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証拠調べ

イオルフは驚きの声を上げながら、水しぶきを上げて運河に落ちた。

「行くぞ!」レオハルトは剣を拾い上げ、全員に叫んだ。

彼らは混乱に乗じて船に飛び乗り、素早く岸から離れた。残りの兵士たちは岸から矢を放ったが、ほとんどが水面に落ちた。

「よくやった」レオハルトはセリーヌを抱きしめた。「危険だったが、勇敢だった」

「私だって黙って捕まるわけにはいかないわ」セリーヌは少し震えながらも、強がって言った。


彼らは急いで船を漕ぎ、運河の暗がりの中に消えていった。後ろでは、水から這い上がったイオルフが怒りの叫びを上げていた。

「どこへ向かいましょう?」マーカスが尋ねた。

「北門だ」レオハルトは答えた。「アルベール侯爵の軍と合流する」

彼らは運河を通って北区へと向かった。夜の闇が彼らを守り、月の光だけが彼らの道を照らしていた。街の上空には、オレンジ色の明かりが見え、騒ぎがまだ続いていることを示していた。

「アルベール侯爵はどこにいるのだろう」レオハルトは静かに言った。「突破したという北門を目指すべきか」


「しかし、そこは最も警戒が厳しいはずです」マーカスが言った。「グラディーン家も北門に兵力を集中させているでしょう」

「私たちは目立ちすぎる」ルドルフが言った。「別の方法を考えるべきだ」

運河は街の様々な区域を通り抜けていた。彼らは外堀に出るまで船を進め、そこから北側の岸辺に向かった。街の喧騒から少し離れた場所で、彼らは船を降りた。

「ここから北門までは歩いて行ける」ルベックが言った。「しかし、街路は危険です。兵士たちがパトロールしています」

「裏通りを使おう」レオハルトは提案した。「少人数なら、見つかりにくいはずだ」


彼らは影に紛れながら、静かに街の北区を目指した。時折、グラディーン家の兵士たちのパトロールが通り過ぎると、彼らは急いで路地や建物の陰に隠れた。

「北門が見える」マーカスが小声で言った。

彼らは低い塀の陰から北門を観察した。そこでは激しい戦闘の痕跡が見られた。門の一部は破壊され、数体の負傷した兵士たちが地面に横たわっていた。しかし、アルベール侯爵の軍の姿はなかった。

「彼らはどこへ行ったのだ?」レオハルトは眉をひそめた。

「突破した後、市内に進軍したのでしょう」マーカスが推測した。「しかし、どこへ…」


その時、遠くから馬のいななきが聞こえた。彼らは振り返り、西側から接近する騎士隊を見た。

「あれは…」セリーヌが目を凝らした。「父上の騎士団よ!」

彼女の言う通り、騎士たちは緑と銀の旗を掲げていた—ヴァランティーヌ家の色だ。

「彼らに合図を送ろう」レオハルトはマーカスに言った。

マーカスは彼らが持っていた松明を振り、特定の合図を送った。騎士たちはすぐに気づき、彼らの方向に進路を変えた。

先頭を走る馬から、見慣れた顔が見えた。アルベール侯爵だった。彼は騎士たちを停止させ、馬から降りた。


「レオハルト王子」彼は安堵の表情で言った。「無事で何よりだ。我々は既にあなたの居所を襲撃されたと聞き、捜索していたところだ」

「侯爵」レオハルトは深く頭を下げた。「来てくれて感謝する」

「父上!」セリーヌが駆け寄った。

「セリーヌ」侯爵は娘を抱きしめた。「怪我はないか?」

「大丈夫よ」彼女は微笑んだ。「レオハルトが守ってくれたわ」

「状況は?」レオハルトが尋ねた。

「我々は予定より早く到着し、北門を突破した」侯爵は説明した。「しかし、街中は混乱している。グラディーン家の兵士が市民を脅し、外出禁止令を強制している」


「大司教は?」

「病に倒れたと聞いている」侯爵は顔をしかめた。「しかし、それは口実だろう。彼はグラディーン家に脅されているのではないかと疑っている」

「我々はどうするべきか」レオハルトは思案した。「街中で戦闘を続けるわけにはいかない。市民が巻き込まれる」

「そうだな」侯爵は同意した。「まずは安全な場所に移動しよう。我々の軍は現在、北区の広場を確保している。そこなら防衛しやすい」

彼らは侯爵の騎士団と合流し、北区の広場へと向かった。そこには既にアルベール侯爵の軍が陣を敷いており、周囲を警戒していた。広場の中央には大きなテントが設営され、指揮所となっていた。


