第26話 ティオが貰った贈り物
「森の中入るの初めてだ。……緊張するな……」
「お前、そんなんで良く冒険者になろうって思ったな。」
ギルドを出てジェラミーとティルミオの二人は、王都郊外の森へ来ていた。森と言っても奥深く入っていく訳では無い。街道に近い浅い場所で、青々と生い茂っている草の中から目的の蒼生草を探すと言った地道な作業であった。
「さて、今回の依頼品である蒼生草はマナポーションの材料だから人気の品なんだけど、とにかく見つけるのが難しいんだ。他に似ている植物がいっぱいあって間違えやすいし、そもそも群生しないからかなり広い範囲を捜索しないと見つからないだろう。」
「採取クエストって言っても大変なんだな。」
「そうだよ。森の浅い所を重点的に探すから魔物に襲われる心配は少ないし、もし襲われてもこの辺りまで出てくる魔物は縄張り争うに負けた弱い魔物だけだから安全な方だけど……でも、とにかく見つかるまで歩きっぱなしだからな、体力勝負ではあるよ。」
「なるほど。でも体力なら大丈夫!体力だけなら自信があるよ!」
「そっか、そいつは頼もしいや。」
ジェラミーは、ティルミオのやる気溢れるその発言に、笑いながら軽口で返した。
こうして二人は、だだっ広い森の中で蒼生草を探すという地道な作業を始めたのだが、そんな中でティルミオは不思議な物を見つけたのだった。
青々と雑草が群生している中で、一つだけ青白く光ってる草があるのだ。
ティルミオは不思議に思いながら恐る恐る光っている草を抜くと、まじまじとその草を確認した。どうやらコレが、蒼生草みたいだった。
「なあ、ジェラミー。蒼生草ってこれだよな?」
「お、そうだな。よく見つけたな。こんなに直ぐに見つかるなんて幸先いいな。」
確かに、多くのよく似た雑草に紛れて生えていたので分かりにくいと言えば分かりにくいのかも知れないが、だけれども、その中でコレだけ光っていたのだ。見落とす方が難しいのでは無いかとティルミオは首を捻った。
「なぁ、この草って光るんだな。」
「……は?何言ってるんだ?そんな訳あるか。」
「えっ、だって……」
ティルミオは言いかけてハッと気づいた。
もしかして光って見えてるのは自分だけなのでは無いのかと。
「……ちょっと確かめたいことがあるから次の場所に行ってもいいかな?」
「?あぁ、どうぞ。」
この場所の付近にはもう光っている所が無いことを確認すると、ティルミオは注意深く周囲を見渡した。すると、少し奥に入ったところに、さっきと同じぼうっとした青白い光が見えたのだ。
ティルミオはその場所へと向かった。
「あ、おい、オレが一緒だけれども、あんまり奥の方に行くなよ。お前、魔物倒せないだろ。」
後ろの方でジェラミーのそんな声が聞こえたが、ティルミオは構わずに進んだ。多少の危険よりも、光の正体を確かめたかったのだ。
「……あった……」
そうして、先程居た位置から少しだけ奥に入った所でティルミオはさっきと同じ青白く光る草を見つけたのだった。
彼は群生している草の中から、その青白く光を放っている草を掴んで引っこ抜くと、そして確かめた。
「ジェラミー!これも蒼生草だよな?!」
「あ、あぁ……凄いな。よくそんな連続で直ぐに見つけるな。」
やはり思った通り、ティルミオの目には蒼生草が光って見えるのだ。意識して周囲を見渡すと、他にもぼうっと光っている所があるのが分かる。どうやら、マグレでも何でもなく、ティルミオにそう言った能力が目覚めたみたいだった。
「ま、まぁな。俺、目が良いんだよ。」
ティルミオは、蒼生草を直ぐに見つけた事について素直に感心するジェラミーに対して曖昧に誤魔化して返答をした。
多分、この能力の事は今はまだ誰にも言わない方が良いと思ったのだ。
突如開眼したティルミオの能力、観察眼。
コレは、ミッケが自分にくれた贈り物なんだと彼は察した。
「ジェラミー、俺はどうやら採取の天才らしい!」
「まぐれじゃないのか?」
「まぐれじゃない!!見てな、後十八本だよな?直ぐに集めてみせるから。」
探している物を思って注意深く観察すれば、目当ての物が青白く光って見えると言う法則に気付いたティルミオは、少しだけ調子に乗っていた。
彼は宣言通りに直ぐに残りの蒼生草を集めてしまったのだが、しかし、光にばかり気を取られて周囲への警戒が疎かになって居たのだ。
だから思っていたより森の深くに来てしまっていた事にも、近くの茂みが風で揺れるのとは違う動きをしている事に直ぐに気づけなかったのだった。
「おいっ!ティルミオ!ちょっと待て、何かが居る!!」
ジェラミーに腕を掴まれて歩みを止めた時には、既に遅かった。それは、勢いよく茂みから飛び出してきて、二人の前に立ち塞がったのだ。
「グルルルゥゥウ……!!」
「なっ、フォレストベアー?!」
「熊?!!」
そう、二人は不運な事に上級モンスターであるフォレストベアーに出くわしてしまったのだった。




