから遅れたの。推理は近かったけど正解じゃなかった。お前さんもまだまだだな」


 そう朝からする話題とは思えないようなことを言いながらやって来たのはすでにユニフォームの上にウィンドブレーカーを着込んだ嵯峨だった。隣にはいつものようにお蔦と春子を引き連れている。


「叔父貴、つまらねえ自慢は良いんだ。それより試合中にやりすぎて腰が痛いとか言い出したら後で射殺するからな」


 明らかに不機嫌そのものとなったかなめに嵯峨はとぼけたような顔で両脇の和服姿のお蔦と春子を見つめる。


「お前さん達は私服なんだから早く着替えなよ。『菱川重工豊川』の人達ももう準備を始めてるよ……急がないと」


 嵯峨は監督のかえでを無視してロッカールームに向けて歩き出した。かなめは言いたいことを先に言われて不愉快そうな顔をしてその背中を追う。部員達もまた朝からげんなりした顔でその後ろに付き従った。

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