第68話 ティルミオの状況
「お兄ちゃんが捕まったって、一体どういうことですか?!」
オデールから告げられた衝撃の内容に、ティティルナは動揺を隠しきれず思わず大きな声で詰め寄った。
するとオデールは、狼狽える彼女宥めるように、ティティルナの目を見てゆっくりと話を続けた。
「なんでもティルミオ君が今朝ギルドに持ち込んだ素材、とてもじゃ無いが彼のランクでそれを手に入れるのは不可能な代物だったそうです。それで、盗品だと疑われています。」
「そんな!女王アリは本当にアイツが倒したんだぞ?!」
横で話を聞いていたジェラミーが、理不尽な言い掛かりに思わず声を上げて抗議した。
ジェラミーはティルミオが実際に女王アリを倒した場に居たのだ。
だからジェラミーはそれが事実であると身を持って知っているのだが、けれども一般的には、駆け出しで戦闘も碌に出来ない冒険者のティルミオがAランクの魔物を倒したなど誰も信じないのも事実であった。
けれども、オデールは違った。彼はティルミオの無実を信じてここにやって来たのだった。
「勿論、私もティルミオ君が犯罪を犯すような人物では無いと思っています。で、そこで先程の質問なんですよ。……ティティルナさん、ティルミオ君も貴女と同じように、贈り物を貰っていますね?」
そう、オデールは知っていたのだ。この兄妹の背後には人智を超えた存在の猫が居ることを。
だから、兄のティルミオも妹と同じようにこの猫から奇跡の力を授かっていてもおかしくないと考えて、彼はその事を確認しに来たのだ。
そんなオデールからの問いかけに、ティティルナはこくりと頷いて、彼の考えが正しい事を認めた。
「……はい。お兄ちゃんにも贈り物はあります。昨日から使えるようになったらしいです。」
「やはりそうですか……って、昨日??」
「え?えぇ。昨日。」
思ってたのと違う答えが返って来て、オデールは思わず聞き返してしまった。そんなぶっつけ本番で出来ましたなんて都合の良い事がある訳ないと思ったのだ。
けれども、ティティルナのみならず、ジェラミーもミッケも、大真面目にそれを肯定したのだった。
「そうそう。オレも負傷しちゃって、もうダメだーって時に、ティルミオが呪文を使えるようになって……」
「えっ、待って下さい。本当にその時まで使えなかったって事ですか?」
「そうにゃ。贈り物自体はもっと前だったが、ティオがそれに気付いたのは昨日って事ににゃるにゃ。」
ティティルナ達の話は、余りにも都合が良すぎたが、けれども彼女たちが嘘を言っているようには見えなかった。
だからオデールは、彼女たちの話を受け入れて、会話を続けた。
「あ、貴方たち良くそれで無事でしたね?!もしもティルミオ君の贈り物が発動しなかったら無事では無かったですよね?!」
「オレも本当にそう思うよ。まぁ過ぎた事だからあまり考えない様にしてるけど、あそこで死んでてもおかしくなかったよな。」
「もっと考えて下さい!そんなんじゃダンジョンで死にますよ?!」
ジェラミーが余りにも平然とした様子で言ってのけるので、オデールは思わず頭を抱えて叱ってしまったが、けれども直ぐに冷静さを取り戻すと、オデールは一つ溜息を吐いてから、ティティルナ達に、ティルミオの置かれている状況について説明を始めたのだった。
「……言いたい事は色々有りますが、まぁ、話を戻しましょう。それで、ティルミオ君は不正を疑われてるので、疑いを晴らす為に同じ位の強さの魔物の討伐を命じられています。でもまぁ、今の話が本当であるなら、彼は一人で魔物を倒してみせれるでしょうし、それで疑いは解けるでしょう。」
「それじゃあ、お兄ちゃん直ぐに帰ってくるんですね?」
「えぇ。ティルミオ君が、一人で魔物を退治する所を見せれば、大丈夫でしょう。」
「あぁ、良かった……」
オデールの口から、ティルミオが直ぐに釈放されるであろう事が聞けて、ティティルナは顔を綻ばせて心の底から安堵した。
けれども、今のオデールの説明を聞いて、ジェラミーだけは、難しい顔をして気まずそうにしていたのだった。
「小僧、どうしたにゃ?にゃにか気ににゃるのか?」
「いや……多分ティルミオ一人で魔物を倒すのは無理だと思って……」
「えっ?」「えっ??」
ジェラミーの突然の発言に、ティティルナとオデールは驚いて同時に声を上げてしまった。けれどもジェラミーは、そんな二人の様子に構わずに話を続けた。
「ティルミオ一人で魔物を倒すなんて無理。確かに女王アリにトドメ刺したのはティルミオだけど、アレは、魔物の狙いが全部オレに向いててティルミオがノーマークだったから出来た事であって、多分一対一なら絶対に無理だ。」
それは、今までティルミオの側で、彼と一緒にギルドの仕事をして来たジェラミーが、一番良く分かっている事だった。




