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第30話 野球よりもエロい事を優先する『駄目人間』

「タイム!……というか俺抜けるわ」


 突然、ファーストを守っていた嵯峨はそう言うとグラウンドに背を向けてダグアウトに歩き出した。


「おい!叔父貴!今が一番いいところなんじゃねえか!抜けるだ?そんなこと監督のアタシは一度も許可した覚えはねえぞ!」


 これまで自分の思い通りに試合が展開していたことに満足げにパイプ椅子に座って試合を見つめていたかなめが立ち上がった。そしてそのまま走っていき嵯峨の前に立ちはだかる。


「なに?俺助っ人でしょ?東和のプロリーグだって助っ人外人が良くわがまま言って退団するなんてよくある事じゃん。今回もそう言うこと……さっきから俺を見つめる秀美さんの視線が『もう我慢できないから来て!』と言ってるように見えるのよ。というわけであとはよろしく……」


 そう言って嵯峨はそのままファールグラウンド脇の簡易シートに腰かけていた、安城、春子、お蔦の三人の所に歩いて行った。


「叔父貴!よく神聖な球場でエロい事ばかり考えてられるな!あの変態のかえででさえ真面目に野球をやってるんだぞ!少しはチーム事情を考えろ!」


 完全に我を忘れて怒り狂うかなめを見てグラウンドの部員達もとりあえず試合どころではないことを察して言い争うかなめと嵯峨の所に走ってきた。


「チーム事情?だってこれはかなめ坊のお遊びじゃん。まあ、島田の変な方法で稼いだ金でこんな立派なグラウンドまで作ってやってるのは真面目だなあとかは思ってたけど別に俺はそこまで必死に野球をやりたくないの。それよりあの三人を満足させること。そっちの方が今の俺には大事なことなんだな」


 嵯峨はそう言うとそのまま殺気を帯びた視線を投げかけながらついてくるかなめを従えたまま安城達の所までやってきた。


「秀美さん、顔紅いよ。もう我慢できないんでしょ?じゃあ、四人でラブホ行こうよ。きっと楽しいよ」


 恥ずかしげもなく部員全員の前で嵯峨はそう言い放った。


「な……なんてことを言うのよ!嵯峨さんは!そんなわけ……」


 初めは激高したように立ち上がって嵯峨をにらみつけていた安城だが、すぐにうつむいて静かにうなずいた。


「そうよねえ、さっきから秀美ちゃんは新さんと早く抱き合いたいって顔に書いてあったもの。春子さん、今日の一番は秀美ちゃんにあげましょうよ!その間、秀美さんのあの凄いいやらしい声を聴きながら二人でいつもみたいに絡み合うのも悪くないんじゃないの?」


 お蔦はいかにも嬉しそうに春子の顔を見つめる。春子は余裕のある態度で笑っているだけだった。


「そう言うわけなんで、後は後半戦頑張ってね!ショートのパーラが代わりにファーストに就けば問題ない。俺がいないときは何時でもそうしてきたんだろ?じゃあ何も悪い事は無いわけだ……ということでサヨナラ!」


 嵯峨は颯爽と安城、春子、お蔦を連れてグラウンドを後にした。


 グラウンドには怒りの表情で嵯峨の背中を見つめるかなめと呆れ果てる誠達野球部員が取り残されることになった。

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