第1話 女尊男卑のキャンプ
「なんで僕達はハンガーで寝袋で寝てるんですか?夏はあんなに立派なホテルでふかふかの布団……ああ、僕はソファーでしたね。でもこんな三月とは言え暖房もないハンガーでキャンプをするなんてどうかしてますよ。しかも、女子は一応は仮設ベッドのある宿直室で寝るんでしょ?ちょっとこの扱いの差は何なんです?」
ここは遼州同盟機構の警察や司法機関を統括する組織である遼州同盟司法局の中にあっても軍隊を送ることが政治問題に発展しかねないような場所に実力行使活動を行うための組織である司法局実働部隊……別名『特殊な部隊』の基地のハンガーの中だった。
『特殊な部隊』の誇るタイマン勝負最強と呼ばれる重装甲と圧倒的なパワーが自慢の人型兵器『シュツルム・パンツァー』05式の居並ぶ前の空いた空間にそのパイロットの一人である神前誠は寝袋に体を横たえて寒さに震えながらそうつぶやいた。
「そんなもん決まってるんだろ?うちの監督はあの西園寺さんだ。あの人は女だ。階級も俺達男子部員よりはるかに上の大尉だ。それにサードのアメリアさんは中佐。ショートのカウラさんも大尉。補欠のパーラさんだって大尉なんだぜ……軍隊じゃ階級がすべてなんだ。うちの男子の部員で一番階級が上の技術部長代理で准尉の俺が言うんだから間違いねえ。ましてや早朝に過ぎねえ神前がどうこう言える話じゃねえんだよ」
誠の寝袋の隣に寝ていた整備班長で誠にとっては面倒見のいい兄貴的存在である島田正人准尉はそう言って諦めきったように寝たばこを決め込んでいた。
「そうですよね……うちは準軍事組織ですもんね……でも、今日は西園寺さんは体力づくりのランニングなんてまるでクバルカ中佐みたいなことを言って一日中走らせましたけど、なぜかその中にかえでさんやリンさんの姿まで有りましたよ?かえでさんは少佐、リンさんも大尉……だんだん野球部での男子の肩身は狭くなるばかりですね……」
誠の所属する司法局実働部隊機動部隊第一小隊の二番機担当のパイロットであり身勝手で知られる西園寺かなめ大尉の妹である第二小隊小隊長の日野かえで少佐とその副官である渡辺リン大尉がこの合宿に参加することはかなめ以外は誰も知らない事だった。
かなめは二人のポジションについて男子部員には何一つ説明しなかった。誠もその大きすぎる胸を揺らしながらもまるでそれを気にせず補欠の男子部員を追い抜いて先頭を走る誠の後ろを余裕の表情でついてくるかえでに何度もかえでが何処を守ることになるのかを聞いたがかえでは笑って誤魔化すばかりだった。
「まあな、たぶんうちの男子の日替わりスタメンのうち二人がポジションを日野少佐と渡辺大尉に奪われる……その事だけはまちがいねえだろうな……まあ、俺は不動の一番センターだから関係ねえし、オメエもエースの大黒柱だ。そんなの関係ねえよ」
島田はそう言うとタバコの吸い殻をマックスコーヒーの空き缶に押し込んだ。
「うちの日替わりメンバー……つまり、かえでさんかりんさんのどちらかがキャッチャーになる訳か……どっちだろう?まさかかえでさん?それはそれで複雑な気持ちになるな」
誠はそんなことを言いながら寒さに震えながらなんとか明日の練習に備えて寝ることにした。




