第27話 ある日森の中クマさんに出会った
フォレストベアー
森の奥深くに生息している、非常に凶暴で獰猛な魔物だ。
本来ならこんな所に出るはずが無い魔物が、何故か今、ティルミオとジェラミーの目の前に居るのだ。
「ジェラミー!この辺りは安全なんじゃ無かったのかよ?!」
「そうだよ、その筈なんだよ!何でこんな強い魔物がここに居るのかオレだって分かんないよ!」
突然現れたフォレストベアーに対して、ティルミオは完全に腰が引けている状態だったが、ジェラミーは魔物から目を逸らさずにじっと睨みを利かせていた。
少し森の奥の方ではあるが、それでも街道に近いこの場所に現れた本来居るはずの無い強い魔物をこのまま野放したら不味いのだ。一般人に被害が出てしまうから。
だからジェラミーは、目の前のフォレストベアーに対して臆する所を見せずに、堂々と立ち会った。隙を見せたらヤられる。それだけは確実だったから。
「無理だ、こんなの早く逃げないと!」
「落ち着け、俺を誰だと思ってるんだ!Bランク冒険者だぞ?」
恐怖で身体が竦んでいるティルミオに対して、踏んでる場数が違うからか、ジェレミーは冷静だった。冒険者のランクとしては上位に当たる、Bランクだと言う彼は剣に手を掛けて、堂々とフォレストベアーと対峙していたのだ。
そんな彼の頼もしい姿に、ティルミオは少しだけ落ち着きを取り戻した。
「ジェラミー、倒したことあるのか?」
「無い!!見たのも初めてだ!」
「じゃあどこからそんな自信が出てくるんだよっ!!」
あたかも討伐経験がありそうな感じを出しておきながら、ハッキリとそれを否定したジェラミーに対してティルミオは思わず突っ込んでしまったが、そんなティルミオからの問いかけにも、ジェラミーは淀みなく答えたのだった。
「それは今迄の経験と、それと直感からだっ!!」
そう力強く言い放つや否や、ジェラミーは腰の剣を引き抜いて、フォレストベアーに斬りかかった。
先ずはフォレストベアーの攻撃を誘って、その巨腕を空振りさせると、その隙を突いて右腕に力一杯剣を叩き込んだのだ。
しかし、肉が切れた様な手応えは得られなかった。フォレストベアーの肉質は恐ろしく硬く、まるで石に打ち込んだみたいだった。
「マジかよっ!!全然ダメージ入らないじゃないか!」
ジェラミーは反動で痺れた手を庇いながら、魔物から直ぐに距離を取った。
「グルルルゥゥウ……!!」
するとフォレストベアーは低い唸り声を上げて二人を威嚇すると、ジェラミー目掛けて突進してきたのだ。
「うわぁっ!」
そんな熊の攻撃をジェラミーはギリギリで避けると、勢い余ったフォレストベアーは足を滑らせて体制を崩してしまっていた。
するとジェラミーは、その隙を見逃さずに一足飛びに距離を詰めると、もう一度その胴体に両手で剣を打ち込んだ。
しかし、やはりダメージを与えられないのだ。
「くそっ!何て硬さだ!全く攻撃が通らない!!」
「ジェラミー!大丈夫か?!」
魔物との戦闘において出来ることがないティルミオは、せめて邪魔にならない様にと近くの木の影に身を潜めていた。
(フォレストベアーの弱点……せめて弱点を見つけられれば!)
苦戦しているジェラミーの為に何か出来ないかと、ティルミオは必死に考えた。
そして、コレが本当に贈り物の力ならば、強く思えばその場所を指し示してくれる筈だという考えに至って、ティルミオは弱点を探そうと集中してフォレストベアーを凝視し続けたのだった。
すると、頭と右後ろ足がさっきの蒼生草のように、青白くぼうっと光って視えたのだ。
それは、フォレストベアーの弱点だった。
「ジェラミー!頭を狙え!そいつ頭が弱点みたいだ!」
「そんな事は分かってるよっ!!」
ティルミオは即座にジェラミーに自分が視えた弱点を伝えた。しかし、他の多くの獣と同じように頭が弱点なのは既に彼も分かっていたのだ。
だからさっきからジェラミーも頭を狙おうと動いていたのだが、しかし、自分の背丈よりも格段にでかい相手の脳天に剣を叩き込むのは難しくて上手くいかないのだ。
(脳天狙いは難しいのか。そうなるとじゃあ……)
ティルミオはもう一箇所光っている右後ろ足に注視した。すると、よく見ると右後ろ足の毛に固まった血がこびりついているのが分かった。
「じゃ、じゃあ右脚!!そいつ、右後ろ脚を怪我してるぞ!狙うならそこを!!」
毛で覆われているから分からなかったが、更に注視してみれば確かに右後脚に爪で抉られたような傷があったのだ。
ジェラミーはティルミオに言われるがままに狙いを右後ろ脚に変えた。そして、熊の強烈一撃をギリギリで避けながら、その右後ろ脚目掛けて再度斬りかかった。
すると、今度はさっきよりも手応えがあった。丁度爪痕の箇所に上手く当てられたのだ。
こうして、右後ろ脚をジェラミーの剣によって深く抉られたフォレストベアーは、その巨体を支えきれずにその場に倒れ込んだのだった。
倒れてしまえば今まで届かなかった場所にも攻撃を当てられるので、もう恐れる事は無かった。
ジェラミーは、倒れてもがいているフォレストベアーの脳天目掛けて両手で掲げた剣を力一杯振り下ろして、その巨体を絶命させたのだった。




