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狭いように見えて深い愛情

ところで…、と急にスーザンが話題を変え、ダインを睨んだ。


「ミチルに渡したアクセサリーの事だけど、一言いいたいことがあるのよね」

「…ナ、ナンデショウ?」


急な質問と彼女の態度にダインが吃る。


「昨日あなた、『()()一定時間ミチルに触れた場合』と言っていたわね? 危険だけなら男女問わずのはずよね? なのに男限定ってことは、それって危険から守るというより浮気防止対策みたいよね? ミチルのことが信じられないって言ってるも同然よね? 


ミチルを取られたくないって気持ちは分かるけど、ちょっと他所の男に触れられただけで嫉妬に狂うような男にはミチルを嫁がせるつもりはないわよ」


その言葉にダインの喉がグッと詰まった。確かにそうだ。前回の婚約者がそうだからと言って、ミチルがそうなるとは限らない。それに相手の気持ちだけはどうにもならないのだ。彼は『そうだよな』とガックリ肩を落とした。


でもミチルはスーザンと少し違った。それだけ強い想いで自分を見てくれているとは思わなかったのだ。だから、彼になら自分の秘密を打ち明けてもいいかもしれないと思った。もちろん秘密とは自分の故郷のことだ。


ミチルはスーザンと目を合わせ『言ってもいいかな?』と確認した。スーザンは少し考えてから頷いた。


「ダインさん、私、ちょっと特殊な事情があるんです。もっとよく知り合ってから話すつもりでしたが、もうダインさんに知ってもらった方がいいと感じたので話します。実は私、この世界の人では無いんです。別の世界から来た者なんです。


だから魔力が無いし、今後もしかしたら突然元の世界に戻るかもしれません。もしこの先、ダインさんと結婚したとしても魔力のない子供が生まれるかもしれません。それでも私のことを受け入れられますか?」


ミチルの話を聞いていたダインは、イマイチよく分からないという表情をしていた。だから『何が問題なんだ?』という答えが彼から返ってきた時は二人とも驚いた。


「何が問題かって、ダインさんは気にならないんですか?」


「俺はミチルが好きなんだ。魔力があろうとなかろうと別にどうでもいい。子供のことまで考えていなかったが、将来のことを心配しているなら何の問題も無いと思うぞ? 最近は色んな職種で機械化が進んで技術が進歩している。昔と違って皆やりたい仕事が出来るようになるだろう。


…まあ、ミチルが突然目の前から消えたら辛いだろうが、最初からそれを恐れて一緒にならないよりは想い出があるだけマシだ。それに事故や病気でいなくなることだってあるからな。そう考えれば珍しいことでもないさ。とはいっても、出来ればそれは俺が死んだ後であってほしいけどな」


と彼が照れながら言う。


ダインの言葉がミチルの胸を打ち、彼女の心が感激に震えた。その様子を見てスーザンは溜息を吐き、仕方なく彼のことを認めることにした。しかし釘を刺すことだけは忘れなかった。


「仕方ないからあなたのことは認めるわ。でも、いい? ミチルを縛り付けるような行動をしたら私が黙っていませんからね。特にあのアクセサリーなんて以ての外よ」

「わかった、努力す………いや! もうしない! 絶対しない!」


彼が途中で言いなおしたのは、スーザンに『あぁん?!』と睨まれたからだ。ミチルは二人を見ながら笑っていたが、ふと首飾りのことを思い出し、バッグからアメジストのペンダントトップを取り出した。


ダインの話を聞く直前まで二つのうちのどちらを渡すか迷っていたが、話を聞いた後はこちらを持っていてほしいと彼女は強く思った。


恋人や家族との絆を深める、彼とはそうありたいと望んだ彼女は、持っていた白金の鎖を急いでペンダントトップの丸環に通した。


「ダインさん、そのぅ、婚約者の証とは違いますが、これを受け取ってもらえますか?」

「俺に?」

「はい。これは御守りなんです」


そう言ってペンダントをダインに渡した。彼はペンダントを受け取り、飾りが施された紫水晶の剣をマジマジと見る。


「御守り? …なるほど、これは剣か。剣で守るということか。ありがとう、大事にするよ」


ダインにはちょっと違う解釈をされてしまったが訂正せずにおいた。石の意味は告げずに御守りとだけ言ったのは照れくさかったからだ。


が、スーザンが嫌な顔をしながらダインに説明してしまった。彼女はミチル特製のアクセサリーを彼にあげたことが不服なのだ。


「ミチルのアクセサリーは特別なのよ。この子が大事に持っている石は特にね。ミチルがうちの店に来たお客さんに肩入れした時、大事にしていた石の一つでお客に御守りを作ってあげたの。そしたらそのお客さん、もの凄い幸運に恵まれたわ。常々思うけど、ミチルは魔力が無い代わりに別の形で魔法を使えるんじゃないかと思うわ。あなたはそれだけ価値のある物を貰ったのよ」


その話を聞いてダインは驚いた。道のそこらに落ちている唯の石にそんな効果があるとは思わなかったのだ。


「そんなに大事な物を俺にくれたのか?! じ、じゃあ、俺はやっぱりミチルにあの蛇革のアクセサリーを…」

「あ、それは何かあった時に怖いんで遠慮させてください」

「…だよな」


ミチルに即断られ、彼はションボリと肩を落とした。


その後は三人で遅くなった昼食を食べ、ダインの休憩が終わったあとミチルとスーザンは店を出て別行動することにした。スーザンは材料確保のためにまた革の卸店へ行き、ミチルはエルグの店へと向かった。

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