テントの中で、彼らは現状を分析し、次の行動を話し合った。

「グラディーン家の兵力は?」レオハルトが尋ねた。

「約二千」侯爵が答えた。「主に城壁沿いと中央区に集中している」

「我々は?」

「千五百ほど」侯爵は言った。「さらに、モントゥリエ伯爵とボーモント侯爵の軍が明日には到着する予定だ」

「民衆の反応は?」

「混乱している」マーカスが言った。「多くは家に閉じこもっているが、王子の帰還を支持する声も多い」


レオハルトは地図を見つめながら、深く考え込んだ。「我々の目的は内戦ではない」彼はゆっくりと言った。「できる限り平和的に解決したい」

「しかし、グラディーン家は既に武力行使に出ています」マーカスが指摘した。「彼らは評議会を避け、力で問題を解決しようとしています」

「そうだな」レオハルトは静かに言った。「しかし、彼らに従って同じ道を行くわけにはいかない。私は違う道を示さねばならない」

彼は決断を下した。「我々は防衛的な立場を取る。攻撃はせず、市民の安全を最優先する。そして、大司教と直接話し合う機会を求める」

「それが可能でしょうか?」侯爵が疑問を呈した。「大司教は我々に会おうとするでしょうか」


「会わせる」レオハルトは確信を持って言った。「我々は民衆の支持を得ている。そして、内戦を避けるための提案がある。彼も聞く耳を持つはずだ」

議論は夜遅くまで続いた。最終的に、彼らは使者を大聖堂に送り、大司教との会見を求めることにした。同時に、市内の支援者たちを通じて、民衆に真実を伝える努力も行うことになった。

「明日、全てが決まる」レオハルトは言った。「我々の行動が、国の将来を左右する」

夜も更けた頃、レオハルトはテントの外に出て、星空を見上げた。北区の広場は静かで、遠くでわずかに聞こえる騒ぎ以外は平和だった。


セリーヌが彼の隣に立った。「また考え事?」

「ああ」レオハルトは微かに微笑んだ。「明日のことを」

「心配しないで」彼女は彼の腕に手を置いた。「民衆はあなたの側にいるわ。そして、あなたは正しいことをしている」

「それでも」彼は静かに言った。「多くの命が私の決断にかかっている。間違いは許されない」

「だからこそ」セリーヌは優しく言った。「あなたは良い王になる。責任の重さを知っているから」


レオハルトは彼女の顔を見つめた。月明かりが彼女の金色の髪を銀色に染め、青い瞳を輝かせていた。

「あなたがいてくれて良かった」彼は心からそう思った。「一人ではここまで来れなかった」

「私もよ」セリーヌは微笑んだ。「あなたと出会えて良かった。二度も」

彼らは静かに夜空を見上げた。街の上では、時折り松明の光が動いているのが見えた。明日、この街の運命が決まる。そして、彼らの将来も。

「さあ、休みましょう」セリーヌが言った。「明日は長い一日になるわ」


彼らはテントに戻り、それぞれの休息場所へと向かった。疲れていたにもかかわらず、レオハルトはなかなか眠りにつけなかった。明日の重大な決断と、イオルフたちの次の一手を考えていた。


