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偽りの恋人  作者: 水月
16/26

16

 蕗子は考えた。

 考えて考えて考えて、疲れ果てても眠れないくらいに考え続けた。

 だが、いくら考えても答えは出ない。

 浩司の言葉を信じたいと思う反面、自分は彼を信じきっていたのに騙されていたという屈辱が胸にむらむらとこみあげて、そんな気持ちを嘲笑う。

 蕗子はベッドの上で何度も寝返りを打ちながら、まんじりともせずに朝を迎えた。

 寝不足の蕗子に追い討ちをかけるように、将太は目を覚ました途端ぐずぐず言い出した。

 頭が痛いだの、薬を飲むのは嫌だの。相手は病人だからと辛抱強く接していたが、一時間も相手をしていると、ぎりぎりまで引き伸ばされた忍耐が音をたてて千切れそうになる。

 看護師が検温のために部屋に入ってきたのを潮に、蕗子は気分転換も兼ねて売店に行くことにした。何か将太の気を紛らわせるものがあるかもしれない。

 部屋を出た途端、ドアの横の壁に背中を預けてのんびりと立っている津本の姿が目に入った。驚いている蕗子に、にっこりと微笑みかけてくる。

「おはようございます」

「お……おはようございます……。え、何、ずっとここにいらっしゃったんですか?」

 すると、津本は心外だとでもいうように頷いた。

「護衛ですから」

「まさか……徹夜したなんてことは……」

 おずおずと問いかけると、彼はこともなげに肩をすくめて見せた。

「慣れてますよ」

 蕗子は困ったように津本を見上げた。

「そんな……一言おっしゃってくだされば、もう一つベッドを用意してもらったのに」

 蕗子の顔をしばらく眺めてから、彼はにやりと笑った。

「ご親切に。でも、お断りするしかなかったでしょうね。浩司様に殺されかねませんから」

 彼の台詞に、蕗子は息を呑んだ。

「まさか、そんなこと」

 津本に意味深な視線を向けられて、唇を噛む。蕗子は軽く会釈すると、逃げ出すようにその場を後にした。

 売店にはこれといったものがなく、結局近くのコンビニまで足を伸ばして、将太の気に入りそうな人形つきのお菓子を買った。それを持って病院に戻ると、病室の前でうろうろしていた津本がホッとしたような顔を蕗子に向けた。

 逃げたとでも思ったのかしら、などと考えながら病室に入る。将太は蕗子が買ってきたおもちゃを、喜んで受け取った。

 落ちついてみると、今度はなかなか医師が来ないことに苛立ちが募り始める。たまたま部屋の前を通りかかった看護師にそのことを聞いてみたが、のらりくらりとその場しのぎの返事をするだけで、医師を呼んでくるともなんとも言ってくれなかった。

 とにかく昨日、何事もなければすぐに退院できると言われたのだからと、蕗子は荷物をまとめ始めた。それが終わって時計を見ると、もうそろそろ昼前だ。ぐずぐず言っていた将太も、今は薬のおかげでぐっすり眠っている。

 いくらなんでも、こんなのって変じゃない?

 いよいよ不審に思って、蕗子は再び部屋を出た。今度は津本がついてくる。

「どちらへ?」

「ナースセンターです。いつになったら退院できるのか、聞きたくて」

 ナースセンターの看護師に医師の所在を聞いても、同じような反応だった。その上、津本は監視するようにじっと蕗子の一挙手一投足を見詰めている。そのどちらにも苛々して叫びだしたくなる自分を、蕗子は必死で抑えなければならなかった。

 病室に戻ってしばらくすると、やっとドアが開いた。

 ほっとして顔を上げた蕗子は、だが愕然と目を見開いた。

 そこに立っていたのは、医師ではなく浩司だったのだ。

 今日の彼は、地味な色合いではあるが一目で高級品だとわかるスーツに身を包んでいる。地模様のあるワイシャツに、品のいいネクタイ。袖口からは、銀色に光るカフスボタンと、ロレックスらしい腕時計がのぞいていた。その文字盤にダイヤモンドのきらめきを見つけて、蕗子は目を丸くした。

