第61話 帰路
三人組の冒険者たちが連行されて行くと、その場に残った兵士はティルミオに謝辞を述べていた。
「有難う!君のお陰でルナストーンが不正に持ち出されてしまうのを防ぐ事が出来た。」
「分かって貰えたんなら良かった。アイツらの事、ちゃんと罰して下さいね!」
「あぁ。勿論だ。本当に有難う!!」
兵士たちは、自分たちの失態をカバーして貰えたのだから、ティルミオには深く感謝をしていて、何度も何度もお礼の言葉を繰り返していたのだが、横で見ていたジェラミーは、話が一向に進まないこの状況に業を煮やして兵士の言葉を遮ったのだった。
「……それで、オレたちの荷物検査もとっととやってくれないか?……早く街に帰りたいんだよ……」
全身傷だらけで、肋骨まで折れている彼は、立っているのもやっとなので、こんな所で話している暇があるならば、さっさと街に帰りたかったのだ。
「あぁ、そうだったな。持ち出すルナストーンは、クエスト依頼分だけか?」
「クエスト依頼分と、それと、これだけ持ち出したいんだ。」
そう言ってティルミオは飴玉くらいの大きさのルナストーンの塊を差し出した。調べた所、マナポーションを一つ作るの必要な量がこれ位なのであったので、ティルミオは取り敢えず少しだけ自分用に削り取っていたのだ。
兵士は、ティルミオたちが申請分意外にルナストーンの持ち出しが無いことを確認すると、ティルミオが提示した飴玉一個分のルナストーンについて、持ち出すのに必要な金額を彼らに伝えた。
「ふむ。これくらいの量だと……一万ゼラムだな。」
「……えっ?」
ティルミオはあまりの高額に驚いて、思わず聞き返してしまったが、どうやら聞き間違えでは無いようだった。
「だから、一万ゼラムだ。」
「嘘だろう?!こんなちょっとの量なのに?!!」
「ルナストーンは希少だからな。」
いくらティルミオに感謝してるからといっても、ルールはルールなので曲げる事は出来なかった。
「……わ、分かった。」
ティルミオは思っていたのより高額の値段に持ち出しを少し悩んでしまったが、しかし、ジェラミーの怪我の状態を考えると次にいつアウリーサ洞窟に潜れるか分からないので、ここは苦渋の決断をしたのだった。
こうして、無事にアウリーサ洞窟から脱出して、ティルミオは当初の目的であったルナストーンも手に入れる事が出来たのだが、しかしその帰りの道中で、明らかに彼の顔は沈んでいたのであった。
「……ティルミオ、大丈夫か?……お前金、もう無いんじゃ……」
「だ、大丈夫……じゃないけど、大丈夫!」
ジェラミーからの問いかけに、ティルミオは空元気に答えた。
ジェラミーの心配通り、ティルミオの手持ち、というかカーステン家のお財布の中身は殆ど無くなってしまったので、この後もう一度マナポーションを買い直さないといけない事を思うと頭が痛かったが、とにかく自分たちが無事に帰って来れたのだから金はまた稼げると思って、ティルミオは気持ちを切り替えて明るく装った。
それから今度はティルミオの方がジェラミーの方を心配そうに眺めると、その体調を気遣った。
「俺としてはジェラミーの方が大丈夫か?って感じなんだけどな。」
横を歩くジェラミーは、負傷が激しいので、ティルミオの肩を借りながら、ゆっくりと歩いているのだが、先程からその身体が大きくふらついているのを憂慮していたのだったのだ。
するとジェラミーは、そんなティルミオからの呼びかけに少し笑って気丈に振る舞って見せたが、直ぐに弱々しい声で本音を漏らしたのだった。
「大丈夫……じゃなさそう……」
そう言うとジェラミーは、その場に膝を付いてしまったのだ。
「ジェラミー?!」
「これ、遅効性の麻痺毒だ……」
そう、軍隊アリは毒を持っていて、本来なら手がちょっと痺れるくらいなのだが、ジェラミーはあまりにも多くのアリに噛まれていた為、動けなくなる程麻痺ってしまったのだ。
「えっ……ど、ど、どうしよう?!」
「……落ち着けって、死ぬような毒じゃないから……ただ、暫くは動けそうにないな……」
「暫くって、どれくらい?」
「……こんだけ麻痺毒喰らったのが初めてだから分からん。一日か、三日か、一週間か……」
そう言うとジェラミーは完全に地面に横たわってしまったので、ティルミオは慌ててジェラミーを背負うと、残された体力を振り絞ってなんとか街へと戻った。
そして、なけなしの金で麻痺なおし薬と回復ポーションを一つずつ買うと、ティティルナの待つ家へと、急いで向かったのだった。