やがて彼も疲労に負け、眠りに落ちた。夢の中で、彼は子供の頃のオルシニ城にいた。雪に覆われた城の中庭で、父エドガー王が彼に語りかけていた。

「王の道は孤独だ」父王の声が響く。「しかし、民のために進むべき道だ」

「でも、父上」夢の中のレオハルトが尋ねる。「どうすれば良い王になれますか?」

「力ではなく知恵で。恐怖ではなく愛で」父王は答えた。「そうすれば、民はあなたについてくるだろう」

レオハルトは目を覚ました。外はまだ暗く、夜明け前だった。しかし、彼の心は明るかった。父の言葉は夢だったかもしれないが、そこに真実があった。彼は自分の道を見つけたのだ。


夜明け、グラディーン家の居館では、激しい口論が行われていた。

「無能め!」グラディーン伯爵は怒りに震えていた。「どうして彼らを逃がした!」

「私だけのせいではない」イオルフは反論した。「我々の情報は不完全だった。彼らは予想外の脱出経路を持っていた」

「そして、アルベール侯爵の軍が予定より早く到着した」アザゼルが付け加えた。「我々の計画は狂った」

「言い訳は聞きたくない」伯爵は冷たく言った。「大司教は動揺している。彼は我々を疑い始めている」

「どうすればよい?」イオルフが尋ねた。


「我々には選択肢が二つある」伯爵は言った。「戦うか、妥協するか」

「戦いましょう」イオルフは即座に答えた。「我々にはまだ兵力がある。彼らを打ち負かせる」

「市街戦になれば、民衆は我々に敵対する」アザゼルが警告した。「既に王子への支持は広がっている」

「では」伯爵はじっと考え込んだ。「妥協するしかないか」

「妥協?」イオルフが声を荒げた。「父上、我々が十年かけて築いた権力を手放すというのか」

「全てではない」伯爵は静かに言った。「我々は交渉の席につく。そして、条件を引き出す。完全な敗北を避けるためだ」


イオルフは不満そうだったが、反論はしなかった。彼も状況の深刻さを理解していた。

「アザゼル」伯爵が命じた。「大司教に使者を送れ。我々は評議会の再開に同意すると伝えろ」

「わかりました」アザゼルは頭を下げた。

伯爵はイオルフを見つめた。「この状況を挽回する最後のチャンスだ。失敗は許されないぞ」

イオルフは黙って頷いた。彼の目には、まだ諦めていない決意の色があった。


朝日が広場に差し込み始めた頃、レオハルトたちの陣営に大聖堂からの使者が到着した。彼は大司教からの伝言を持ってきていた。

「大司教ウルバンは、本日正午に大聖堂で評議会を開くと宣言されました」使者は恭しく言った。「全ての関係者が出席するよう求められています」

「評議会が再開されるのか」マーカスは驚いた様子だった。「グラディーン家が同意したのか」

「状況が変わったからだろう」アルベール侯爵が言った。「我々の軍が到着し、民衆の支持も明らかになった今、彼らも力だけでは解決できないと悟ったのだ」


レオハルトは思案した。「罠かもしれない」

「その可能性はあります」マーカスも同意した。「彼らは昨夜も我々を罠にかけようとしました」

「しかし」ルドルフ学院長が言った。「これは我々が求めていた機会でもある。評議会の場で、王子の正当性を証明する最良の機会だ」

「そうだな」レオハルトは決断した。「我々は出席する。ただし、十分な警戒と護衛を伴って」

彼らは準備を始めた。レオハルトは王家の正装に身を包み、王族の証である剣を帯びた。侯爵も正装を整え、セリーヌも上品なドレスに着替えた。

「私も行くわ」彼女はきっぱりと言った。「これは私の戦いでもあるもの」


「危険かもしれない」レオハルトは心配そうに言った。

「わかってる」彼女は微笑んだ。「でも、私たちは一緒に来たでしょう。最後まで一緒にいるわ」

彼は彼女の決意に満ちた目を見て、もう反対できないことを悟った。「わかった。だが、常に私の側にいてくれ」

「約束するわ」


正午近く、レオハルトたちの一行は五十人の精鋭護衛を率いて、大聖堂へと向かった。街路には民衆が集まり、彼らの姿を見ようと押し寄せていた。多くの人々が敬意を示し、中には「王子様、万歳!」と叫ぶ者もいた。

