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第22話 兄妹喧嘩?

 「お兄ちゃんと仲が悪い」ティティルナは元気よくそう言って、勢いでティルミオがパン作りをしない本当の理由を誤魔化


そうとしたが、しかし、フィオンはそんなことでは誤魔化されなかった。


「えっ……君たち仲凄く良かっただろ……?」


 今までのカーステン兄妹の仲の良さを知っているフィオンからしてみたら、ティティルナの言っている事は信じられないのだ。


 だからフィオンはカーステン兄妹を物凄く困惑した顔で眺めていたが、しかし他に良い言い訳も思い付かないので、ティルミオも妹の言葉に乗っかったのだった。

 

「急に仲悪くなったんだよ。……そう、昨日から。」

「そうそう。だからお兄ちゃんと一緒にパン作りたくないのよ。嫌いだから。」

「そうそう。急に一緒に働きたくないって思ったんだよ。昨日から。」


 そう話す様子がとても息がぴったりで、到底仲が悪いようには見えなかった。フィオンは二人の言い訳の酷さに相変わらず困惑していたが、しかし、次第に二人の様子が変わっていったのだった。


「そう。お兄ちゃんの朝なかなか起きないくせに寝坊すると”何で起こしてくれなかったのか”ってこっちのせいにする所、本当に嫌なのよね。」

「えっ……?!」


 具体的に兄の嫌なところを挙げ出したティティルナに、ティルミオは思わず驚きの声を上げて妹を見遣った。


 コレはあくまでフィオンを誤魔化すための喧嘩をしているフリだった筈なのに、いつのまにかティティルナは本当にティルミオに対しての不満を口に出していたのだ。


 予想外の出来事にティルミオは狼狽えたが、しかし、ティティルナの不満は止まらなかった。


「それから、洗濯終わったと思ったら、これ出すの忘れてたって追加で平気で洗い物出してくるでしょう?アレもすごい嫌なのよね。他にも物は出しっぱなしにするし、飲みかけのコップとか平気でそのまま置いておくし……」


 ティティルナの口からつらつらと出てくる文句は、放っておいたらいつまででも出てきそうだった。

 ティルミオは慌てて妹を止めにかかった。


「な、なぁティナ?」

「うん?何?」

「……お前それ、今言うことか?」


 するとティティルナは、ニッコリと笑うと兄からの静止をキッパリと切り捨てたのだった。


「うん。良い機会だからね。」


 ティティルナは、この際だからと今まで溜め込んでいた小さな不満を全部口に出す勢いで言葉を続けた。


「だいたいお兄ちゃんはずるいのよ。今日だってミッケと遊んでてお店の準備全然手を動かしてなかったじゃない。」

「あれは、ミッケが……」


 邪魔をしたから仕方がなかった。

 

 そう言おうとしたのだが、予想外の人が口を開いて、その言葉は遮られてしまった。


「まぁ、猫を言い訳に使だなんて、見苦しいですわね。年長者なのですから申し開きなどせずに、ティナの不平を甘んじて受け入れるべきですわ!」


 何故かフィオネが参戦してきたのだ。


「それにさ、お兄ちゃん冒険者になるのだって一人で勝手に決めちゃうし……」

「まぁ!大事な事を妹と相談しないで決めるだなんて、なんて傲慢なのかしら!」

「借金の事も具体的には教えてくれないで秘密にするし……」

「まぁ!家族の間で隠し事は良く無いですわ!ティナが可哀想ですわ!!」


 いつのまにか二対一の構図で、ティルミオは一方的に責め立てられていた。


 本当に、どうしてこうなったのか分からずにティルミオは頭を抱えた。


 ティティルナに責められるのはまだ分かるが、何故フィオネにまで罵られなければいけないのか。

 そこが納得できずにティルミオは声を上げようとしたが、彼が何か口を挟むのも許さないくらい、妹たちは止まらなかった。


「それにお兄ちゃんはねぇ……」

「ティオはティナの事を大事にしなさすぎですわ!!」


 こうなるともう止められなかった。ティルミオは心底困り果てて何も言えないで居た。

 すると、そんな彼に同情してか、今まで黙って成り行きを見守って居たフィオンが、妹たちを止めるべく声を上げたのだった。


「うん、フィオネはちょっと黙ってようか。ややこしくなるから。」


 妹たちが暴走してどうにもならなくなったこの状況にフィオンは眉間を押さえてため息を吐くと、彼は先ず、自分の妹の口を塞いで事態収拾に動いた。


「でも、お兄様……」

「うん。フィオネがティナのこと大好きだから彼女の味方になりたい気持ちは分かるけど、これはティナとティオの問題だからね。僕たちが口を挟んだらダメだよ。」

「わ……私がティナの味方ですって?!そ……そんなんじゃありませんわ!!」


 フィオンはニッコリと微笑みかけながら妹を諭した。するとフィオネは顔を真っ赤にしながらそう叫ぶと、それ以降は恥ずかしさから口を閉ざしてしまった。流石兄である。妹を一瞬で黙らせてしまった。


 それからフィオンは、ティティルナの方を向くと彼女にも同様に微笑みかけて、優しく声をかけた。


「ティナも、もうその辺にしといてあげよう?ティオも反省してるだろうから。」


 そう言うとフィオンはティルミオに目配せをした。

 すると、それに気付いたティルミオは首を縦に大きく振ってフィオンの発言に乗っかったのだった。


「あぁ、うん!反省した。凄く反省してる!」


 そんな兄たちの様子を見て、ティティルナは少しだけ不服そうな顔のままであったが、やれやれと言った感じでそれ以上


文句を言うのを止めたのだった。


「……お兄ちゃん、今私が言ったこと、ちゃんと改善してよね。」

「分かった、直す、直すから!」

「本当だよ?約束破ったら一生口聞かないからね?」

「も、勿論だ!約束は守るよ!」

「……仕方ないなぁ。フィオンさんに免じてこの辺で勘弁してあげる。」


 ティティルナは大きく息を吐いてからそう言うと、ティルミオを許してやった。

 そして、この諍いを仲裁したフィオンに向かって頭を下げて謝罪の言葉を述べたのだった。


「どうもお騒がせしました。」  

「うん……その、なんだ……大変だと思うけど兄妹仲良くするんだよ。」


 頭を下げるティティルナに、フィオンは言葉を選びながら受け応えた。

 そしてティルミオの方にも向き直って、フィオンは彼にも諫める言葉を伝えたのだった。


「ティナの不満はもっともだし、これからは二人でなんでもきちんと話し合って決めるんだよ。それから、やはりティオはティナに甘え過ぎてるから、妹の負担になるような、だらしない所は直さないとね。」

「はい、善処します……」


 こうして事態は一応丸く収まった。


 結果的にフィオンからの追及も、一連の騒動のおかげで、結局有耶無耶なままで何とか乗り切れたのだ。

 

「さて、フィオネが恥ずかしがって僕の後ろから動かなくなってしまったので、そろそろ僕たちは帰るよ。」


 ティルミオとティティルナが仲直りをしたのを見届けると、フィオンは真っ赤になって動かなくなってしまっているフィオネの背中をトントンと叩いて彼女を正気に戻しながら、お暇する旨を二人に伝えた。


「そっか。……変なところを見られたし、わざわざ来てくれたのになんか悪かったな。」

「気にする事無いさ。とにかく力になれる事があれば協力するし、相談にも乗るよ。何か困った事があったら遠慮なく頼ってくれ。」

「有り難う!」


 そしてフィオンは、最後にもう一度だけティルミオに、自分たちが出来る事ならなんでも力になりたいと伝えると、フィオネを連れて帰って行ったのだった。

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