 改めて浩司を見る。

 いつもとは違って髪がきれいに撫でつけられ、顔立ちもこころなしか厳しく見える。蕗子と同じように眠れない夜を過ごしたのか、幾分顔色が悪く、憔悴して見えた。

 オーダーメイドらしい靴が一点の曇りもなく磨き上げられているのを見て、蕗子は急に物悲しくなった。

 今の彼は、どこから見ても大会社の重役だ。威厳と知性を兼ね備え、巨万の富に恵まれた、ワキサカ・コーポレーションの総帥。それが、彼だ。

 ホテルのスイートルームに初めて足を踏み入れたときとは桁違いの衝撃が、蕗子を襲う。

 彼と私の世界は違うだろうとは思っていた。でも、それがこんなに大きな違いだったなんて……。

 思わず顔を背けた蕗子を見て、浩司の顔が苦痛に歪む。そんな二人を、津本が気遣わしげに見守っていた。

「すまない、遅くなって」

 苦しみを無表情の下に押し隠して、浩司が平板な声を出した。

 蕗子は顔を背けたまま、乱れてもいない将太の布団を直すふりをした。

「別に、待ってなんかいなかったわ。ただ、先生がなかなか来てくださらなくて……」

 その時、魔法のように医師が現れた。驚いている蕗子に愛想良く頷きかけ、眠っている将太の様子を見る。

「遅くなってすみませんでした。今日に限っていろいろと問題が起こりましてね……。熱もなし、顔色もいい。夜中に吐いたりしませんでしたね?」

 蕗子が頷くのを見て、さらさらとカルテにペンを走らせながら続ける。

「いいでしょう。退院許可を出します。この伝票を会計に持っていって、清算してください」

 言いながら、当たり前のように伝票を浩司に渡す医師を、蕗子は呆然と見詰めた。

「一、二週間は安静にさせること。くれぐれも、それだけは守ってください。後で、抜糸までの注意事項と消毒方法を説明しに、看護師が来ます。それをよく聞いて……」

「看護用に人を雇いましたので、こちらから後ほど伺わせていただきます。遅くなってしまったので、昼食の前に連れて帰りたいんですが」

 一生懸命説明を聞いている蕗子の横で、浩司が口を出す。

 すると、医師は驚いた様子もなく頷いた。

「では、その旨を婦長に伝えておきましょう。看護人には、この階のナースセンターに来るよう言っておいてください。では、お大事に」

 それだけ言い残して、医師は部屋から出ていった。

 後に残ったのは、不穏な沈黙だけ。

 決して彼とはしゃべるまいと決心していた蕗子だったが、いくらなんでもこのまま黙っているわけにはいかなかった。

「看護用に人を雇ったって、どういうこと? 将太のことは、私がちゃんと面倒を見ます」

 目を合わさないまま、不機嫌に言う。

 対する浩司の声も、決して愛想がいいとは言えなかった。

「二週間も見張っているつもりか? それに、雇った人間は派遣センターから来るれっきとした看護師だ。その方が安心だろう」

 言いながら部屋を出る浩司を、蕗子は慌てて追いかけた。

「どこに行くの?」

「清算に」

「私が払うわ!」

 伝票を取ろうとする蕗子の手を、浩司はいとも簡単によけた。そのことが悔しくて、蕗子はカッとなった。

 そんな蕗子を冷静に見据えながら、浩司が口を開く。

「余計な金を使うな」

「余計なんかじゃないでしょ! 私の甥なのよ!」

 蕗子が声を荒げて言うと、浩司はぴたりと足を止めた。悲しみに沈んだ瞳で、蕗子を見下ろす。

「僕にとっても、甥だ」

 その表情と沈うつな声にショックを受けて立ち尽くす蕗子を後に、彼はさっさとエレベーターに乗ってしまった。ドアが閉まる直前、彼はその場に立ちすくんでいる蕗子を、一瞬ではあるが激情を宿した視線で突き刺した。そしてドアが静かに閉まった。

