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第54話 初めての洞窟

「お前たち洞窟に入るのか?許可証か依頼書は持っているか?」

「あぁ、はい。これがギルドで受けた依頼書。オレたち洞窟に入るよ。」


 アウリーサ洞窟の入り口に立って居る兵士の一人がこちらに気付いて声をかけて来たので、ジェラミーは慣れた感じで兵士に二名分の依頼書を提示した。


 すると、それを受け取った兵士は依頼書の内容をその場で確認すると、直ぐに二人に依頼書を返して、簡単に洞窟への通行を許可したのだった。


「討伐依頼に、採掘依頼か。よし、行っていいぞ。」

「はい、どーも。……よし、ティルミオ行くぞ!」

「あっ、あぁ……」

 

 ジェラミーと兵士のやり取りが随分と大雑把だったので、ティルミオは面食らってしまったが、歩き出したジェラミーに従って、洞窟の入り口正面まで移動した。


「なぁ、案外あっさりと入れるんだな。俺もっとこう、尋問とか面接とかあるのかと思った。」

「入る時はこんなもんだよ。出てく時にちゃんとやってるからさ。」


 そんな事を話しながら、二人は洞窟に入る準備を進めた。


 洞窟の中は当然明かりが無く真っ暗である。だからジェラミーは荷物からランタンを取り出すとサッと灯りをつけて光源を確保した。コレがないと、真っ暗でとてもじゃないが歩けないのだ。


 しかし、灯した明かりでこれから進む洞窟の奥を照らしてみても、数歩先は何も見えない真っ暗な闇が広がってる光景に、ティルミオは少し恐ろしくなってしまった。

 闇の中に得体の知れない何かが潜んでいそうで、引き摺り込まれそうな怖さを感じたのだ。


 けれども、冒険慣れしているジェラミーがいつもと変わらぬ様子で隣にいてくれたおかげで、ティルミオの緊張も自然と徐々に落ち着いていった。


(大丈夫だ、怖くない。)


 目を瞑って深呼吸すると、ティルミオは目の前に広がる闇をじっと見つめた。


(うん、大丈夫だ。もう怖くない。)


 こうして、二人は心身共に準備を整えて、いつでも洞窟に突入できる状態となった。


 いよいよだった。


「さっ、こっからだ。油断せずに行くぞ!」

「お……おぅ!!」


 ジェラミーの掛け声に合わせて力強く返事をすると、ティルミオは生まれて初めてダンジョンに足を踏み入れたのだった。


 洞窟の中に入ると、空気がひんやりしているのを肌で感じた。


 初めて洞窟に足を踏み入れたティルミオは、その空間が放つなんとも言えない威圧感に、少し圧倒されてしまった。


「洞窟の中ってこんなに暗いんだな……」

「そりゃ、まぁ、洞窟だしな。でも進んでけば直ぐに目が慣れるさ。それで、どっちに進んだらいいんだ?」


 ランタンを手に先を歩くジェラミーが、後ろを振り返ってティルミオに声を掛けた。

 この先は三又の分かれ道になっていて、ティルミオが毎度発揮する謎の勘の良さを頼って、ジェラミーは自分たちが進むべき道をティルミオの判断に託したのだ。


 そんなジェラミーからの問いかけにティルミオは大きく頷くと、目を瞑って深呼吸をして意識を集中させた。

 そして、ルナストーンを強く思って目を開けると、仄暗い洞窟の奥から微かだが光がポツポツと見えたのだった。


「ジェラミー、あっちだ。右の道だ。」

「りょーかい。」


 いくつか視えた光の中で、一番輝いて見えた光にティルミオたちは向かう事にした。


 道中、魔物の住処という別名は伊達じゃないと実感させられるくらい、何度も魔物と遭遇したが、どれもジェラミーの敵では無かった。


「数は多いけど……低級ばっかだな。まぁ、地上に近い所じゃこんなもんか。」

「低級でも何でも、魔物は魔物だよ!気を抜かないでくれよ!」

「大丈夫だって。ティルミオ、お前も一匹位倒してみるか?」

「無理!!」 


 先頭を切って魔物を倒しながら進んでいくジェラミーの後を、ティルミオは周囲を警戒しながら付いていった。


 相変わらずティルミオに魔物は倒せないが、ジェラミーが全部倒してくれるのだから何も問題は無かった。


「ティルミオ、ちゃんと倒した魔物の素材回収しながら着いて来てるか?」

「あぁ、バッチリだよ。大量だ。」

「ま、低級だから安いけどね。お前の護衛しながら稼げるのは効率良いよな。」


 今回ジェラミーが受けた依頼は、単純にアウリーサ洞窟の魔物の数減らしなので、どんな魔物でも討伐すればお金になるだ。

 だからジェラミーは出会った魔物を片っ端から蹴散らして、ティルミオが討伐証明となる魔物の素材を回収するといった役割分担で、効率良くお金を稼ぎながら、二人はどんどんずんずん、洞窟の奥へと進んで行った。


 そして、一時間程歩くと、目的の少し広い空間に辿り着いたのだった。


「あった、ここだ。」


 そこは、ちょっとした広間になっていたが、何の変哲もない岩肌で囲まれた空間だった。


「ここ……にルナストーンが有るのか?」


 半信半疑と言った感じで、ジェラミーは辺りを見渡した。どう見てもそれらしい採掘ポイントは見当たらないのだ。


 けれども、ティルミオにはここで間違いないと確信があった。

 だからギルドから借りて来たピッケルで、力一杯岩肌を削り崩したのだった。


 すると、周囲とは明らかに色の違う岩の壁が姿を現したのだ。

 その色の違う壁は、ティルミオの目には、目が眩む程、眩しく光って視えていた。


 そう、剥がした所、壁一面がルナストーンだったのだ。

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