第55話 ルナストーンを巡る攻防
ランタンの灯りを反射して自身が薄白く光っている様な美しい鉱石の出現に、ジェラミーも思わず目を見張った。
「まじか!ここまでの量のルナストーンをこうも簡単に見つけるなんて……お前、良く迷いなく一直線に見つけられるよな。本当に凄い才能だよ。」
「ま……まぁね。俺は目が良いからね!」
言ってて自分でもその言い訳はそろそろ苦しいと感じていたが、ジェラミーが何も言わないのを良い事に、ティルミオには今回もその言い訳で押し通した。
いつまでもジェラミーに嘘をついている事に多少罪悪感を感じていたが、正直に話すタイミングも失っていたので、とりあえずこの場は、これ以上は突っ込まれない様に急いで話題を逸らした。
「依頼はこぶし位の大きさのルナストーンだから、ここから辺から切り出せば楽勝だな!」
そう言って、ティルミオはギルドから借りて来たノミとハンマーを使って、壁からルナストーンを掘り出す作業を慌ただしく始めたのだ。
そんなティルミオの背後を守る様に、ジェラミーは何も言わずに周囲の警戒を続けた。
鉱石の採取にはそれなりに時間が掛かるので、もし魔物が現れても直ぐに無防備なティルミオを守れる様にと、周囲を警戒しながら彼の作業を見守っていたのだが、不意にジェラミーは、ある事を思い出して、ポツリと呟いたのだった。
「しかし、これだけの量だ。勝手に持ち出したら違法だけど、……これ、この場所をギルドに報告したら多分褒賞貰えるかも。」
記憶を辿る様に、神妙な顔でジェラミーが呟いた言葉を、ティルミオは聞き逃さなかった。
「マジで?!この場所報告したら金になるのか?!」
「ん?ああ。コレだけのルナストーンの鉱床は中々見つからない。他の奴に見つかる前に、ギルドに戻って報告すれば、有益な情報を提供したって事で、特別手当が貰えるはずだ。」
その魅力的な話に、作業の手を止めてティルミオは前のめりで食い付いた。
お金になる事ならば、なんだって見過ごす訳にはいかないのだ。
「じゃ、じゃあ急いで帰らないと。あっ、ここ、どうしよう?俺たちが報告するまで他の人に見つからないように何かで隠しといた方が良い??」
「隠すったって何にも持ってないんだし、急いで帰って急いで報告するくらいしか……」
すると、その時だった。
「いやぁ、本当に凄いね君。ルナストーンを直ぐに見つけられるってのは嘘じゃなかったんだね。」
二人の背後から、急に声がかかったのだ。
驚いて後ろを振り返ると、するとそこには、この前ギルドで勧誘を断った、三人組の冒険者が立っていたのだった。
「おっさん達つけてたのか?!くそっ、全然気付かなかった。」
急に現れた三人組に、ジェラミーは不快感を露わにし、腰の剣を直ぐに抜けるよう手を添えて警戒した。
しかし、三人組の冒険者たちはジェラミーが臨戦態勢になっても全く動じなかった。
それどころか、彼らのリーダー格の男はニタニタと笑って、ジェラミーを馬鹿にする様に話しかけて来たのだ。
「なんだ、Bランクって言っても大した事ないんだな。隠密魔法も見破れないなんて。ま、ガキには無理か。」
「何だと、おっさん。隠れて付いて来て美味しいところを横取りする気だろう?!」
「この状況で、それ以外にあるかい?」
勝ち誇った様な笑みを浮かべる三人組は、それぞれ武器を手に掛けている。彼らが、ティルミオが見つけたこのルナストーンの鉱床を横取りしようとしているのは明白で、受けて立とうとしているジェラミーとは一触即発だった。
「ジェラミー!俺の分はもう採ったし、三対一じゃ分が悪いからここは引こうよ!おっさん達はほっとこうよ。ほら、俺たちはとっとと引き上げてギルドに報告しに行けば良いじゃん。」
戦闘において自分は役立たずなのを知っているから、ティルミオは自分を頭数に入れないで、冷静にジェラミーを宥めた。
ティルミオの考えでは、採掘できる鉱石は厳重に管理されているから、この三人組がルナストーンを掘ったとしても大した量は持ち出せないし、それならば、ここで争うより、直ぐにでもギルドにこの鉱床を報告して発見者の褒賞を貰う方が賢いと思ったのだ。
しかし、ティルミオが考えている程、事態は生易しく無かった。
「ふうん。赤毛のガキの方が利口だな。
……でもな」
リーダー格の男は、ティルミオの考えを評価しながらも、敵対的な態度のまま懐に手を入れて何かを取り出した。
「お前たち、人のことおっさん、おっさんって呼びやがって、ムカつくんだよ!!これでもまだ、二十代だっ!!!」
そう叫びながら三人組のリーダーは、手に持った巻物をティルミオとジェラミーに向かって投げつけたのだった。
転移のスクロール
それは魔法が込められたアイテムで、その効果は、対象をどこか別の場所へ移動させるというものであった。
そう、ティルミオとジェラミーの二人は、洞窟の全く違う地点に飛ばされてしまったのだった。