 蕗子はゆっくりと回れ右して、のろのろとした足取りで部屋に戻った。ドアを開けると、その音で将太が目覚めた。蕗子の姿を認めて、にこっと笑う。

「お腹しゅいた」

 その天真爛漫な声が、蕗子の笑いを誘った。

「そうね。もうお昼よ。病院から出たら、ご飯を食べようね」

「うん! おいたんは? おいたん、来た?」

 将太の無邪気な問いには、笑うことはできなかった。蕗子は震える唇に、なんとか微笑みらしきものを浮かべた。

「ええ、来てくださったわよ。もうすぐ戻ってくるでしょう。その前に、パジャマを着替えないとね」

 すると将太は嬉しそうな笑みを満面にたたえ、蕗子が歯噛みするほど素直に頷いた。

 ちょうど将太の着替えが終わる頃に、浩司が戻ってきた。こんな大病院にしてはずいぶん早い清算だ。彼が来た途端に医師が姿を現したことといい、胡散臭いことだらけだ。

「おいたん!」

 そう叫んで、将太がベッドの上で飛び跳ね始めた。蕗子が諌めるひまもなく、浩司に抱き上げられる。

「おいおい、ぴょんぴょんしたら駄目だよ。頭を怪我してるんだからね。これからしばらくは、飛んだり跳ねたり、走ったりできないんだ」

 浩司の腕の中で、将太が口を尖らせた。

「えー、そんなのつまんないよ」

「つまらなくてもそうするんだ」

 浩司がそんな厳しい声を出すのは初めてで、将太はびっくりしたように口をつぐんだ。不安そうに見る将太をなだめるように、浩司が口元をほころばせる。

「そうしないと頭の怪我が悪くなって、また病院に逆戻りだぞ。そんなの、いやだろ?」

「うん。いや」

「じゃあ、ちゃんと言うことを聞くこと。いいね」

「うん」

「よし、いい子だ」

 あっという間に将太を説得してしまった浩司の手際を、蕗子は呆然と見守っていた。

 敵ながら天晴れとしか言いようがない。私ではこう簡単にはいかなかったわ。蕗子は渋々それを認めた。

 病院を出た蕗子達を出迎えたのは、堂々としたリムジンだった。映画でしか見たこともない馬鹿でかい車体に圧倒されて、しばらくは口も聞けなかったくらいだ。

 津本が恭しい仕草でドアを開け、蕗子を中に促す。続いて入ってきた浩司は、抱いていた将太を蕗子の隣に降ろしてから、二人の向かい側のシートに腰掛けた。

 三人が腰を下ろしたことを見届けると、津本はドアを閉めた。それから助手席に乗り込み、浩司が座っているシートと運転席を隔てているアクリルガラス越しに浩司が頷くのを確かめてから、運転手に何事か指示を出して発車させた。

 将太は豪華な車内に圧倒されて、声も出せないようだ。きょろきょろと周りを見まわしている。

 それは蕗子も同じだった。リムジンなんかに乗ったのは生まれて初めてだ。この豪華な内装が普通のものなのか、それともリムジンの中でもとりわけ豪華なものなのかすら判断がつかない。

