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猫人間  作者: ひなたひより
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第8話 役に立つかも

 ネズミを食べたトラ男の話を聞いて、大家の島津ハツ江は相当な関心を示した。


「そんな特技があるとは……」


 真由美はと言うと、さっきの光景を見たせいで今もやや青ざめている。


「このアパート結構ネズミが出るのよね」


 築五十年を先月迎えたこの島津荘は、ネズミの被害がしょっちゅう出ている問題物件だった。


「確かに僕もここに越してきてからもう何度も見てますね」


 安いアパートを探してここにたどり着いてからもう五年目、学生時代からお世話になっている研一は、もう慣れてしまっている程奴らを見てきた。


「私は春からなんでそこまでは……でも何度かそれらしい影を見たような」


 真由美は怯えながら口にした。


「よく今まで耐えましたね」


 よっぽど苦手そうな感じを見て忍耐強いのかと思った。


「ハムスターかと思ってました」


 そんな訳ないだろ!

 口には出さなかったが神経を疑った。


「折角こんな大きな猫が手に入ったのに、ネズミのせいで出て行きたくないな……」


 もう自分の所有物のような口ぶりも気になってたが、ちょっと可愛い自分の楽しみが出て行ってしまうのは我慢できなかった。


「なんとかならないか……」

「なんとかなりますよ」


 独り言のつもりだったのにトラ男はあっさりと返事した。


「ネズミがいなくなればいい訳でしょう」

「できるのか?」

「私を誰だと思っておいでですか」


 トラ男は黄色い眼をきらりと光らせた。


「その気になればこの地球上からネズミを一掃して御覧にいれましょう」

「うちのアパートだけでいいよ」


 ハツ江は地球上の事に関してはどうでも良さげだった。


「お安い御用でございます」

「じゃ、頼んだわよ」


 ハツ江はそう言って帰ろうとした。


「ちょっとお待ちを」


 トラ男が引き留める。


「なに?」

「申し上げにくいんですけど、ちょっとこれがかかりまして」


 トラ男は指でお金のかかることを暗に示した。


「いくら?」

「これぐらいかと……」


 大家とトラ男はなんだか隠れてお金の交渉をしている。

 そして硬く握手した。


「では、準備にかかります」

「ああ、早くやっとくれ」


 交渉成立。さて、トラ男の次の一手とは。

 果たして研一のちょっとした楽しみが出て行こうとしているのをトラ男は阻止できるのか。

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