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契約


「ラピス、ヘビは大丈夫だったか?」


俺は教会から出てきたラピスに話しける。


「う〜ん、シスターさんが言うにはね?治してはくれたんだけど、跡は残るかもって…」


「あら、池田さん結構美容にこだわってたのに…」

 

「うん…」


ラピスの言う通り、ヘビには火傷の跡がくっきり残っていた。


そこへヴォラが口を挟む


「スキルを使えば簡単に治せるんじゃないのか?私が昔会った回復スキル持ちは何でも治してたぞ」


確かに、『治癒』のサナレもどんな傷もあっさり治していた。


ヴォラの疑問にラピスは答える


「シスターさんも言ってたけど〜、

なんか最近は優秀な回復師が居ないらしーの」


「ふーん…そういうもんか」


「あ!そうだ!

サラマンダーの話!ギルドに教えたんでしょ?なんて言ってた?」


思い出したように聞かれ、俺は答える


「ああ、いつもの受付さんに話したら『サラマンダーの鑑定と洞窟内の調査をしてみます。』だって」


「うーん…なんかビミョーな返事だね」


「あと、俺たちにも引き続き調べてほしいって頼まれたんだ。

今回の件で、いろいろ世話になったからって」


「ん〜めんどそー」


そのとき、ノクスが口を挟んだ。


「そのことなんだけど、この間の戦いでみんな疲労してるし、調査も兼ねて少休暇を取ろうと思って」


「いいなそれ。でも、調べれる場所があるか?」


俺の質問に、ヴォラが答える 


「それなら私にアテがある」


「アテ?アテってなんなの?」


ヴォラは勿体ぶってなのか、言いたくないのか、少し間を置いてから、

ボソッと言った。


「……私の家だ。」


「「え!?」」


――てなわけで、俺達はヴォラの家に招いてもらった。


「うわっ、デッカ!」


「お〜!すっげ〜!こんな家はじめてみた!!」 


ヴォラの家はめちゃくちゃデカかった。めちゃくちゃ広いし、

部屋もバカみたいにある…!!!!


「ねえねえ!!見て!!デッカい壺ある!」


「スゲー!!」


俺もラピスもバカみたいにはしゃいでしまう…


そんな俺達をよそに、ノクスは冷静に

ヴォラに問いかけた。


「ヴォラの家ってお金持ちなの?」


「部屋が多いだけだ。この家のほとんどは本や資料ばかり」


確かに彼女の言う通り、お金持ちの家と言うよりは図書館と言う方が近いかもしれない。


ヴォラは淡々と続けた


「私の親は生物学者だったんだ。魔物についても研究していた。」


「あ、だから資料のある家にってこと?」


「そうだ。2階に私の部屋がある。そこで話をしよう。」


そう言ってから、ヴォラは俺たちに冷たい視線を向けた


「ほら、そこのバカ二人も行くぞ」


「「は~い!」」


――ヴォラの部屋は、部屋とは言うものの…なんというか…

…ここで生活はしたくないな。


「めちゃくちゃ部屋汚いね!!」


「は?」


…そう、ラピスの言う通り、本や資料をまとめたファイルが床や机に散乱していて、軽い汚部屋という感じだった。


「ちょっとは綺麗にしたほうがいいんじゃないか…?」


「ちょっ、今から掃除しよう。

私は耐えきれない」


「………」


そんな感じで、俺達は掃除を始めた。


……しかし、本当に汚い…

恐らく資料を見るためだけに帰ってきて、片付けもせず出て行ってたんだろう。


「わ〜!これ子供の時の写真?!可愛い!!隣の人は……お姉さん?」


「っ!!お前それ!」


ヴォラはラピスから写真を奪い取る。


ラピスの持っていたその写真には、

ヴォラによく似た、ボサボサ髪の子供が写っていた。

年は4,5歳ぐらいか?

その隣は10代ぐらいに見える、

シスター服を着て、目を細めた穏やかそうな女性だった。


……なんだか見覚えがある…気がする


「…親が忙しくて、

よく近くの教会に預けられてたんだ。彼女はよく私と話してくれた。」


「へぇ〜!!いいね〜!」


「このマフラーと耳飾りも、その人からもらったんだ」


ヴォラはそう言いながら、首のマフラーと耳に触れる


言われるまで気づかなかったが、

確かに右耳には割れたハートの片方のようなピアスを付けている。


………これもどこかで見覚えがある

どこで見たんだっけ…?


「でも珍しいね。ヴォラが自分のことをこんなに話すなんて」


「…まぁ一応、仲間だからな。

お前たちなら話してもいい」


「!!ヴォラちん!!」


「ちょっ、やめろ!」


ラピスが歓喜のままに抱きつく。

ヴォラは不快そうではあったが、強くは突き放さなかった。


微笑ましい光景――だがそれよりも、

さっきのシスターが脳裏に焼き付いて離れなかった。


……どこで、会ったんだ?


