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2,瞳
この街の人間は、どうやらみんな犬に食べられてしまったらしい。誰にも会えないのだから、そう思われても仕方がないだろう。
そんな訳で、今すぐこんな街からは出て行こうと思う。一人が寂しいとかでは決してない。犬しかいないこの街の現状について誰かに説明を――――
咄嗟の言葉は出ない。
――気付けば目の前に人が立ってた。
女性だ。
背が高い。
瞳が紅く光っている。
……ちょっと近寄りがたい。
向こうも私の存在は想定外だったようで、訝しげに首を傾げたまま微動だにしない。無機質な視線は道端の虫に向けるそれだ。
道を尋ねようにも人選は選びたい――しかし決断が遅すぎた。彼女の背後が闇に染まり、日中だというのに夜のように暗くなる。自分の姿さえ朧げになり――――深紅の瞳と至近距離で対峙する。
胸が抉れたような感触。
……痛みはない。それだけが救いだった。