第七話
夕子は何故あんな事を言い出したのだろう。玲司と別れた事からくる一時的な気の迷いなのだろうか。それとも玲司が言っていた様に……。
いや、それはあり得ない。
誰よりも僕が近くで長年見てきたんだから、彼女の想いが勘違いである筈がない。
……というか、何をそんなに気にしているんだ僕は。
真実がどうであろうと、僕にとってはもうどうでも良い事のはずじゃ無いか。夕子に恋をしていたのは、もう過去の話で。僕は既に別の女の子と恋愛している。夕子への想いは杉岡澪という彼女と出会って、彼女と付き合う様になって次第に消えていったんだ。そりゃ、フィクションの恋物語みたいに明確なそれを自覚した瞬間とかは無かったけれど、でも現実の恋なんてそんなものだろう。自分でも気づかないうちに少しずつつ移ろいゆく、人の気持ちなんてそんなものなんだと思う。現に僕は今、夕子と澪のどっちが大切かって聞かれても、ちゃんと「澪だ」と答える事が出来る。
――だけど、それなら何故、あの時僕は夕子に「ゴメン」とハッキリ言えなかった? 彼女の言動に動揺した? 胸がキュウっとなって何も言えなかった?
僕は……こんなに物事が移り変わっても尚、吹っ切れてないのか? どこかにまだ未練みたいなものが残っているのか?
そうだとしたら――それは早く消し去らないといけないものだ。そうしないといけない。
固く、その意志を心に刻む。
――だけど、そんな事を考えながら過ごす日々は、どうしても、どこか歪で不自然なものになってしまうみたいで。
「別れよっか」
澪の口からそんな言葉が飛び出したのは、クリスマスも正月も越えた翌年一月。学校の始まる直前のとある平日の午後の事だった。その日、僕達はデートをしていて、いつもの通学時に電車を乗り換える中継点にあたる駅付近にあるファーストフード店の二階でテーブル席に座っていた。偶然にも客足が途絶えて周囲に誰も居なくなった瞬間に彼女はそう切り出してきた。
「――え」
そろそろ場所を変えようか程度の軽さで告げられたので聞き返してしまった。
「あたしと君の関係をお終いにしよって言ったんだけど」
「な、なんで突然そんな事をっ?」
急過ぎて、頭がついていかない。
「そうだね……まあ、クリスマスもお正月も過ぎたし? そろそろ良いかなあって」
「何だよそれ」
「ん? もしかして納得できなかったりする?」
「急にそんな事を言われてできるわけないだろっ」
つい声を荒げてしまう。
「声、大きい」
「ご、ごめん……」
「だけど、いきなりそんな事を言われたら……」
すると、彼女の顔から表情がスッと抜け落ちた。
「君の幼馴染み――小牧さん、カレシと別れたらしいじゃん」
「っ……なんで、その事を」
「この前、あの子と話す機会があって、その時に聞いた」
「え?」
いや、あの、ちょっと待て。理解が全く追いつかない。澪が夕子と……って。
「何で夕子と?」
「その辺りは……うーん、まあ置いといて」
いや置いとける訳ないだろ。何で? どうやって? 確かに面識はあるから不可能では無いけれど。……だけど。
またも頭の整理ができないうちに、澪が続きを喋る。
「まだちょっと複雑な心境かもしれないけど、こうなったらもう仕方ないじゃん。以前にも言ったと思うけど、脈大有りだよあの子」
「……っ」
いや、僕が聞きたいのはそんな事じゃなくて。
だけど、ああ駄目だ言葉にならない。
「――元々、奏多君はあの子が好きだったわけだし。あたしはそれを承知の上で付き合った訳だし。それでこうなった以上はもうゲームセットかなって」
「……っ」
いやゲームセットって。
「だから、さっきも言った通りクリスマスとかお正月とかイベントも楽しめたし、ここはサクッと結論出しちゃった方が良い……」
「良い訳ないだろっ」
