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第70話 なんとかしてマナポーションを買おう

「ティティルナさん、貴女がマナポーションを作るのですか?」

「はい!それなら材料費だけだから、買うより安く抑えられます!」


 やる気に満ちた顔で、ティティルナはオデールに迷いなく答えた。自分にはマナポーションが作れる。その自信があったからだ。


 そんな強い意志を示したティティルナに、オデールは感銘を受けた。こんな少女が兄を救うために頑張るのだから自分もやるべき事をやらねばと、オデールもまた決意を固めたのだった。


「……分かりました。それなら私は、絶対にティルミオ君に届けなくてはいけませんね。直ぐに役所に戻って、ティルミオ君にアイテムを差し入れ出来るように、上と掛け合って来ます。」

「はい、お願いします!」


 オデールからの頼もしい申し出に、ティティルナがもう一度ペコリと深く頭を下げてお願いをすると、その横でミッケも、いささか上から目線で彼に言葉をかけたのだった。


「役人、お前が頼りにゃんだからにゃ、しっかりやるんだにゃ!」

「ええ、任せて下さい。」


 ミッケの相変わらずな態度に苦笑いしながらも、オデールは優しく頷いて了承した。

 こうしてオデールは、ティルミオを手助けする交渉をするべく、足早に役所へと帰っていったのだった。


 そして店内に残されたティティルナとミッケ、それにジェラミーは、急な展開に戸惑いつつも、現在の状況を改めて整理するために話し合いを始めた。


「で、マナポーションを作るのはいいけど、問題は山積みだな。」

「そうだにゃあ……マナポーション作る為にはティティルナがまず飲む必要があるからにゃあ……」

「そう、それが最初にして最大の難問よね……」


 ティティルナが困った顔でそう言うと、二人と一匹は揃って大きな溜息を吐いた。


 何故なら、ティティルナ達の手元にマナポーションは無いので、先ずは現物を手に入れる必要があるのだが、ティティルナ達には、先立つものがもう無かったのだ。


「マナポーションを買う金か……」

「全く無いって訳じゃないのよ?けど、三万ゼラムともなると……」

「分かったにゃ!我が盗んでくるにゃ!我、猫だからイケるにゃ!!」

「泥棒は駄目よ!!」


 猫の手も借りたいのは事実だったが、流石に泥棒を許す訳にはいかなかったので、ティティルナが強く叱責すると、ミッケは不満そうに耳を反らせた。


「じゃあ一体どうするにゃ?!金が無きゃマナポーションは買えないにゃ!!」

「それは……」


 ミッケの言葉に、ティティルナは何も言えなかった。どうしたらマナポーションを手に入れられるか妙案が浮かばないのだ。


 ティティルナの表情は、さっき迄のやる気に満ちていた顔から、どんどんと泣きそうな顔になっていった。


 するとそんな彼女の横で、ジェラミーは自分の手持ちのお金を静かにテーブルの上に並べ始めたのだった。


「……ティティルナ、今のオレの手持ちはコレしか無いけど、昨日の依頼の報酬と合わせればマナポーション一個なら買える。これは、昨日オレに使ってくれたポーションの御礼だ。」

「そんな!ジェラミーさんを手当したのは当たり前の事だから、悪いよ。」


 それはとても有難い申し出であったが、兄のせいで大変な目に合わせてしまった人にこれ以上迷惑を掛けるのに気が引けて、ティティルナは咄嗟に断ってしまった。


 けれどもジェラミーは、そんなティティルナの心情を察していたようで、静かに首を横に振ると、ティティルナが申し出を断る事を許さなかった。


「いーや、遠慮するなって。だってこの金が無いとマナポーション買えないだろ?」

「それは、そうだけど…」


 ジェラミーの申し出には、ティルミオを助けたいという彼の強い意志が感じられた。もちろん彼の事は信頼している。


 けれども、アーヴァイン商会のせいで人に借りを作ると言うことに慎重になっているティティルナは、中々ジェラミーの申し出を素直に受け入れられなかった。


 すると、曖昧な態度のティティルナを見かねたミッケが、横から口を出したのだった。


「ティニャ、小僧の言う通りにゃ。是非とも命の恩人であるティオとティニャの為に全財産を使って下さいって言ってるんだから、ここは素直に利用するにゃ!!」

「オレそこまで言ってないけど……」

「でも……そんなの悪いよ、全財産だなんて身ぐるみ剥がすような真似出来ないよ。」

「うん。だからオレそこまで言ってないけど……」


 話がなんだか勝手に大きくなっていってしまっていたので、ジェラミーは一応の突っ込みを入れて話を止めた。

 そしてティティルナに向き合い直すと、改めて彼女に提案を持ちかけたのだった。


「まぁ、ティティルナが借りを作る事に気が引けるって言うんなら、じゃあこうしよう。前払いで家賃を払うから、暫くオレをここに泊めてくれ。オレこの街にきてずっと安宿に泊まってるからさ、下宿先が決まれば助かるし。」


 それは、ティティルナの気持ちを最大限に汲み取った提案だった。

 借りを作りたくないティティルナにお金を受け取って貰うには、ちゃんとした対価として支払えば良いのだと気づいたジェラミーが、双方が納得できる最良の提案をしたのだ。


 なのでティティルナは、このジェラミーの大変有難い申し出に、今度は遠慮せずに素直に飛びついたのだった。


「そ、それでお願いします!!うち、部屋なら余ってるから!」

「よし、じゃあ決まりだな。そんならオレ、自分の分の討伐依頼をギルドで換金してくるから、マナポーションも買ってくるわ。」


 こうして、話が丸く収まった所で、ジェラミーはギルドへと向かった。

 そして暫くすると、約束通りにマナポーションを買って帰って来たのだった。

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