第41話 思ってもみない提案
「成程……高位なる存在からの贈り物ですか……」
「分かってもらえましたか?」
ティルミオたちからの話を聞いたオデールは、信じられないといった目で兄妹を見遣った。
高位なる存在からの贈り物。兄妹からその話を聞いた時は俄かには信じがたかったが、目の前で実際に錬金術を見てしまっては認めざるを得なかった。
「……正直言って、そんな事が起こり得るのかと疑ってましたが、でも目の前で見せられては認めるしかないですね。」
「そうにゃ!我は凄い存在だしティオ達は何も悪いことしてにゃいにゃ!捕まえるとかいうんじゃにゃい!!」
「そうですね……法律的には何も違反はしてませんね。」
「勿論だよ!!そりゃ、古紙を手に入れるのに人の家のゴミを漁ろうとした事はあったけど、直前で止めさせたし!」
「……それは賢明でしたね。人として道を踏み外さないでくれて良かったです。」
「だから私たち何も問題無いですよね?ねっ?」
各々が好き勝手に訴える言葉を、オデールはそれぞれに真顔で受け答えた。そして最後に一つ大きな溜息を吐くと、この事態の収拾に入ったのだった。
「……まぁ、法を犯した訳では無いので、あなた達兄妹に問題は無いのですが……」
そこで言葉を切ると、オデールはチラリとミッケの方を見てもう一度深く溜息を吐いた。
「……この猫が、大問題ですね……」
猫なのか何なのかよく分からないこの自称高位生物が、錬金術という希少な技能を贈ったというのだ。そんな御伽噺、上司にどう報告しようかと、オデールは新たな問題に頭を抱えた。
すると、オデールが悩んでるのを察した兄妹は、すがる様な目で彼をジッと見つめると、必死に訴えたのだった。
「あの……ミッケの事、黙っててくれますよね?」
「そうだよ!サーヴォルトさん前に俺たちの力になるから何でも相談してくれって言ってたじゃないか!」
「確かに言いましたが……なんて言うか、その……この展開は予想外です。」
兄妹からの訴えに、オデールはますます困惑してティルミオの腕の中のミッケを見つめたが、当の本猫は、周囲の困惑などまるで他人事の様に寛いでいるのであった。
「にゃんだ?お前たち辛気臭いにゃあ。」
「誰のせいだと思ってるんですか?!」
「にゃ?!我のせいだと言うのかにゃ?!」
「そうですよ、貴方の事が説明出来なくて困ってるんですよ……」
「そんなの知らんがにゃ!!」
不服だと言わんばかりにミッケは毛を逆立てて一回り大きくなって見せたが、その不満は最もであった。説明出来ないのはニンゲン側の常識とかの問題であって、ミッケ自身には何も落ち度は無いのだから。
「……それにしても贈り物ですか……この事は、暫くの間、誰にも言わない方が良いでしょうね。」
「はい。それは俺たちもそう思ってます。」
「えぇ、それが賢明ですね。もし、そこの猫が贈り物を与えられる高位生物だと知れ渡れば、貴方たちを騙してこの猫を攫いにくる輩が出てくるかもしれませんし。」
オデールの言葉に、ティルミオとティティルナはハッとして顔を見合わせた。今まで、ミッケが攫われるなんて可能性を考えていなかったのだ。
「えっ、そんなのは嫌!ミッケは得体が知れなくてもうちの子だもの!」
「得体が知れないは余計にゃ!!」
「あぁ。口が悪くって偉そうだけど、それでも、ミッケは大事な家族の一員だから!」
「だから一言多いにゃ!!」
ティルミオの腕の中から抜け出して、二人に抗議の声を上げるミッケの姿は、やはりどう見ても猫であった。喋る事以外は。
そんな兄妹と飼い猫の微笑ましいやり取りを、オデールは何とかして守ってやりたいと思った。そしてその為には自分が何をしてあげれるかを考えると、オデールは真剣な表情で、じゃれ合う兄妹と猫を見守りながら話を続けたのだった。
「……まぁ、その猫の事は誰にも知られないようにするとして……で、それはそれとしてティティルナさん。貴女、錬金術が使えるのなら、魔導士として国に登録してはいかがですか?私が推薦しましょう。」
「えっ?!」
それは、ティティルナ達が思ってもみない提案であった。