ようやく言葉が出た。ボリュームの大小はもうどでも良い。澪が何を考えてるのか、それが知りたかった。
「なんでそうなるんだよ? 僕は君と今付き合ってるじゃないか。それなのにワザワザ別れて夕子と付き合うなんてあるわけないだろ?」
「そうかな」
「そうだよっ」
「それじゃあ聞くけど、クリスマス前辺りからデート中にあたしそっちのけで物想いに吹ける事が多いのは何故?」
「っ……それは」
一瞬、言葉に詰まる。澪と一緒の時云々以前に、ふとした瞬間に意識が自分の内側に入り込んでしまう事が最近多いのは自覚があったからだ。
「その時の表情って、あたし達が付き合う直前、二人で合コン抜け出した後に君の態度が急変した時と同じなんだよね。……それに、あたしはその表情を付き合いだした後もずっと見てる」
「――え」
「例えばこれ」
と澪が手に取ったのは、彼女のお気に入りでメニューにある時はいつも飲んでるオレンジジュース。
「それがどうかしたの?」
「これ、幼馴染みの彼女――小牧さんも好きなんだってね」
「っ!」
そこで、漸く僕は彼女の言わんとしている事に気がついた。
「奏多君、あたしと最初に話した時もこのジュースに注目してたよね。それからその後もずっと。そしてその時はいつも、ちょっと苦しそうな表情をしてた――自覚ある?」
「それは……」
何とか答えようとする僕に猶予を与えず、澪が続ける。
「ずっと何でかなとは思っていたけれど、小牧さんと話した時、二人とも同じものを注文してさ。その時にあの子が話してくれたんだ。それで全て合点した」
「……」
僕は何も口に出せなくなっていた。
「つまり、あたしがこれを飲んでる時って、いつも君の頭の中には小牧さんがいたんじゃないかな。苦し気に見えてたのは、切ない気分になっていたから。違う?」
「……」
何も答えられない。
「そして小牧さんがカレシと別れたっていうクリスマスの前辺りから、奏多君がその表情をする機会がぐんと増えた。一切承知の筈だったあたしが見逃す事ができないくらいに――そして」
澪はそこで一度言葉を区切り、何も反応できなくなった僕を見ながら、さらりと渇いた様な声で言った。
「奏多君、今の君もそんな表情をしてる」
「っ……そ、れは」
何か言おうとしたけれど言葉にならなかった。自覚はなかったけれど身に覚えはありすぎて動揺していた。決まっていた筈の気持ちは頼りなくゆれてしまっていた。それでも何とかしたくて、彼女の視線から目を離さずに必死にワードを探す。
そんな僕に、彼女はトドメを刺した。
「それに何より、あたしは奏多君に今まで一度も『好き』って言ってもらってない」
――あ。
言われた瞬間、僕は思わず視線を落としてしまった。これは本当の本当に気づいてなかった。だから彼女の瞳を見続けることが出来なかった。
そこを見透かされた瞬間、話は終わった。
「……もう、良いよね? あたしだってこんな話するの苦しいしさ、ここで綺麗に終わりにしよ?」
「澪……」
「そんな顔しなくても良いじゃん。奏多君は自分に素直になれる。あたしはあたしで結構楽しめた。暇で退屈だった毎日に少し華やかな想い出ができた。だから……もう、いいじゃん?」
「……」
何も言えずに俯くしかなかった僕の様子から『全て終わった』と判断したのか、澪は席を立った。
「――というわけで。じゃあね、ばいばい」
最後に一声かけて澪は立ち去っていく、躊躇することなく階段を降りていき姿が見えなくなった。
残された僕はただ彼女がいなくなった場所を見つめる事しかできない。澪と入れ替わるようにして二階に上がってきた女性二人組が近くの席に座って喋り出しても一人だけ時間が止まった様に動けない。ただ、頭の中でだけは色々な事が高速で駆け巡っていた。
嘘だろ、これで終わり?
