本編にあまり関係ない前提
どこかに同じような話があったらごめんなさいね。
ある国に豊富な温泉を利用した観光地がある。
そこは昔、保養地として領主が楽しむためだけの別荘があったが、世代交代で大規模な観光地に変わった。
なぜそうなったかというと、当代は大の風呂ギライだったからだ。彼にとって風呂などサッと洗ってサッと出るだけ、烏の行水。のんびり寛ぐなど以ての外だった。
そうなると別荘は人を招く時だけに使われることになるが、いつ使うかわからないものに無駄な金を掛けるのは勿体ない。
『なら、稼ぐか!』
…というわけで、借地料と税金を得るために商人を呼び込んだ。
商売がしやすいように最初の年は税金を免除して借地料を半額だけ貰い、事業が軌道に乗るまで税金は何割か免除する。
周辺の農家の野菜・果物、猟師の獲ってきた獣肉・魚、養鶏の鶏肉・卵を使ってくれたら税金はその分安くすることも追加。卸す食材の価格は業者向けにするけど、住んでいる住人には今まで通り。
ついでに農家にも設備投資への優遇措置をだした。豊富な温泉の熱を使った温室を作れば季節外れの野菜や果物を作ることができて儲かる。設備投資で借金をする場合には指定の商会、又は領主に借りれば利息が少なく済むと付け加える。
勿論、無謀な投資をしないよう内容は審査するし、ちゃんと経営しているか公式で見まわりに来るし、たまに領主が変装してお忍びで来るので経営者たちは油断もできない。
最初は小さな宿数軒から始まった。温泉は怪我の治りや関節も楽になると評判も良く、料理の方は近所から届く新鮮な肉や魚・野菜を使っているので大変美味しく滋養もある。
温泉と料理でリフレッシュした客が次の客を呼んで徐々に客が増え、売り上げも増えて宿の規模が拡大。作った作物がどんどん売れるので農業も拡大。狩だけでは供給が追いつかないので畜産も魚の養殖も始まった。
商売が軌道に乗って高級な宿や別館が建ち、更に発展。そこへ仕事を求めて人も来る。人が増えると諍いも起きる。違法な者を取り締まる部署を増設。役所の仕事も増えるので優秀な者を募集。人は更に増えた。
そして時が経ち、国でも有名な観光地となった。街道も整備されて道の途中にある村にも人が増えて町に発展。…といった具合で周辺も栄えた。
ここまで発展したのは運も良かったのだろう。国家間の争い事も特に無かったし、天候が不安定になる事もなかったし、飢饉や流行病が発生したということもなかった。だから皆、安心して遠くから観光に訪れる。
観光から帰った者に話しを聞いて次の旅行者が来る。噂を聞いて貴族も訪れるようになる。貴族から高貴な者へと噂が広がる。国から専用の別荘を建てるよう領主に要請され、今では国王までが訪れる保養地にまでなった。
……という観光地の話は置いといて本題に入る。
これは観光地へ続く街道の幾つかある町の一つで起きた出来事である。
お読みいただきありがとうございました。