第72話 ルナストーンが足りません
「やったにゃ!成功にゃ!!」
「良かった!成功したよ!!」
ティティルナは、手に持ったボールを大事そうに抱え込むと、初めて作ったマナポーションをホッとした顔で見つめた。
これで、完璧にマナポーションの錬金を習得したから、ティルミオに届けるポーションが、いくらでも錬金術で作れるのであった。
「いやぁ……改めて見るけど、お前たちの魔法って凄いんだな。」
「どうにゃ!小僧、我の凄さを分かったにゃ?」
「くっ……認めたく無いけど、認めざるを得ないな……」
「ふふん。恐れ入ったかにゃ!」
ミッケもジェラミーも、ティティルナがマナポーションの錬金に成功したことで、すっかり安心して気が緩んでいたが、しかし、現実的な問題はまだまだ残っているのだった。
「とりあえず一個出来たけど……お兄ちゃんが採ってきたルナストーンはこの一つを作るので全部使っちゃったんだよね……」
そう、マナポーションを一つ作る事が出来たが、これ以上の材料の用意が無いのだ。
果たしてマナポーション一つでティルミオのピンチは救えるのか。それが問題であった。
「うーん、ティルミオに届けるマナポーション、一個じゃ心許ないよな……」
「そうだにゃぁ、後二個は欲しいにゃぁ……」
「やっぱりそうだよね……どうしよう、ルナストーンもう無いよ。」
ティルミオに届けるには最低でも後二個はマナポーションが欲しい。それが全員の見解であった。しかし、手元には材料のルナストーンが無かった。
ルナストーンを手に入れるには、店から買うか、採掘してくるかのどちらかしか無かったが、店から買うお金はもう無いのだ。
だから必然的に採掘してくるしか無いのだが、それが出来るジェラミーは大きな怪我を負っていて、思うように動けない。
この状況、どうしたものかとみんな頭を抱えて黙ってしまった。
するとジェラミーは、神妙な顔で少し考え込むと、意を決したように声を上げたのだった。
「……分かった。オレ、ルナストーンを採りに行ってみるよ。」
「ジェラミーさん?!」
「オレにティルミオの様にルナストーンの場所が分かる能力は無いが、昨日見つけた鉱床の場所なら覚えてるから。他の奴らに見つかってなければまだあそこから採れる筈だから。」
それは願っても無い大変有り難い申し出であったが、しかし、ジェラミーが怪我をしていることを知ってる身として、ティティルナは素直にこの提案を受けれられなかった。
「でもジェラミーさん怪我してるでしょう?大丈夫なの?」
「戦闘しなければ大丈夫だよ。昨日だいぶモンスター倒しといたし、鉱床がある場所に行くだけなら何とかなるよ。」
「でも、既に他の人に見つかってて、ルナストーンが取り尽くされてたら?」
「その時は、その時だ。地道に洞窟内を探すよ。材料が無いとマナポーション作れないだろ?なんとかするよ。」
「えっ、でもルナストーンて普通なら探すの大変なんでしょう?ジェラミーさん怪我してるのに一人で洞窟行くなんて、やっぱり危険だよ。」
するとその時だった。
意外な所から声が上がったのだ。
「仕方にゃいにゃぁ。」
「ん?」
「小僧だけでは不安にゃ。我がついて行ってやるにゃ。」
なんとミッケが、自分も手伝うと名乗りを上げたのだ。
「えっ……お前が?!」
「我に任せるにゃ!」
「いや、だって……お前、猫だろ?」
「にゃんだ?!昨日は我のこと猫じゃにゃいって言ったじゃにゃいか!!」
「それは、そうだけど……」
猫の姿で一体何が出来るのか。
そんな懸念からジェラミーがたじろいでいると、その横でティティルナは、なんの迷いもなく、満面の笑みで喜びの声を上げたのだった。
「うん!ミッケが一緒なら安心だね。」
「この猫に対しての信頼感凄いな?!」
「大丈夫だよ、ジェラミーさん。ミッケは私たちに贈り物をくれた猫なんだから、きっと自分でもなんか凄い事が多分出来るんだよ!」
「”きっと”とか”多分”とか全部不確かな情報だな?!」
「まぁ小僧。案ずるにゃ。我に任せておけば問題にゃいにゃ。」
ペロペロと顔を舐めながら、余裕を見せつけるようにそう言い切ったミッケにジェラミーは疑念の目を向けたが、最終的には、猫が一匹増えた所でどうせ何も変わらないと思って、同行することを認めたのだった。
「分かった。それじゃあ採掘はオレとミッケで行ってくるよ。なので後の問題は……ルナストーンを持ち出すのにかかるお金だけだな。」
「お金……?」
「まだにゃにかお金がかかるのか?!」
「そう。採掘量を国で管理してるから、持ち出す鉱石毎に、金を取られるんだよ。」
ジェラミーは首を傾げているティティルナとミッケに鉱石の採掘は国で管理されていると事を説明をし、それからルナストーンの場合だと持ち出すのにもお金がかかる事を教えた。
すると、そんなルールの事は勿論知らなかったミッケとティティルナは、顔を見合わせて言葉を失うと、ミッケは憤慨し、ティティルナは落胆の表情を見せたのだった。




