第34話 無敵の法術師戦闘集団第二小隊
「かえで……言うじゃねえか……アタシが神前頼みの半人前だとテメエは言いてえんだな?」
怒りに打ち震えているかなめに言えることはそれだけだった。
「いいや、お姉さまを半人前だなんて思っていないよ。もしそう思っていたら隊から出て行ってもらうから。お姉さまにはアンを育てるという重要なお仕事が……」
「そのツラ!やっぱり思ってるじゃねえか!」
そう言うとかなめはかえでの所まで歩いていき自分より長身のかえでの襟首をつかみ上げた。かえでは挑戦的な笑みを浮かべながら姉の顔を余裕の表情で見つめている。
「よせ、西園寺。これは隊長とクバルカ中佐の決定だ。軍人なら貴様も従え」
明らかに屈辱に耐えかねながらもそれを押さえつけているという表情のカウラがそう言って唇をかんだ。
「ベルガーの言うとーりだ。それにこれには戦術的な意味も有るんだ。西園寺もこれを聞けば納得する」
ランはそう言うとそのままかえでとかなめの所まで行きかなめのかえでの襟首を握りしめている手に背を伸ばした。
「日野、渡辺。この二人はアタシが許可もしていねーのに神前の精液を使って神前の『干渉空間』と『光の剣』を使えるようになりやがった。結果、うちには重装甲な05式をさらに鉄壁の『干渉空間』で防御する機体を三機保有する状況になった。そして『光の剣』今の神前なら巡洋艦のブリッジどころか数隻の艦船を一度に撃破できる『光の剣』を使うことが出来る。日野や渡辺にも神前の初覚醒の程度の芸当は簡単にできる。つまり圧倒的重装甲と火力を持った兵器を一点に集めて敵の集中砲火の中を突破し、敵に徹底的なダメージを与える部隊がここに完成するわけだ……その戦術的有用性……戦場を知ってると自分で常に言ってる西園寺なら分かるよな?」
理詰めのランの言葉に戦闘のプロを自認しているかなめも我に返ってかえでを締め付けていた両腕の力を緩めた。かえではかなめの手を振りほどくと襟元を整え姉の顔を優越感を感じさせる強気な視線でにらみつけた。
「それにアンの強力な『テリトリー』。アイツの展開できるテリトリーの範囲は驚異的だ。それこそレーダー機能では宇宙でも屈指のカウラの電子戦特化型05式のレーダーでも届かない範囲でもアンには丸見えなんだ。しかもアンの『テリトリー』能力はこれで終わるもんじゃねえ。敵に同じように『テリトリー』を展開できる法術師がいても、これを無効化し無力化する。さらに物理的な機械であるはずのレーダーへのジャミングまで出来ちまうほどに強力な『テリトリー』をアンは展開できる。西園寺。オメエの得意の『光学迷彩』と『レーダー無効装置』を積んだ05式はアンの『テリトリー』の中ではどんな敵相手でも発見されることの無い無双状態になる。それでも……アンを自分の後輩として……第一小隊の新たな戦力として迎え入れるのが不服か?どうしてもって言うなら考えてやんねーこともねーが」
ランにそこまで言われてしまえばかなめには何も言うことが出来なかった。かなめは何も言わずにそのままランの機動部隊隊長の前の自分の位置に戻った。
「それと、付け加えとくと法術特捜の補助担当任務な。こちらも第一小隊から第二小隊に切り替える。第二小隊は攻撃力に特化した法術師が三人もいる無敵の部隊だ。下手な法術師なんぞこれまで見たいに苦労なんぞせずに瞬殺だ。それと、情報分析担当のアメリアはそのまま法術特捜の補助任務の統括として残るから。ベルガー、西園寺。お疲れ様だったな」
ランの最後の一言は明らかに余計だった。
茜の法術特捜の協力任務から自分達だけ外されてアメリアは残る。かなめとカウラの怒りの矛先はこの事実をすべて知っていて彼女達に黙っていた『面白ければ全てよし』がモットーの運航部部長であるアメリアへと向かうことになった。