大聖堂の前には、グラディーン家の兵士と大司教の親衛隊が整列していた。彼らは警戒しながらも、レオハルトたちの通行を妨げなかった。

大聖堂の内部は荘厳で、高い天井からはステンドグラスを通した色とりどりの光が差し込んでいた。中央には大きな円卓が設置され、その周りに椅子が配置されていた。既にグラディーン伯爵とイオルフ、そして数人の高位聖職者たちが席についていた。


「レオハルト・オルシニ王子」大司教ウルバンが宣言した。「アルベール・ド・ヴァランティーヌ侯爵。ようこそ」

レオハルトは丁重に頭を下げた。「お招きいただき感謝します、大司教」

彼らは指定された席に着いた。レオハルトは大司教の右側、グラディーン伯爵はその左側だった。セリーヌは父と共に、レオハルトの隣に座った。

「この評議会の目的は」大司教が始めた。「レオハルト・オルシニを名乗る若者の正統性を評価し、王位継承の是非を討議することである」

彼は一呼吸置いた。


「まず、王子の証明から始めよう。ヴァレンシュタイン学院長、あなたの証言を」

ルドルフが前に進み、古い巻物を広げた。「これは王室の系図書です。エドガー王自身が記したもので、王子の指紋と血液のしるしが記されています」

彼は巻物を大司教に渡し、さらに別の文書も提示した。「これらは王子の教育記録と、十年前の避難計画の詳細です」

大司教はこれらの文書を慎重に調べ、同席の学者たちにも確認させた。彼らは文書の真正性を確かめ、最終的に大司教に肯定的な報告をした。

「次に」大司教はレオハルトに向き直った。「あなた自身の証拠を」


レオハルトは立ち上がり、王家の剣を取り出した。「これは星の守り手、代々王家に伝わる剣です。王家の血筋のみが扱うことができます」

彼は剣を掲げ、その刃が大聖堂の光を受けて青く輝いた。多くの者が驚きの声を上げた。

「さらに」彼は襟元を開き、肩の星形の痣を示した。「これは王家の血筋に現れる星の印です。私の父も兄弟たちも同じ印を持っていました」

大司教は近づいてその印を確認し、古い文書と照らし合わせた。彼の表情には認める色が浮かんでいた。


「グラディーン伯爵」大司教が言った。「あなたの反論は?」

伯爵は冷静に答えた。「証拠は印象的だが、一つの疑問がある。彼が本物の王子だとして、なぜ十年もの間、国が必要としていた時に姿を現さなかったのか」

レオハルトはこの質問を予期していた。「私は安全のために記憶を封印されていました」彼は静かに言った。「エレノア王妃、私の母の命により、私はレオン・ラグランとして育てられました。私自身、最近まで自分の正体を知りませんでした」

「そんな記憶封印などあり得るのか?」イオルフが嘲笑した。

「あり得ます」ルドルフが毅然と答えた。「エレノア王妃はオルブリア王国の出身で、強力な呪術の力を持っていました。彼女は息子を守るため、この方法を選んだのです」


「それを証明できるか?」伯爵が追及した。

レオハルトは静かに応じた。「アザゼル・クロフォードに聞いてはどうだろう」

魔道士のアザゼルは明らかに居心地悪そうな表情を見せた。

「彼は読心術の専門家だ」レオハルトは続けた。「彼は以前、占い師に変装して私の心を探った。そして最初、何か特別なものを感じたにもかかわらず、後に『見間違えた』と言った。それは、彼が私の記憶封印の壁に直面したからではないだろうか」


アザゼルは答えを拒もうとしたが、大司教が彼に厳しい視線を向けた。

「真実を話せ」大司教が命じた。

アザゼルはため息をついた。「確かに…彼の心には通常とは異なる障壁がありました。それは強力な魔術によるものでした。私はそれを、「孤児ゆえの何かつらい記憶を封印するための、心理的な治療の痕跡だ」と、解釈しましたが、実際に封じられていたのは王子としての記憶だったのです」

