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4、牢
突き飛ばされたと同時、軋む音とともに背後の扉が閉まる。足がもつれ派手に転び、舞いあがる土埃で盛大にむせた。罪人には不要と松明の類もない。
陽の光も差さない地下の牢獄。
ここが、敗戦国の姫の末路だ――
飲食の持ち込みは厳禁らしく、携帯食料は取り上げられた。別れ際に私の身を案じていた部下たちには、戦は終わりだと国に伝えるようにと頼んだので差し入れにも期待できない。
「……つまり、この先生がキノコってことか」
あまりの暗さに自我を失って発狂し、『私は誰!?』と百万回唱えたら、私は私を思い出した。醜態を晒した自覚はある。お恥ずかしい限りだ。
記憶が戻ろうが脱獄方法なんて思いつかないし、私が無力なことに変わりはない。だけど、このまま死を受け入れるつもりはないし、ましてや餓死なんて御免こうむりたい――楽しい経験はさせてもらったけど、悪いがこれ以上は付き合ってられない。
幸いにも、私を探してくれていそうな人に心当たりはある。大人しく待つしかないのが、申し訳なくはあるのだけれど……。




