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第58話 起死回生

「ジェラミー!!」


 女王アリが倒されたことで、ジェラミーを覆い被さっていた蟻達も動きを止めて、バラバラに散って行った。


 ティルミオは起き上がって、直ぐにジェラミーに駆け寄ろうとしたのだが、しかし、それはできなかった。


 起き上がろうとすると、目の前がぐわんと大きく歪んで再び地面に倒れてしまったのだ。


「うっ……」

 魔力切れを起こしたのである。


(こんな所で、嘘だろう?!)


 倒れたまま頭だけ動かしてジェラミーの方を見ると、意識はあるみたいだが、彼も怪我がひどくてその場からは動けそうに無かった。


(どうしよう……このままじゃ二人とも……)


 ティルミオは地面に倒れたまま考えた。


(俺の魔力切れは休めば回復する。だけど、こんなダンジョンの深部で悠長に休んでなどいられない。他の魔物がやって来てしまう。それに、ジェラミーの怪我は酷そうだ。早く街に戻らないと……)


 どうしたらこの状況を打破出来るか、必死に考えたけれども、妙案は浮かばない。


(せめて、ジェラミーに回復ポーションを飲ませられたら……)


 ダンジョン探索において、戦闘職では無いティルミオが荷物持ちを引き受けている。なので、回復ポーションもティルミオが持っているのだ。

 これをジェラミーの所まで届けられたら、もしかしたら事態が好転するんじゃ無いかと思って、ティルミオは最悪な体調であったが無理を押して這いずりながらジェラミーが倒れて居る場所を目指した。


 しかし、ここである事に気付いたのだった。

 

(そう言えば……)


 ティルミオは荷物の中にティティルナとミッケに頼まれて買っていたマナポーションがある事を思い出したのだ。


(これを飲めば、俺の魔力切れは回復出来る……?)


 ティルミオは荷物からマナポーションを取り出すと、マジマジと見つめて、そして決断した。


(……ティナやミッケには悪いけど、今は緊急事態だ。マナポーションは、また買えばいいしな。)


 そう判断してティルミオは、マナポーションを一気に飲み干したのだった。


「不味っ……!」


 不快な味であったが、身体の中が何か温かいモノに満たされる感じが分かった。すると、今まで感じていた気持ち悪さも、頭痛も、まるで嘘の様にピッタリと治まったのだ。


(よし、動ける!)


 ティルミオは、身体を動かして魔力切れから回復したのを確認すると、直ぐに起き上がり、そしてジェラミーのもとへと駆け寄った。


「ジェラミー!大丈夫か!!」


 ティルミオはジェラミーを助け起こすと、応急処置的に持っていた回復ポーションを飲ませて、傷にも振りかけた。

 ジェラミーは女王アリに叩きつけられた時に負った怪我以外にも、軍隊アリに群がられた時に全身を齧られていて、ボロボロであったが、意識はあった。


「お前、一体……何やったんだ……なんで、女王アリは……」


 どうやって倒した?


 ジェラミーは傍に佇む尖った岩の槍で腹を突き破られてる女王アリを見て、疑念の声をティルミオに向けた。

 自分が軍隊アリに群がられて居る間に一体何があったのか、今のこの光景が全く分からずに、ジェラミーは驚き戸惑っていた。


 しかし、今は悠長に説明して居る暇は無かった。何せここは、ダンジョンの最深部なのだ。いつまた他の魔物が襲ってくるか分からないのだ。


「説明は後だ!兎に角、ここから脱出しよう!!」


 そう言ってティルミオは、肋骨が折れてると思われるジェラミーを背負おうとした。しかし、ジェラミーはそれに待ったをかけたのだった。


「待った……。お前、あの宝玉拾ってこい。高く買い取って貰えるぞ。」

「宝玉?」

「女王アリの脇に転がってるだろう?赤い宝玉が。」


 ジェラミーに指摘されて見ると、確かに女王アリの傍に、赤い鈍い光を放つ宝玉が転がっていた。


 ティルミオは忠告通りに慌ててそれを拾い上げると、今度こそジェラミーを背負って、二人で出口を目指したのだった。

 


「……悪いな。」


 道中、ティルミオの背中でジェラミーが呟いた。

 全く歩けない訳では無かったが、一歩歩くたびに激痛が走って、とてもゆっくりにしか歩けないので、ここは素直にティルミオに背負われていたのだが、申し訳ないと感じていたのだ。


「気にするなよ、お互い様だろ。前にジェラミーはこうやって俺を背負って家まで連れてってくれたじゃないか。」


 けれどもティルミオは、そんなジェラミーの負い目を払拭するように、気にすることでは無いと明るい声で言い切ると、最初にジェラミーと組んだ時に、魔力切れを起こした自分を彼が背負って運んでくれた事を引き合いに出して、持ちつ持たれつだと笑ったのだった。


「ははっ……確かにそんなこともあったな。」

「そうだよ。だから俺に背負われてること、気にしなくていいぞ。」

「そうだな。ここは甘んじてお前に頼るわ。有難う。」

「いいってことよ。」


 こうして、ティルミオはジェラミーを背負って、出口を目指した。

 魔物の巣窟であるアウリーサ洞窟で、一度も魔物に出会わずに出口に向かうのはあり得ない事ではあったが、しかし、ティルミオが観察眼を使いながら魔物が居ない道を選ぶ事によって、二人は出口まで無事に辿り着いたのだった。

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