澪とはもう会えない?
今起きた出来事を現実として受け止めきれない自分がいた。
――さらに。
僕は未だに夕子の事を?
澪といる時も?
だから好意を口にしてなかった?
彼女が僕に告げた事実に混乱もしていた。
だけど。
――じゃあね、ばいばい。
「……っ!」
それだけは嫌だ。考えがまとまらないとかどうでもいい。今はこの感情を優先したい。先程まで彼女が座っていた向かい側の空席を見つめ、僕は拳を握りしめる。立ち上がり、階下へ消えていった彼女の後を追う。
「わっ」
「きゃっ」
勢いよく駆け降り過ぎて、危うく上がってくる人達とぶつかりそうになった。
「っ……すみません!」
謝りながらも階段を降りきり、そのまま店の外へ。非常に申し訳ない事だけど、今はそこで立ち止まる時間も惜しかった。
澪はどこへ向かったのか。わからない。だけど最終的に帰るなら必ず電車に乗る必要はある筈だ。だから、とりあえず駅へ向かう事にする。
行き交う人々を避けながら、歩道の上を走り、駅前の広場手前の横断歩道で信号待ちをしている人の中に、彼女の姿を見つけた。
その途端、赤だった歩行者用信号が青に変わる。
周りと同じく歩きだそうとする彼女に対して、走れば追いつけるのに、彼女が自分の意思で立ち止まってくれるのを願っての事だったろうか。
僕は思わず叫んだ。
「澪っ??」
誰も反応しない。当たり前だ。街中でいきなり大声出す様なやつがいたら、そうするのが正解だろう。皆、何も聞こえなかったかの様に横断歩道を渡っていく――ぴくんと肩を震わせて動きを止めた一人だけを除いて。
「澪」
もう一度、今度は普通の音量で名を呼び、背中を向けたまま立っている彼女に近づく。腕を伸ばせば肩に手が届く程の距離まで近づいた時、彼女はこっちへと振り返った。
その瞳は、濡れていた。
「澪……」
馬鹿の一つ覚えみたいに名前を連呼する他に術の無い僕に向かって、少し顔が赤くて、ちょっと怒っているかの様な口振りで澪は口を開いた。
「どうして?」
「え?」
「どうして追いかけてきたの?」
「えっと……それは」
責めるような口調にたじろぐ。気圧される。
だけど、それじゃあ、ここまで追いかけてきた意味がない。
「これで終わりだなんて……嫌だったんだよ」
正直に白状する。
「あたしのことを好きってこと?」
「それは……う……」
「ううん、やっぱ答えなくていいよ」
「え?」
「表情見たらわかる」
大きな溜息を吐かれた。
「せっかく、人が格好つけて潔く身をひこうとしたのに」
「……ごめん」
「あの子の事が好きな奏多君を見て、あたしは君を好きなっちゃったんだから、こういう終わり方もアリだよねって漸く自分に言い聞かせる事が出来たのに」
その言葉の意味は半分くらいしか理解できなかったけれど、今の僕には謝る以外の選択肢は無かった。。
「……ごめん」
「別れた後で泣きながら歩いてるとこなんて見られたくなかったのに」
「……っ、ごめん」
「……バカ」
ただ同じ語句を繰り返すことしか出来ない僕の胸に、澪は額をコツンと当ててきた。
『一週間、自分の気持ちを考えてみて』
その日は結局、そう告げられて澪と別れた。考える時間なんて必要はなく、彼女を引き留めた時点で僕の答えは決まっている筈だった。そうで無いといけない。だけど、それなら夕子の事はもう何とも思ってないのかというと、自分で自分の事が嫌になるくらい、最近の彼女の言動に関するモヤモヤやザワツキ、グゥッと胸を締め付けられるような感覚が残っているのもまた事実で。
要は次に澪と会う時までに、僕はそれらの感情を完全に整理して、決別しなければならない。
いや、必ずしてみせる。
――そう心に決めて迎えた、朝に澪のいない新学期早々。
「ねえ染谷君、ちょっといい?」
普段あまり関わりのないクラスメイト二人から声をかけられた。
「染谷君てさ、もしかしてカノジョ出来た?」
「……いきなり何?」
「いや、ちょっと噂になってるからさ……」
噂? 僕にカノジョがいると噂になるのか? 馬鹿な。玲司じゃあるまいし。
「噂って、どんな?」
「それは……」
「……ねえ?」
そっちの二人だけで意思疎通されても、こっちは何のことだかさっぱりわからない。なんなのだろう。
「ねえ、良いじゃん教えてよ」
「そうそう、別に隠す事じゃないっしょ?」
詰め寄られる。まあ言いふらす事でもないけど、聞かれて隠す事でない。というか何かこの状況は居心地が悪い。さっさと答えて解放してもらおう。
「出来たっていうか、いるけど」
答えると何故かキャーキャー騒ぎ出す。何、なんなんだ一体?
