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第64話 現実を受け入れよう

「ちょっと、情報量が多過ぎるんだ。ちょっと、頭の中を整理するから待ってくれ……」


 アウリーサ洞窟から無事に生還したジェラミーは、カーステン商店の一角で頭を抱えながらこの現実を必死に理解しようとしていた。


「ジェラミーさん大丈夫?お茶でも飲んで落ち着いて?」

「いや、もう水分は当分いいから……」

「無理するんじゃにゃい。どうせ頭が悪いんだろうから、何も考えずにそのままを受け入れるにゃ。」

「ミッケ!もう、失礼な事言わないの!!」


 先程からこうやって猫が普通に喋ってるし、そもそもあの状況からどうやって女王アリが倒されたのかも良く分からないし、最深部から無事に出口まで迷いなく辿り着けた事も奇跡なのだ。

 理解出来ない事が多すぎて、ジェラミーの頭はパンクしていた。


 すると、そんな風に頭を抱えて苦悩しているジェラミーに、ティルミオは真面目な顔で、ゆっくりと言い聞かせるように話しかけたのだった。


「あのさ、今までお前に黙ってたけど、俺たち兄妹、ちょっと特殊な能力があるんだ。」

「……そうみたいだな。」

「でも、ジェラミーとは何度も苦楽を共にしたし、これからも一緒にやっていきたいと思っているんだ。だから、これ以上俺たちの能力の事を黙ってるのは心苦しくて……。なので、なんでも聞いてくれ!ちゃんと全部答えるから。」


 今までジェラミーに能力のことを隠していた後ろめたさから解放されたティルミオは、そう宣言すると実に清々しい顔で、堂々と、ジェラミーが何か聞いてくるのを待っていた。


 しかし対照的にジェラミーは、頭の中の混沌が深まるばかりで、難しい顔のまま固まっていたのだった。


「……ちょっと待って、今、一番すんなり自分が受け入れられそうな質問が何かを考えてるから……」


 そう言って、暫くジェラミーは考え込んでしまったのだ。


 そんなジェラミーを、ティルミオ、ティティルナ、ミッケは黙ってじいっと見つめていたが、暫くすると考えが纏まったのか、ジェラミーは顔を上げるとティルミオに真面目な顔で向き合ったのだった。


「ティルミオ、洞窟の女王アリは、やっぱりお前が倒したのか?お前、魔法が使えたのか?」


 これがジェラミーが考えた、まだ何となく返答が予測出来ていて、自分が納得して受け入れられそうな質問であった。


 するとティルミオは、ジェラミーからのその質問に嬉しそうに笑うと、あの時何があったのかを、少し興奮気味に話し始めたのだった。


「そう、そうなんだよ!もうダメだって思ったら、急に頭の中に呪文が浮かんで、で、試してみたら使えたんだよ!!」


 ティルミオは、あの場面で咄嗟に魔法が使えたことを誰かに話したくて仕方が無かったので、とても生き生きと自分の武勇伝を語ったのだが、しかし、その話を聞いたジェラミーの表情はティルミオとは対照的に、どんどんと引き攣っていったのだった。


「待った。……今なんか、物凄く不穏なこと言わなかったか?」

「そうか?」

「それってつまり、お前が土壇場で呪文を使える様にならなかったら、オレたち二人とも危なかったって事だよな……?」


 その事実に気付いて、ジェラミーは一人青ざめていたのだが、しかしティルミオはと言うと、あっけらかんとその事実を笑い飛ばしたのだった。


「そうだな。正直、この呪文で何が起こるか分からなかったけど、本当に、上手く行って良かったよな!」

「そ、そうだな……良かったよな。」


 もはや終わったことなのでジェラミーはこれ以上は何も言わなかったが、自分たちが置かれていた窮地に、内心一人でゾッとしていると、今度は横で二人の話を聞いていたティティルナが驚きの声を上げて会話に加わったのだった。


「待って、呪文って何??お兄ちゃん観察眼以外の贈り物(ギフト)が分かったの?!」

「あぁ!そんなんだよ!俺が地面に手を付いて呪文を唱えたら、地面がバーンと槍みたいになってな、魔物をドーンっと倒せたんだよ!!」


 ティルミオは妹に対して得意げにそう話したが、相変わらずのティルミオの雑な説明に、ティティルナは残念そうな目を兄に向けていた。


「……お兄ちゃん、ちょっと何言ってるか分からない……」

「ティオは説明が残念だにゃあ……」


 ティルミオの説明力が乏しいのは今に始まったことじゃ無いので、ティティルナとミッケは呆れた声を上げてこれ以上話を聞くのを止めてしまったが、しかしジェラミーは、会話の中で出てきた観察眼という言葉に引っかかって、更に質問を重ねたのだった。


「なぁ、今の会話から察するに、ティルミオがルナストーンとか蒼生草とかを簡単に見つけられるのも、魔法の一種なんだな?その、観察眼って奴。で、それは贈り物(ギフト)を授かったからなんだな?」

「あぁ、そうだ。」

「で、妹のティティルナの方も贈り物(ギフト)によって錬金術が使える様になったと。それでさっき回復ポーションを作ってくれたと。」

「えぇ、そうです。」


 ここまで教えて貰って、ジェラミーはやっと色々な事が腑に落ちていった。


 何故ティルミオが探してる素材を簡単に見つけたり、魔物の弱点を的確に言い当てれたり、洞窟を出る時の三人組の男たちが隠密魔法をかけて隠し持っていたルナストーンを言い当てれたのか疑問に思っていたが、それらが全部贈り物(ギフト)の能力だというのならば全て納得がいくのだ。


 だからジェラミーは、とても現実的では無いこの兄妹の説明を、事実としてすんなりと受け入れたのだった。

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