表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/34

噂の町

ところで、この世界には魔法がある。

それは日々の生活の色んな場所で役に立っている。


その魔法を使って動く魔動車という箱型の車がある。これは予約制でお値段は少々するが早くて便利だ。動力は魔力だが、人の魔力ではなく魔力を持つ石を使っている。


他にも貸切できる食事・寝台付きの豪華な車もあり、料金は高額だが都から丸一日で行けるので時間のないお金持ちの方にはおすすめ。


他は各駅停車で行く低料金の馬車があるが、今回は時間節約のために魔動車を使う。魔動車は二十席あって全部が予約制で、都からの出発は午前・午後の二便があり、空きがあれば当日も受け付けてくれる。


彼女の店には経営者を含めて全部で十五名いるのだが、今回の旅行は夫や恋人のいる者は行かないというので残りの八名で行くことになった。


当日、各々の家で早めの昼食を済ませて停留所に集合して午後の便で出発。一緒に乗った車の中にはカップルが六組もいて、イチャイチャするカップルを横目に内心羨ましく思いながら『負けないぞ!』という思いでミチルたちはお喋りしていた。


目的地に着くまでに数度休憩を挟み、夕暮近くなった頃に中継の町へ到着。本日はここで一泊。宿は四人部屋を二つ予約していて、ミチルはスーザン他二人と同室だ。


夕食の席は賑やかだった。皆、普段は仕事があるため酒は殆ど飲まないけど、連休なので羽目を外してミチル以外の七人は大酒を飲んでいた。


二時間ほど経ってスーザンとミチル以外は部屋に戻ったが、スーザンはミチル相手に深夜近くまで飲み続けた。


飲み過ぎてしまったのか、彼女はミチルの顔を見ては『変な顔しないで~』とケラケラ笑い始終楽しそうにしていた。スーザンの足腰が立たなくなる前に何とか説得して部屋へと戻り、ベッドに寝かせた途端に彼女は眠り込んだ。


普段、ストレスを発散できないのでこんな時くらいは好きに飲ませてやりたいが、せっかく観光に行くのに、酒を飲んで終わっただけでは本人も面白くないだろう。観光中は私がストッパー役にならなければとミチルは思った。


翌朝、宿をチェックアウトした八人は停留所で車を待っていた。昨夜飲んだ酒による影響も全く無く、皆元気にお喋りしている。


そのうち車が到着して八人は乗り込んだ。が、他の客がいつまでも姿を見せない。そろそろ出発するという頃になってようやく二組のカップルが現れたが、昨日の様子とは打って変って気まずい雰囲気を醸し出している。


他の客を待っていたが結局現れず空席のまま出発。恋人達に何があったか気にはなるが、詮索するわけにもいかないので到着するまで喋り続けた。


予約した宿は温泉も食事も最高だった!


ミチル達は外湯も含めて温泉に入りまくってのぼせたり、冷たい物を食べて頭が痛くなったり、周辺の景色を楽しんだり、土産物屋に行って物色したり、食べ歩きに行ったりと大いに楽しみ、三日間の滞在はあっという間に終わった。


朝、チェックアウトを終えて停留所で車を待っていた時、ミチルはふと恋人たちのことを思いだした。仲間の一人に『あの人たちどうしたんだろうね?』と聞いたら、一人がそれに関わる噂をどこかで聞いたそうでミチルに話してくれた。


噂によると、中継で泊まった町は《真実の愛》が試される町なのだそうだ。内容は詳しく知らないが、愛し合う者たちにだけ何かの試練があるらしい。


その噂を聞いた脳内がお花畑の恋人たちは『私達なら大丈夫!』といってわざわざあの町に泊まりに行くのだそうだ。しかし絆を深めるどころか溝が出来るのが殆どだとか…。


(だから行かなかったんだ…)


旅行に行かなかった者達にカップルが多かったのをミチルは思い出した。彼女らは噂を知っていたが、相手のいないミチル達には関係ないと思って言わなかったのだろう。


考えに耽っているうちに車が到着したので八人は乗り込んだ。同乗の他の客は自分達と同じく団体の旅行者のようだった。今日はこの前の町で一泊して明日店に戻る予定だ。今晩も賑やかになるだろうな~と思いながら、ミチルは町に着くまで一眠りした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