困惑していると、さらに不可思議な質問が飛んできた。
「そのカノジョってさ」
「二組の小牧さんだよね?」
「え?」
何を言ってるんだこの子たちは。そして何で今ドキッとした僕? ……て自問自答してる場合じゃないな。これは詳しく聞いておかないとヤバそうだ。
「ちょっと待って、それどういうこと?」
「良いから良いから、今さら隠さなくても大丈夫」
「むしろ『あー、やっぱりか』って感じだし」
「そうそう、おめでとーって感じ?」
「いや、ゴメン。全くもって何のことだかサッパリわからないんだけど」
いい加減、その噂ってやつを教えてくれよ。
すると二人は一瞬互いの顔を見合わせたあとで、片方が切り出した。
「だから『二組の小牧さんが笠原君と別れて、染谷君と付き合い始めた』って話」
「なっ」
なん、だ……それは。
「もう一年の女子の間中で噂になってるよ」
「そうそう『笠原君がフリーになったあ』って」
「あ、勘違いしないでね? みんな『やっぱり小牧さんには染谷君だよね』って思ってたから」
「そうそう。二人の事はちゃんと祝福してるから」
「うんうん、おめでとう染谷君」
「じゃねー」
聞きたい事が聞けて満足したのか、二人は僕がフリーズしている間にどこかへ行ってしまった。いや、そんな事はどうでもいい。
それより、何だ?
僕と夕子が付き合ってる?
そんな根も葉も……ないとは言い切れないのが苦しいところだけど、とにかくデタラメには違いない噂が出回ってるって……どういうことだよ一体。
鼓動が早い。頭の中が混乱してる。いま駄目だ落ち着け。まずはあの二人が言ってたことの真偽をたしかめなくちゃ。教室に戻り、今もなお安条と連絡を取り合って居るという市川に聞いてみる。
だけど、その結果はやっぱり期待していたものではなかった。
「あー、まあ、うん。そういう噂にはなってるな」
「安条には?」
「俺は言ってないが伝わってはいるんじゃね? 笠原の奴、他校の女子にも人気あるからな」
「澪の耳にも届いてるのか?」
「そこはわからん。ここんとこ連絡取ってなかったしな。下手に様子を探ろうとしたら藪蛇になるんじゃね?」
確かに。僕もちょっと落ち着いて考えた方が良いかもしれない。
「なあ染谷。どうなってるのか詳しくは知らんし、余計なお世話だが、ハッキリさせといた方が良いんじゃね?」
「……ああ、そうだな」
放課後になってクラスが解散になると、僕は一年一組の教室を訪ねて玲司を呼び出した。人通りの殆どない辺りまで移動する。玲司もある程度僕の呼び出しには予想がついてたのだろう。二つ返事で付いてきてくれた。
「悪いな、部活前に」
「まあ俺にも責任のある事だしな。 ……と言ってもあまり時間はとれないから、さっさと本題に入ろうか」
玲司の方から切り出してきた。
「おまえと夕子についての噂の件、だろ?」
うなづき、問い返す。
「どうして僕達が付き合ってる、という事になってるのか、玲司は何か知っているか?」
「はっきりとじゃないが、まあ予想はつく」
と語り出した玲司が言う事には、どうやら発端はやっぱり玲司と夕子が破局した事にあるらしい。その話が玲司の友人達から広がり、色々と尾ひれがついてまわったんじゃないかと、彼は考えているようだった。