「なぁ…」


「あ?」


悪いと思いつつ、2人の空気に水を差す


「その人の話、もっと聞かせてくれないか?」


「あーしも聞きたい!!」


「うん。ヴォラのこと、もっと知りたいな」


「…いいだろう。彼女のことをお前らにも知ってほしいしな」


……思ったよりもその人に惚れ込んでるな…


ヴォラはラピスを引き剥がして、

語り始めた。


――教会に行くと、彼女はいつも私のために本を読んでくれた。


多分、私は魔物についての論文とか、そういうものを読んでもらった気がする。


「あっ!」


彼女が箱を落としそうになり、

私はとっさに『飛行』で浮かせて助けた


「アンタはもう…危ないな…」


「えへへ…ごめんね。ありがとう」


頭を撫でてくれる。恥ずかしくて顔を背けたけど――嬉しかった


「あ、ほらもうすぐ冬でしょ?これあげる。」


彼女は箱を空けて、

私の首にそれを巻いてくれた。


「…マフラー?」


「うん…どうかな?」


「…大切にする。ありがとう」


「ふふ、ならよかった。」


「…私もプレゼントがある……」


「え?」


私は、割れたハートのピアスを彼女に差し出す。


「これ…両耳につけたらハート型になるようになってるんだ…」


「素敵…ありがとう。」


「…」


彼女は私の――大切な人だった。

近くに居てくれない家族よりもずっと


でも………


「…町を出ていくって…ホントか?」


「……本当だよ。友達に、パーティに

入らないかって誘われたの」


肯定しないで欲しかった。どこにも行かないでくれよ。


「なんで……!

私と一緒じゃあだめなのか…?」


「…ごめんね、ヴォラちゃん。

貴方の事は大好きだけど…」


「……」


「…ほら、これあげる。お揃いだよ」


彼女は、私があげた耳飾りの右耳側を、自分の耳に付けてくれた。

……でも


私は、彼女といっしょじゃないなんて耐えきれない。


…そうだ


「…じゃあ私とけっこんしよう」


「……え?」


「愛し合う2人がするものなんだろ?

けっこんしたら、いくら離れていても…

仲良しなんだろ?」


父も母は、ずっといっしょじゃないけど仲良しだ。だからけっこんすれば…


「愛し合うっていうのは…

こうじゃなくて……」


「なにがちがうんだ?

私はアンタを愛してる。」


「うぅ…」


彼女は顔を赤くして目をそらす。


なんなんだ。私はなにかおかしなことを言っているか?


「……わかったよ…でも、結婚するのはヴォラちゃんが18歳になってからね。」 


「え」


「いまは"契約"だけしてあげる」


契約は、3つの条件を満たし、約束と罰を決めることで成立するらしい。


彼女が言うには、けっこんする時も契約を使うらしい。

……なら最初からけっこんでいいのに…


「えっと…ちょっとごめんね」


彼女は私の指を浅く切った。

血がにじむ。

それから自分の指も切って、

私の傷口に重ねる


「これ、なんなんだ?」


「条件のひとつだよ。

お互いの体液を混ぜるの」


「ふーん?」


よくわからないが、必要なことらしい


「お揃いの物を身につけることは済んでるし……あ、あと罰を決めなくちゃ」


「罰?」


「契約を破った時の罰だよ。契約にはそれが必要なの」


「…べつに、いらないけど…」


「じゃあ、私が決めちゃおうか」


少し間を空けて、彼女は言った。


「…約束破ったらね、心に穴が空くの」


「?、それでいいのか?よくわからん」


「うん、いいの。

ほら、あとは約束を言って、お互いが同意するだけ。」


「……わかった。」


私は約束を誓った


18歳になったらけっこんする。それでずっと一緒にいる。



――そう誓って以来、彼女とは結局会っていない


「…」


彼女の話はここで終わった。

……"契約"か


「なぁ、その人にはもう会わないのか?」


俺はヴォラに問う。


「…どこにいるのかも聞いていなかったしな」


「あー子どものころの話だしね〜」


「ああ。それにこんなこと、

彼女は忘れてるだろうし……お互い……

若気の至りだったのかもな」


「もう、どうでもいいことだ」


彼女は写真を、本の間に挟んだ。

乱暴に放り込む……かと思ったが、

違った。

ページの端を整え、

折れない位置を選び、

指先でそっと押し込む。

写真に、少しでも傷がつかないように。


…そんなに大切そうに扱っておいて、

どうでもいい?


子供の時の恋だから、

若気の至りだから、なんて


そんな言葉で片付けてほしくない。


…これは俺のエゴだ。

余計なお世話かもしれない


――でも


「…本当は会いたいんじゃないのか?」


ヴォラの指が、ぴたりと止まった。


「…そのマフラーも、耳飾りもずっと付けてるんだろ?

ヴォラが本当に会いたくなかったら、外して割り切るんじゃないのか?」


「……」


彼女は答えない。

代わりに、無意識にマフラーの端を掴み、強く握り込んだ。


「……会いたくても、会えないから困ってるんだろ」


吐き捨てるような声だった。


「そりゃ……会えるんなら、会いたいけど……」


「なら、探せばいい」


「簡単に言うなよ!!」


ヴォラは思わず声を荒げる。

その声に、自分でも驚いたのか

一瞬言葉に詰まる。


「………会っても…」


彼女は視線をそらす


「……そんなこと忘れた、とか言われたら……私は…」


マフラーを握る手の力が、さっきよりも強くなっていた。


「もし、そうなっても」


俺は、声を落として続ける。


「……俺達が支えるよ」


ラピスは何も言わずうなずく。

ノクスはゆっくり近づいて、ヴォラの前に立つ


「私も、ヴォラのこと応援したい。支えさせて欲しい。」


「………」


しばらく、二人は向き合ったまま動かなかった。


やがて、ヴォラが眉間にしわを寄せながら視線をそらす。


「…いいのか?」


「大切なことなんでしょ?

やったほうがいいよ。やらずに後悔しないように」


「……ありがとう」


声は小さかったが、

その言葉には彼女の深い想いが滲んでいた


――そんなわけで、これからの俺達の目標はヴォラの想い人を探す事になった。


…しかし、俺達は重要なことを忘れていた。

………サラマンダーの事を



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