4、牢
突き飛ばされたと同時、きしむ音とともに背後の扉が閉まる。足がもつれ派手に転び、舞いあがる土埃で盛大にむせた。罪人には不要と松明の類もない。
陽の光も差さない地下の牢獄。
ここが、敗戦国の姫の末路だ――――
…………あれ?
……自分の設定通りに行動してたら、地下牢に放り込まれた件について――――!
これは詰んだ!!
入ってきた扉の方向すら分からない!! 手探りで進むしかない、それで扉の場所が分かったところで、何が出来るというのか!?
死ぬことが決まってしまった瞬間に自我を与えらえたような歪な感覚。この危機的状況をまるで劇を眺めるかのようにさっきまで静観していたというのに――それが急に当事者なんだから演じてと告げられても――――もはや何も出来ず死ぬしかない!
……現実感がまるで無い。
世界が私に黙って死ねと言っているかのような――――
――
――――――
いや……現実逃避はよそう。
自国の力が及ばなかった、それだけだ。兵士のせいにして取り乱さなかっただけでも上出来。そして、私の死にはそれこそ意味がある。国に残してきた民のため、交渉材料としての価値を全うする。
せめて見苦しくない最期を……
座して死を待つ。
――――――大丈夫、怖くない。
泣いたりなどしない。