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第33話 予期せぬ来訪者

「で、お兄ちゃんは大丈夫なの?魔物の解体作業で動けなくなる程気分が悪くなるなんて、やっぱり冒険者向いてないんじゃない?」


 ジェラミーが帰って、ミッケをたっぷりと叱った後で、ティティルナは店の掃除をしながら、未だ具合の悪そうに椅子に座って居る兄に対して、物憂い顔でそう問いかけた。


 帰宅してから暫く経つというのに、全然回復する気配を見せないティルミオの事をティティルナは本気で心配していて、これ以上兄に無理をして欲しくなかったのだ。


 しかし、ティルミオの体調が悪い理由はティティルナが思っているような事が理由では無いのだ。だからティルミオは、妹を安心させる為に、何故自分が体調を崩したのか本当の理由を打ち明けたのだった。


「違うんだ。これは魔物の解体作業で気持ち悪くなったんじゃなくて……実は俺、贈り物(ギフト)が分かったんだ!」


「本当に?!」「本当にゃ?!」


 少し興奮気味に話すティルミオからの予想外な報告に、ティティルナとミッケは、大きな声を出して驚いてみせた。


 するとティルミオは、そんな二人の驚く反応を満足そうに見つめながら大きく頷くと、話を続けた。


「あぁ。今日ギルドの仕事をしている時に気付いたんだ。で、この能力をちょっと使いすぎちゃって……で、多分コレは魔力切れって奴だと思う……」


 そう話すティルミオは、散々妹に無理をするなと言っていた手前、少し歯切れが悪かった。そして彼は案の定、ティティルナから昨日自分が妹にしたのと同じお説教を食らうのであった。


「お兄ちゃん私には散々無理するなって言ってたのに?!」

「いやぁ、自分じゃ分かんない物だな。コレからは気をつけるよ。」

「絶対にだよ?無理しちゃダメだよ!」

「あ、あぁ……分かったよ。」


 今まで心配する立場だったのが逆転してしまい、ティルミオは妹からの戒めの言葉にタジタジであった。


 そんな兄妹のやりとりをミッケは少し離れたカウンターの上で寝そべりながら聞いていたのだが、中々肝心な事を話さないで、痺れを切らして兄妹の間に割って入ると、一番重要な事をティルミオに問いかけたのだった。


「それで、ティオは一体どんな能力にゃんだ?」


 ミッケは、ティルミオの具体的な能力が知りたかったのだ。


 するとそのミッケの質問に、ティルミオは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせると、胸を張って得意げに自分の能力について説明を始めた。


「そう、凄いんだよ!なんと……強く念じて視ると、物が光って見える様になったんだ!!」


 しかし、ドヤ顔でそんなこと言われても、ティティルナにもミッケにも意味がわからなかった。ティルミオは言葉が足りないのだ。


「う……うん?そうなんだ。」


 少し困った様に返事をする妹の反応を見て、ティルミオは自分が伝えたい事が全く伝わっていないと察すると、慌てて言葉を付け足した。


「だから、強く念じて見ると分かるんだ!草が!!」

「お兄ちゃんごめん……全く意味が分からないよ……」

「だーかーら、この草が欲しいって強く念じたらその草が光って見えてどこに生えてるか直ぐに分かったり、弱点はどこだって強く念じて視たら魔物の弱点が分かったりするんだよ!」


 そこまで説明した事で、ミッケはやっとティルミオがどんな能力が使える様になったかを理解した。それと同時に、その稀有な能力の発言に大いに興奮したのだった。


「それは、物事の本質を見極める観察眼にゃ!凄いにゃ!レアスキルにゃ!!」

「そうだろう!凄いだろう!!この力があれば、ギルドの採取クエストなんて簡単に終わるんだ!」


 ティルミオは、自分の能力の凄さに気がついたミッケが感嘆の声を上げたことに気を良くし、誇らしげに笑った。


 しかし、彼が優越感に浸ったのはほんの束の間だった。


「流石我にゃ!!二人ともにレアスキルを渡すにゃんて!」

「本当!ミッケ、貴方ってすごい猫ね。」


 尊敬の対象は、ティルミオでは無く、ミッケになってしまったのだ。


「えっ、コレ俺が褒められる流れじゃないの……?」

「何を言ってるにゃ?褒められるべきは我に決まってるにゃ!」


 そう言って、フフンと鼻を鳴らして得意顔をするミッケに、ティティルナもうんうんと頷いて同意して見せた。


「そうだよ。だってミッケが居なかったら私たちこんな凄い能力貰えなかったんだよ?」

「それは、確かにそうだけど……」

「そうにゃ!もっと褒めるにゃ!!」

「ミッケは可愛いし凄い三毛猫よ!」

「えぇっ……」


 そんな調子の二人から、思った様な反応を得られなかったティルミオは、妹と飼い猫の盛り上がる様子を、どこか釈然としない気分で見つめた。


 するとミッケは、そんなティルミオの様子を宥めるように身を擦り寄せると、兄妹に発破をかけたのだった。


「ま、ティオも人には過ぎる能力が使える様ににゃったし、これでお前たちは我のあげた素晴らしい贈り物によって、ガンガンお金を稼げるにゃ!さぁ、さっさとシャッキンとやらを返して、我に肉を食わせるにゃ!!」

 

 そんなミッケの言葉に、ティルミオもティティルナも明るく、前向きに答えた。


「そうだね!私がパンを作って売って、お兄ちゃんがギルドのクエストで稼いで……うん、二人で働けばきっと直ぐに借金も返せるね!!」

「そうだなぁ……。直ぐに、とまでは行かないとは思うけど、でもコレで安定して稼げる目処は立ったな。とりあえずこの金で税金の三分の一は払えるしな!」


 そう言ってティルミオはジェラミーから受け取った布袋を縦に振ってジャランと音を立たせた。この予想外のフォレストベアーの報酬は、彼らにとって本当に天の恵みであった。


 このままいけば、税金の支払いには十分間に合うし、毎月の借金返済分も、今のペースなら問題なく安定して返せる目処が立ったのだ。だから彼らは、すっかり安心しきって話に花が咲いたのだった。


「ジェラミーさんが良い人で本当に良かったわね!」

「あぁ。これからも一緒に組んで仕事してくれるんだ。頼ってばかりだけど、でもアイツのお陰で俺も冒険者としての目処が立った事だし、本当に心強いよ。」

「わ……我はまだ奴を認めた訳じゃにゃいからにゃ!」

「もー!そんな事言ってミッケはまたお説教されたいのかしら?」

「う……それは勘弁にゃ……」


 そんな風にワイワイと三人が盛り上がっている、その時だった。


 カランっと店のドアが開いて、見知らぬ男性が入って来たのだった。

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