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第60話 ティルミオの追求

 アウリーサ洞窟の出入り口で、ティルミオは観察眼を使って三人組の男たちがルナストーンを隠し持っている事を指摘したのだが、しかし、その訴えはまともに取り合って貰えなかった。


「君はどうやらこの洞窟は初めてみたいだな。この魔法道具で反応が無かったから、彼らは他に鉱石を持っていないんだよ。」

「その魔法道具、きっと壊れてるよ!!」

「いや、正常だ。見てなさい。」


 三人組の荷物検査をした兵士は、少し困ったような顔をしてティルミオの相手をすると、ティルミオを納得させる為に申告済みのクエスト依頼分のルナストーンに魔法道具をかざしてみせた。すると、その石は青から赤に色を変えたのだった。


「ほら、色がちゃんと変わっただろう?壊れてなんか無いよ。」

「けどっ、コイツらまだルナストーン持ってるんだってば!これって勝手に持ち出すのいけないんだろう?」

「あぁ、まぁ……クエスト依頼分以外で持ち出すのなら、量に応じて決められた金額を払うのがルールだが……」


 なかなか引き下がらないティルミオに、兵士は困った様に三人組の男たちの方へ視線を向けた。

 すると、その視線に気付いて、三人組のリーダー格の男がティルミオに詰め寄ったのだった。


「なんだよお前、俺たちが不正をしてるとでも言いたいのか?」

「そうだよ!隠し持ってるルナストーン申告してないじゃないか!」

「良い加減にしろよ!!変な難癖をつけんな!魔法道具で反応が無いって結果が出てるだろう?!」

「だから、それがおかしいんだって!!」


 お互いに主張を譲らない言い合いは、段々と泥沼になって行った。

 そんな二人のやり取りを、兵士は困惑しながら眺めていたが、このままだと収拾がつかなくなりそうだったので、見かねて二人の間に入ると、ティルミオを宥める様に仲裁に入った。


「まぁまぁ。君、このパーティーと因縁があるのかもしれないけど、無闇矢鱈に突っかかるのはやめないか。」


 けれどとティルミオは、そんな兵士の言葉にも主張を曲げなかった。


「でも、コイツら本当に隠し持ってるんだって!ほらっ!!!」


 そう言ってティルミオは、男の鞄を強引にひったくってひっくり返したのだ。


「あっ!!!」


 すると、ティルミオが言った通り、男の鞄の中からルナストーンの塊が、いくつも転がり落ちたのだった。


「これは……申告してない鉱石だよな?」

「お、おかしいな。もしかしたら採掘してる時に、気づかない間に鞄の中に落ちたのかも。」


 鞄の中に入れていたルナストーンが発見されて、男は慌てて苦しい言い訳で取り繕った。

 しかし、そんな見え透いた嘘を信じてくれる程兵士は優しくなかったし、ティルミオも追求の手を緩めなかった。


「それだけじゃ無いよ、服の下とか靴の中にも隠してるよ!」

「……悪いが調べさせてもらうよ。」

「あっ、ちょ、ちょっと待て。待てって!!」


 ティルミオの指摘を受けて、兵士は男の身体を有無を言わさずに調べた。


 すると、ティルミオが言ったように、鞄の中や服の下から大量のルナストーンが発見されたのだった。


「なるほど……隠密魔法を鉱石にかけて誤魔化そうとしたのか……」


 どうやら男たちは、ティルミオ達を尾行した時に使ったのと同じ隠密魔法をルナストーンにかけて、秘密裏に持ち出そうとしていたみたいだったが、隠し持っていたルナストーンが目の前で露見してしまっては、言い逃れは出来なかった。


「これは一体どういうことだ?ちょっとお前たちには詰め所で話を聞かせてもらおうか。」


 兵士に追及されて、男たちはこれ以上の言い訳は無意味だと察し、遂に観念し、大人しく兵士の命令に従った。


 しかし、リーダー格の男は、どうしてもティルミオの言動が納得いかずに、ティルミオの方を睨むと、強い口調で問い詰めたのだった。


「お前、ふざけるな!何で分かったんだ?!あり得ないだろ!!」

「確かに。魔道具でも分からなかった物をどうして君は気付いたんだい?」


 男の疑問はどうやら兵士も同じだったようで、男と呼応するかの様に、兵士も不思議がって質問を重ねた。


 何故ルナストーンを隠し持っている事に気付いたか。

 それは観察眼で視たからなのだが、そんなことは当然言えるはずもないので、ティルミオは咄嗟にそれらしい言い訳を並べて誤魔化した。


「それは……盗掘するところを見てたから!」


 理屈上これ以外の理由は考えられないのだが、しかし、これは勿論嘘であった。

 だからティルミオの言っている事が納得できなくて、リーダー格の男はすかさず反論をしたのだった。


「嘘つけ!ルナトーンを掘り出したのは、お前らを転移のスクロールで飛ばした後なんだぞ?!お前が見える訳ないじゃ無いか!」


「ん?」

「あっ」

「あ……」


 男の言っていることは本当であった。彼らが盗掘を始めたのは、ティルミオたちを転移のスクロールで他の場所に飛ばした後たので、その現場をティルミオが見ることは不可能なのだ。

 だから男は、ティルミオが口にした嘘を見過ごせなかったのだが、その結果、勢い余って、自らの口で己の罪をバラしてしまったのだった。


「成程……違法な採掘に他の冒険者への危険行為……お前たちには詳しく話を聞く必要がありそうだな。」

「いや、今のはその、口が滑ってだな……」

「どうやら他にも余罪がありそうだな。まぁ、話は詰め所でじっくりと聞こうじゃないか。おおい、誰か来てこっちに手を貸してくれ!!」


 こうして、男たちの悪行は白日の元に晒されて、詰め所から呼ばれた応援の兵士たちによって連行されて行ったのだった。

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