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第53話 アウリーサ洞窟へ

 時間は少し戻って、ティティルナたちがまだ噂の事を知らずにいつも通り開店の準備をしていた頃、ティルミオはジェラミーと共にアウリーサ洞窟に初挑戦する為に、冒険者ギルドで出発の準備をしていた。


「ティルミオ、準備出来たか?」

「ああ、大丈夫だ。準備万端だ!」


 今日行くアウリーサ洞窟は、今までの仕事で行っていた森とは比べ物にならない程魔物の数が多く強敵の巣窟として有名だった。

 なので、ジェラミーが一緒だとはいえ、万が一怪我した時の為にとティルミオはギルドの購買で傷薬ポーションを買って備えていた。勿論、昨日買い忘れたマナポーションも一緒に購入した。先に買っておかないと、また忘れそうだったから。


「ポーション……は分かるけど、結局マナポーションも買ったんだな。」

「あぁ。まぁ、これはお土産だ。」

「妹にか?」

「そう。昨日買い忘れたから怒られてな。」


 何も間違った事は言っていないのだが、一般的に魔力持ちは少なく、マナポーションを欲しがる人なんてそうそう居ないので、ジェラミーはなんとも不思議そうな顔をしていた。


「あ、マナポーションを作りたいって本気だったのか。お前の妹、変わった物欲しがるな……」

「あぁ。でも俺、ティナが欲しい物はぜんぶ買ってあげたいんだ。……両親が死んで、寂しい筈なのに、毎日一生懸命に頑張ってるから。」

「……そうか……」


 両親がいない兄妹の事情を知っているジェラミーは、それ以上は何も野暮な事は言わなかった。代わりに、少ししんみりしてしまった空気を変えようと、ティルミオの背中をドンっと力強く叩いて、話題を変えた。


「それで、お前の依頼どれにするか決めたか?」


 ティルミオとジェラミーは、パーティーを組んでいるとはいえ、二人で同じ依頼をする訳では無かった。主にジェラミーが魔物討伐系の依頼を受けて、ティルミオは採取系の依頼を請け負って、それぞれが協力し合う形で二つの依頼をこなしてきたのだ。


 だから今日もティルミオは、アウリーサ洞窟で出来る採掘の依頼から報酬が良い依頼書を見つけて、手に取っていたのだった。


「あぁ。丁度ルナストーンの採掘依頼があったんだ。コレにするよ。」

「そうか、ルナストーンの採掘依頼は高額だけど、結局見つけられなくて失敗する事が多いから結構残るんだよな。けどまぁ、お前なら大丈夫なんだろ?」

「まぁね。」


 ジェラミーからの確認に、自信満々にティルミオは答えた。

 希少鉱石ルナストーンの採掘は、普通なら高難易度に分類される依頼だが、観察眼の贈り物を貰ったティルミオにとっては朝飯前なのだ。


「ジェラミーは依頼決めたか?」

「オレはコレだ。アウリーサ洞窟の魔物の数減らし依頼。討伐対象の指定は無いから道中出て来た魔物の片っ端から叩き潰せば良いんだ。これなら、お前の護衛ついでに効率よく稼げるぞ。」

「いいね!」


 ティルミオとジェラミーは、それぞれが見つけた依頼書を見せ合って内容を確認すると、それぞれに合った依頼書を手に、受付で手続きを済ませた。


 これで、出発の準備は全て整った。


「よし、じゃあ行くか!」

「おう!!」


 掛け声をかけて気合を入れると、ティルミオとジェラミーは冒険者ギルドを出てアウリーサ洞窟へと向かった。


 ティルミオは、初めての本格的なダンジョンの挑戦に少し緊張していたが、観察眼があればきっと何事もなく終わるだろうと、この時はまだ、楽観的に思っていたのだった。


***


 街を出て乗合馬車で三十分程街道を進み、そこから更に森の中を十五分ほど歩くと、目的のアウリーサ洞窟は、ポッカリと穴を開けて冒険者を待ち構えていた。


 街から一番近い本格的なダンジョンという事もあって、周囲には冒険者の姿も多く、洞窟の入り口には、両脇に兵士が立って警備しており、少し離れた場所には、見張りの交代要員が待機する小屋まで建っていたのだった。


「なんか、思ってたより人が多いな。それに、洞窟の入り口に兵士が居るんだな。」


 ティルミオは人の多さに戸惑って周囲をキョロキョロと見渡しながら、思わずそう漏らした。


 するとジェラミーはティルミオに教えるように答えた。


「あぁ、出入りの監視だよ。洞窟から魔物が溢れ出てこないように見張ってるのと、後は盗掘防止だな。許可なく採掘した物を持ち出してないか、ほら、洞窟から出る時にああやってチェックしてるんだ。」


 そう言ってジェラミーが入り口の方を指差したので、ティルミオが指し示した方を見ると、丁度兵士がダンジョンから出て来た冒険者たちに対して、依頼書を確認した上で他に鉱石を隠し持っていないか魔法道具をかざして検査をしている所だった。


「厳しいんだな。」

「鉱石は貴重だからな。ティルミオ、お前ルナストーンを持って帰るつもりだろう?ちゃんと申告するんだぞ。隠し持ってるのが分かったら、罰金だけじゃ済まないからな。」

「勿論、分かってるよ。」


 そんな会話をしながら、ティルミオとジェラミーはダンジョンの入り口へと近づいて行った。すると入り口の前に立っていた見張りの兵士が、二人に向かって声を掛けて来たのだった。



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