「お腹しゅいた」

 きょろきょろするのに飽きたのか、将太がぼそっとつぶやいた。

「そうか。そうだな。もう昼だもんな。何が食べたい?」

「しゅぱげちぃ」

「わかった」

 浩司がこんこんと背後のガラスを叩くと、それは音もたてずに下がった。

「坊ちゃまはスパゲティをご所望だ。探してくれ」

「かしこまりました」

 津本が答え、ガラスは再び上がって仕切りになった。

 店は難なく見つかり、三人は連れ立って中に入った。

 必要なこと以外は浩司とは口をきかないと決心している蕗子だったが、ひとつだけ気になることがあったので、渋々口を開いた。

「津本さん達は食べないの?」

「いや。二人ともそこにいるよ」

 浩司が微かに頭を動かして指し示した場所を見ると、確かに津本と運転手の姿があった。蕗子の視線を感じて、津本がにこっと笑う。

「どうして一緒のテーブルにつかないの?」

「運転手はともかく、津本はこの店の客や従業員のすべてに集中しなければならないからだ。僕は立場上敵が多い。いつ何時どうなるかわからないから、僕の周りに目を配る者が必要なんだ」

 どうなるかわからない……。

 その言葉にぞっとして、蕗子はぶるっと震えた。そんな彼女の様子に浩司は瞳をきらめかせたが、それは蕗子の目にとまることはなかった。

 一旦口を開くと、それ以上だんまりを続けているのは難しくなった。蕗子は思いきって目を上げ、浩司の無表情な顔を見据えた。

「あなたが来た途端先生が来るなんて、変だわ」

 唐突な問いかけにもかかわらず、浩司はあっさりと肩をすくめた。

「そうかい?」

 だが、彼が目をそらしたことに気付かない蕗子ではなかった。

「そうよ。あなたが何か手を回したんでしょう」

 その時料理が来て、会話は一時中断された。ウエイターが行ってしまうと、浩司はわざとらしい微笑みを浮かべた。

「食べよう。せっかくの料理が冷める」

「ごまかさないでよ。そうなんでしょう?」

 蕗子が食い下がると、浩司は諦めたようにため息をついた。

「ああ、そうだ。きみに支払わせたくなかった」

「どうして?」

「経済的に楽じゃないことを知ってるからだ」

 事実を目の前につきつけられて、蕗子は言葉に詰まった。だが、そのことに更に怒りが募る。

「あなたにそんな心配をしてもらういわれはないわ」

「そうだな。もうそんな心配をすることはない」

 その言い方に何か不穏なものを感じて、蕗子は眉をひそめた。

「どういう意味?」

 すると浩司は皮肉な笑いに唇を歪めた。

「将太の前で言い争うのはやめよう」

 その言葉にはっとして将太を見る。将太は不安そうに二人の大人を見比べていた。

「やっぱりけんかしてるの?」

 悲しそうに将太が言う。蕗子は慌てて微笑みを浮かべた。

「喧嘩じゃないのよ。大丈夫、蕗ちゃんとおじさんは仲良しだから」

 幸い将太はそれで納得してくれたので、蕗子はそれからは決して浩司を見ないようにした。見ればまた何か言いたくなるに決まっているからだ。これ以上将太を動揺させることはできない。

 食後の薬を飲んで車に戻ると、将太はすぐにうとうとし始めた。

「まだ弱っているんだ。足を上げて、横たわらせてやった方がいい。嫌だろうが、きみは僕の隣に座るんだな」

 しばらくためらったが、蕗子は浩司の指示に従うことにした。少しでも将太を楽にしてやりたかったからだ。

 体を強張らせながら、向かいのシートに移動する。浩司とはなるべく離れた場所を選んだのは言うまでもない。

「それで、将太はけんかした友達に謝ったのか?」

 気楽な口調を装ってはいるが、浩司も緊張していることは肌で感じ取れた。

「ええ。昨日の夕方、親ごさんが連れて来てくださったの。怪我をしたのがこっちだったものだから、謝られてしまって……。悪いのはこちらですって説明して、謝っておきました。将太もその時ちゃんと謝っていたわ」

「そうか。良かった」

 それ以上口をきくもんかという蕗子の決意は、肩透かしを食わされる羽目になった。浩司もそれ以上話しかけてはこなかったからだ。蕗子の相手をする義務はないと言わんばかりに足元に置かれたブリーフケースから分厚い書類の束を取り出し、細かい数字や文字の羅列を読みふけっている。

