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第42話 魔導士登録

「ティティルナさんの錬金術は、商売をしている以上このままずっと秘密にしておけるとは思えません。であれば、今回の様に変な輩に目を付けられるよりは、国のちゃんとした後ろ盾を得るのが良いと思います。」


 オデールの考えはこうであった。国の登録魔導士という肩書が付けば、ティティルナの事を無知な子供だと思って利用しようとする人は寄ってこなくなる筈で、それはこの子達を守る事に繋がると思ったのだ。


 けれども、ティティルナもティルミオも、この話には慎重だった。


「けどさ、それってミッケの事もバレないか?どうやって贈り物(ギフト)を授かったか説明が必要じゃないのか?」

贈り物(ギフト)の発現方法は、誰も本当の所は知りません。なので、正直にその猫の事を話さなくても天啓を受けたと言った説明で大丈夫でしょう。その猫の秘密は守れますよ。」

「けど、国の魔導士だなんてそんな大それたこと私に出来るかしら……」


 そんな風に兄妹は、国の魔導士登録の話を渋ったのだ。


 するとオデールは、そんな二人を宥めるように、自分が何故魔導士登録を勧めるのかの続きを話したのだった。


「大丈夫ですよ。先ほど見せていただいたティティルナさんの錬金術なら、何も心配いりませんよ。それに、魔導士登録すると、地位と利権が得られるので、貴方たちにとって悪い話では無いと思います。」

「地位と利権……?」

「はい。この国に魔法を使える人は多くありません。なので貴重な人材を国が把握して管理したいって意図は有りますが、その代わりに登録魔導士は準貴族に認定されます。そうなれば、貴女たちの身分が保証されて、今回の様な疑いがかけられることが無くなりますよ。」


 準貴族とは、平民の中で優れた功績を立てた者や、盤石な経済基盤を持っている豪商などに与えられる貴族と平民の中間に位置する身分であり、フィオン達ザイルード家もこれに当たる。


 貴族と違って強大な権力が有るわけではないが、それでも準貴族の特権が有れば確かにただの平民よりかは守られる立場になるのだが、しかし、それが本当に自分たちにとって良い事なのか、兄妹は判断出来ないでいた。


「うーん。けど、こんな子供が準貴族だなんて、余計に利用しようと企む奴が寄ってこないか?」

「そうですね……無いとは言い切れませんが、準貴族という肩書きがあれば、今回の様な変な小物は湧いてこないでしょう。」

「つまり、大物は寄ってくるんだにゃ?」


 オデールの説明に兄妹が困惑していると、ミッケが真っ直ぐにオデールを見返してそう言った。

 この三毛猫は、猫らしく気ままに振る舞っているものの、こういった本質は的確に突いてくるのだ。


 けれど、そんな鋭い指摘にもオデールは臆する事なく堂々と答えた。


「そうならない為に、我々役人や兵士が特に目を光らせて貴女たちを守るんですよ。」


 そう話すオデールの目は曇り一つなく澄んでいて、これがティルミオ達を騙す為の方便などでは無いことは兄妹も十分に感じ取っていたが、しかしティルミオは、ある事が気になって、オデールに聞き返したのだった。


「それって、つまり日常を監視されるって事?」

「基本的にはそういう事はしませんが……でも、登録魔導士になると定期的な面談が課せられるので、そこで誰かに騙されてないかとか、道を踏み外していないかとかを確認して、危ないと思ったら然るべき対処がされます。」

「うーん……それって結局は監視されているような物では……」


 ティルミオは、国の管理下に入るというのはつまり自分たちが監視されるのでは無いかと懸念してその質問をぶつけたのだが、しかしオデールの説明は曖昧で、すんなりと納得出来る答えでは無かった。


 だからティルミオは、疑いの目を持ったまま考えを巡らせ続けたが、しかし妹のティティルナは、オデールの次の言葉で簡単に靡いてしまうのであった。


「あぁ、そうだ。登録魔導士にはマナポーションが毎月国から支給されますよ。魔法を使う人には必要な物でしょう?」


 マナポーションとは飲むと体内魔力が回復するアイテムであり、魔力量がまだまだ少ないティティルナにとって、それは凄く欲しい物であった。

 だからティティルナはこの魅力的な話に思わず「魔導士登録します!」と言いそうになっていたのだ。


 しかし慎重なティルミオは、そんな妹の軽率な行動を制すると、オデールとの話を続けたのだった。

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