第28話 パーティー結成
「倒したのかっ?!!」
ジェラミーの強烈な一撃により、フォレストベアーが動かなくなったのを見て、木の影に隠れていたティルミオはジェラミーの元へと駆け寄った。
「ああ。倒したぞ!オレが倒したんだ!!」
「本当にジェラミーが居てくれて良かったよ!俺一人でこんなのに出会ってたら死んでたよ!」
「普通はこんな所には出ないんだけどな。コイツはどうやら縄張り争いに負けた手負いだったらしい。」
だから自分一人でも倒す事が出来たんだと、ジェラミーは地面に倒れ込みながら嬉しそうに笑った。
「コイツを倒せたのはお前が右脚の怪我に気付いてくれたお陰でもあるよ。ホント、良く分かったな。」
「それは……俺が、目が良いからだよ!!」
「なるほど……だからさっきも蒼生草を直ぐに見つけられたのか。」
「そ、そう、そうなんだよ!」
倒れ込んだジェラミーの横にティルミオはしゃがみ込むと、少しだけドギマギしながら答えた。観察眼の事は説明がし辛いので、助けてくれたジェラミーにも誤魔化したのだ。
「そっか。お前、案外冒険者に向いてるのかもな。」
「あぁ。俺も今日ので採取クエストなら全然やっていける自信がついたよ。……魔物は無理だけど……ま、見えたら全力で逃げれば何とかなるっしょ。」
ジェラミーの褒め言葉に、ティルミオは笑いながらそう答えた。
初めてのクエストであんな凶悪な魔物と出くわしてしまって心が折れていてもおかしく無いのに、それよりもティルミオは自分の力が大きく開花した事の方が嬉しくて仕方なかったのだ。
するとジェラミーは、そんな彼にある提案をしたのだった。
「……なぁ、お前今度はアウリーサ洞窟へ行ってみないか?そこなら採掘の依頼が出来るんだ。薬草採取より報酬が良いぞ。」
「えっ、無理だよアウリーサ洞窟って魔物の巣だろ?いくら報酬が良くてもそんな所に一人で行ける訳ないよ。」
「一人じゃないぞ。オレと一緒だ。オレが魔物を倒すから、お前が鉱石を採掘するんだ。今日みたいに分業だ。」
それは、パーティー結成のお誘いだった。
「オレ気付いたんだよ。お前が採掘してる間にオレが魔物討伐の依頼をすれば、一回で二つのクエストこなせるだろ?」
ジェラミーは、簡単に蒼生草を見つけたり、フォレストベアーの弱点を見抜いたりしたティルミオには、何か天賦の才のような特殊な能力があると感じ取っていて、その才能を高く買ったのだ。
ジェラミーが魔物を討伐している間に、ティルミオが高速で採掘を行う。そんな理想的な働き方の提案だった。
けれども、ティルミオには直ぐに「うん」とは言えなかった。戦闘が何も出来ない自分と固定でパーティーを組むのは、なんだか彼に申し訳ない気がするのだ。
「いいのか?俺にとっては願っても無い申し出だけど……それってジェラミーにメリットあるのか?」
「あぁ。十分あると踏んでるよ。オレは、お前の目が良い所に期待してるんだ。」
ジェラミーはそう言とニヤリと笑った。
そんな彼の表情を見て、ティルミオは自分がちゃんと期待されているのだと分かって、気後れしていたジェラミーの提案を快く受け入れたのだった。
「分かった。ジェラミー、よろしく頼むよ!」
「あぁ。こちらこそよろしくな。」
こうして二人はがっちりと握手をして、協力関係を結んだのだった。
「それで、この熊ってどうするんだ?このままなのか?」
「まさか?!解体するに決まってるだろう!」
今後の話がまとまった所で、ティルミオは地面に横たわっているフォレストベアーを指差しながら、これをどうするのかとジェラミーに尋ねた。すると、ジェラミーはさも当然と言う様にフォレストベアーの解体をすると言ったので、ティルミオは驚いてしまった。
「えっ!魔物なんか解体したことないよ?!」
「じゃあ覚えるんだな。冒険者なら必要なスキルだ。魔物素材は金になるんだ。もしギルドにフォレストベアーの討伐依頼書が残っていれば、それを受けてそのまま討伐証明になる魔物素材を提出すれば報酬が貰えるし、依頼書が残って無くても、魔物素材の買取はしてくれるから、倒した魔物の素材を剥ぎ取るのは冒険者なら常識なんだ。」
ジェラミーはそんなことをティルミオに教えながら倒れているフォレストベアーを眺めた。
「よし、コイツからは毛皮と爪を剥ぎ取ろう。とりあえず換金できそうな場所はそれくらいかな。」
そう言うと、ジェラミーはナイフを器用に使い慣れた手つきで毛皮を剥いでいったのだった。
ティルミオはその様子を後ろからじっと眺めて居たのだが、しかし、彼には腑に落ちない事があったのだ。
換金できそうな場所は毛皮と爪。
本当にそうだろうか?
こんなにでかいのだからもっと他にも金になる所があるんじゃないかと、そう睨んだのだ。
だからティルミオは、ジェラミーの後ろからまたしても観察眼をこっそりと使った。
(換金できる素材は他にないか……!)
ティルミオはお金の事を強く考えて、集中してフォレストベアーを凝視した。
すると、ティルミオの思った通りフォレストベアーにはまだ換金できる場所があったのだ。
今までと同じように、ティルミオが強く想って視ると、フォレストベアーの右脇腹が青白く光ったのだった。