 忘れ去られたようで悔しく、また悲しく思っている自分が嫌で、蕗子はずっと窓の外を眺めているふりをした。

 ぼんやりと眺めてはいても本当には景色を見ていなかったので、車が見知らぬ道を走っていることに気付いたのは、かなり時間が経ってからだった。蕗子は書類に没頭している浩司の横顔と窓とを交互に見比べた後、背後のアクリルガラスをこんこんと叩いた。それに応えて、音もなく窓が下がる。

「ねえ、どこに……」

「閉めろ!」

 ものすごい剣幕で蕗子の言葉を遮る浩司の命令に従わない津本ではなかった。ガラスは再び上がり、蕗子は険しい目つきで睨みつける浩司の顔を戸惑ったように見詰めた。

「なぜわざわざ仕切りを開けてまで津本に聞く? 僕に聞こうとは思わなかったのか?」

「だって……お忙しそうだったし」

 皮肉めいた口調で言うと、浩司は疲れた様子で首の後ろを手でこすった。

「相手をして欲しかったのなら、そう言えよ」

 ため息混じりのその言葉を遮ったのは、今度は蕗子の方だった。

「相手なんてして欲しくありません! ただ、どこに向かってるか知りたかっただけです! そんなことであなたの貴重なお時間を無駄にすることはないと思ったんです」

 つんと顔を背ける蕗子を、浩司はじっと見詰めた。目に浮かぶ苦悩を隠そうともしないまま。

「蕗子……」

「馴れ馴れしい呼び方をしないで!」

「蕗子、聞いてくれ」

 浩司の必死の呼びかけに応えないよう、蕗子は両手で耳を覆った。

「聞かない! あなたの言うことなんて、金輪際信じない! あなたなんて、あの大谷とかいう弁護士よりも性質(たち)が悪いもの!」

 大谷よりも下と聞いて、浩司の堪忍袋の緒が切れた。

「そうか! それなら勝手にしろ!」

 それっきり、無言のドライブが続いた。

 長い長いドライブだった。車は高速道路に入り、将太が目覚めると、休憩のためにサービスエリアに入った。その後は蕗子と並んで座った将太の無邪気な話に救われた。蕗子は訊かれたことに答え、ただ時々うんうんと頷いていれば良かった。

 高速道路を下りると、車はのどかな田園地帯を走った。東京都に入ったことは道路標識でわかっている。多分、郊外のベッドタウンに向かっているのだろう。

 だが蕗子の予想とは裏腹に、車は更に山道を登っていく。眼下に住宅街らしき集落を見ながら、蕗子はこの先に何が待ち受けているのかと考えて怖くなった。無意識のうちに、拳をぎゅっと握り締める。

 やがて、大きな鉄製の門が見えてきた。先が鋭く尖った細長い鉄棒が連なった、背の高い門だ。その両側には、同じ位の高さのコンクリート壁が果てしなく続いていた。

 車はその前で止まり、津本が降りてインターホンで何やら指示を出すと、ゆっくりと開いた。

 電動の門なんだ。蕗子が驚きと共にそう悟った頃には津本は助手席に戻り、車はまた走り出していた。

 美しく整備された森のような庭を抜けると、突然視界が開けた。真っ青な空の下、まるで背景に溶けこむような、瀟洒な屋敷がそびえたっている。

 蕗子が目を丸くする暇もなく、車が止まった。津本がドアを開け、将太を助け降ろす。蕗子はおそるおそる車から降りて、目の前にそびえたつ豪壮な屋敷を見上げた。

 蕗子は津本を振り返り、恐る恐る問いかけた。

「ここは……どこ?」

 津本は答えず、後から降りてくる浩司のためにドアを支えている。浩司がゆっくりと地面に降り立って、蕗子の不安そうな顔を倣岸に見下ろした。

「僕の家だ」

ツッコミどころ満載ですが、見て見ぬふりでお願いします。

筆者自身も、羞恥心に蓋をして、見て見ぬふりを貫きました……!

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