これを聞いて、大聖堂内にざわめきが広がった。

「十分だ」大司教はようやく言った。「証拠は明白だ。レオハルト・アウレリアン・オルシニ、あなたはエドガー王の第二王子であり、正統な王位継承者だと認める」

この宣言に、レオハルトの支持者たちから小さな歓声が上がった。セリーヌは彼の手を握り、喜びの表情を浮かべた。


「しかし」大司教は続けた。「王位の問題は別の議論が必要だ。十年もの間、国は大司教と貴族評議会によって統治されてきた。急激な変化は混乱を招く」

「その通りです」レオハルトは立ち上がった。「だからこそ、私は立憲君主制を提案します」

大聖堂内が静まり返った。

「私は絶対的な権力を求めてはいません」レオハルトは穏やかに、しかし力強く言った。「王として統治しますが、貴族評議会と大司教との協力の下で。各地方の自治権を尊重し、民の声を反映させる新たな統治形態を築きたい」

彼の提案は、多くの貴族たちの興味を引いたようだった。彼らは互いに顔を見合わせ、小声で議論し始めた。


「具体的にはどのようなものか?」大司教が尋ねた。

レオハルトは準備してきた統治案を詳しく説明した。王の権限と貴族評議会の役割、大司教の位置づけ、そして民の代表者たちの参加まで。それは革新的でありながらも、現実的な提案だった。

説明が終わると、大司教は黙考した。グラディーン伯爵の表情は読み取れなかったが、イオルフは明らかに不満そうだった。

「この提案について」大司教が言った。「評議会で議論する必要がある。すぐに結論は出せない」

「理解しています」レオハルトは頷いた。「しかし、一つだけお願いがあります。この争いを平和的に解決してほしい。もう十分に血が流れました」

「同感だ」大司教も頷いた。「では、三日後に再び集まり、最終決定を下そう。それまでの間、双方とも敵対行為は慎むように」

「承知しました」レオハルトは同意した。


グラディーン伯爵も渋々ながら同意した。イオルフは不満そうな表情を隠さなかったが、父親の決定に従った。

評議会は終了し、参加者たちは各自の陣営に戻った。大聖堂を出ると、大勢の民衆が集まっていた。彼らはレオハルトの姿を見て歓声を上げた。

「王子様!」

「真の王の帰還だ!」

レオハルトは民衆に向かって手を振り、彼らの支持に感謝した。セリーヌが彼の隣を歩き、アルベール侯爵や護衛たちが彼らを囲んでいた。

北区の広場に戻ると、マーカスが結果を聞きたがって近づいてきた。

「上手くいきました」セリーヌが嬉しそうに報告した。「レオハルトは王子として認められたわ!」


「王位については?」マーカスが尋ねた。

「まだ決定していない」レオハルトは答えた。「三日後、再び評議会が開かれる」

「それまで敵対行為は禁止されました」アルベール侯爵が付け加えた。「一時的な休戦状態です」

彼らはテントの中で詳細を語り合った。評議会での議論、グラディーン家の態度、そして今後の展望について。

「彼らが本当に平和的な解決に同意するとは思えない」マーカスが懸念を示した。「特にイオルフは」


「私もそう思う」レオハルトは同意した。「警戒は怠らないようにしよう」

「しかし、大きな一歩を踏み出しました」ルドルフは言った。「あなたは正統な王子として認められた。これは重要な勝利です」

レオハルトは頷いた。確かに大きな前進だった。しかし、最終的な決着はまだ先だった。彼はセリーヌの方を見た。彼女は疲れているようだったが、目には喜びの色があった。


「休息を取ろう」彼は優しく言った。「今日は長い一日だった」

「ええ」セリーヌは微笑んだ。「でも、良い一日だったわ」

彼らは各自の休息場所へと向かった。レオハルトはテントの入り口で立ち止まり、振り返った。北区の広場には、彼の支援者たちと兵士たちが集まっていた。彼らの表情には希望が見えた。

《一歩ずつだ》彼は思った。《平和的な道を選び続けよう》

夜空に最初の星が瞬き始めた。長い戦いはまだ続いていたが、希望の光が見え始めていた。

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