「一応、俺は否定してまわってるんだがな。当事者が何を言っても信じてもらえん。なにせ『笠原玲司のカノジョの小牧夕子を染谷奏多が寝取った』とか『小牧夕子が俺ら二人を天秤にかけた挙句に、俺からおまえに乗り換えた』とかいった話の方がネタとしてはウケが良いからな」
「っ……何を勝手に。他人事だと思って」
「他人事だからな」
腹を立てる僕をよそに、玲司がしれっと言った。
「玲司は何とも思ってないのか」
「んなわけないだろ。ただ慣れてるだけだ。他人の恋バナを好きな奴は多いからな。特に俺たち三人の関係は目立っていたからより一層だろ」
と諦念めいた口振りの玲司の言葉に、引っかかるものを感じた。
「ちょっと待て玲司、僕達ってそんな目立っていたのか?」
「何を今更」
「いや、そりゃあ玲司がいるからある程度の注目を浴びているとは思っていたけど。――夕子だって隠れたところでは人気あるし」
「……おまえ、まだそんな事言ってるのか」
「え?」
「この前に菅木と会った時のお前への反応思い出してみろ。中学の時とは段違いだっただろ?」
「ん、それはまあ……」
確かにあんなに積極的に喋りかけられた事って初めてだったけど。あれから何回かメッセージが携帯電話に来ていたけど。
「奏多、お前は自己評価が低すぎるんだよ」
玲司は呆れた様に、諭す様に言う。
「高校生になって一気に身長が伸びて背が高くなったし、髪型にも気をつかい始めた。元々ガチの運動部員だったからスタイルもいいし、勉強だって出来る。――今のお前は『アリ』か『ナシ』かで言えば、断然『アリ』の方なんだよ」
「――え」
いやいやいや。
「そんな事はないだろ」
「あるんだよ。お前が夕子のことしか見てなかったから気が付かなかっただけだ。今のおまえと俺にそんなに差はない――元々、俺とお前の差なんて体格差と隠れてガリ勉してた勉強量の差ぐらいのものだったんだよ」
「……玲司」
「だから夕子だって俺とお前の間で揺れていたんだろ?」
「そう……なのか?」
「そうなんだよ――もっと今の自分に自信を持て」
長年の間、僕が密かに劣等感を抱き続けていた親友は、最後にそう言ってポンと一回肩を叩いた。
わりと力が込められていて、痛かった。
「そんでもって、もう一回ちゃんと考えてみろ」
「……何をだよ」
「夕子のことに決まってるだろ」
「…………今更、何も考えることなんてないよ」
「……そうか」
「そうだよ」
「それならいい。たけどそれならそれで、ちゃんと答えを出してやれよ」
「……わかってる」
「まあ、俺が言うことじゃないけどな」
全くだ、とは思ったけれど自虐じみた笑みを見て何も言えなくなった。
空を見上げると、寒々とした薄い青が目に痛かった。
澪とは来週まで連絡を取らない事になっている。だけど、もしウチの学校に広まっている噂が彼女の耳に届いていたとしたら。
「……っ」
夜なって家に一人でいると無駄にぐるぐる頭が回る。居ても立っても居られず、約束破りだけど携帯電話を手に取る。文字だと誤解を生みかねない。ここは電話しかない。
――だけど、澪に繋がる事はなく。
結果として、益々不安が募るだけになってしまった。




