第四話 友達(仮)増えました
大変お待たせして申し訳ありませんでしたああああああああああああ!!!!
前話の前書きの文章を引きちぎってやりたいくらい嘘をついてしまいました!
とりあえず、逃亡はしていませんので悪しからず。しっかりと続きを投稿していくので、どうか気長にお待ちいただけますと幸いです!(リアルが多少忙しかったもので…)
ということで、待望(?)の続きをどうぞご覧ください!
第四話 「友達(仮)増えました」
「お前ブオウソロ討伐したん??!!」
目ん玉が飛び出る程の勢いと形相で、ワンタンはUに詰め寄る。
「なんか、できたで。うん。」
あっけらかんとそう言い放つUに、ワンタンは呆れた顔をする。
「あのな、まだ初めて1ヶ月経ったか経ってないかのやつがブオウソロ討伐するなんて普通有り得へんで?」
「そうは言うても、できたもんはしゃあない。新しいエンブレムもゲットできたし、そろそろマルコ君と合流でもしよかな。」
歩き出そうとするUの前にワンタンが立ちはだかる。
「ちょちょちょ待って、マルコ君と最初の方一緒に居たけど、もしかしてマルコ君もUみたいな頭おかしい能力とかあるん?」
少し冷や汗のようなものをかきながらワンタンは言う。
「うーん、俺と別れるまではそんなこと無かったで、やから恐らくは持ってないと思う。なんで?」
その言葉を聞いたワンタンはどことなく安心したような面持ちになった。
「いや、Uがさ、そんなチート能力手に入れて更にマルコ君もってなったら、なんか俺の立場が無くなる気がしてな…」
Uは少し鼻で笑い、ワンタンの肩に手を置いた。
「なるほど、確かに後から始めた俺とかに圧倒的な能力差を見せつけられたらそら焦るわな。でも大丈夫や!俺もよう分かってへんし!」
清々しい程の笑顔を向けて、Uは颯爽と走っていった。
「なんかあいつで良かった気がするわ…」
遠ざかるUの背中を見ながら、ワンタンはそう呟いた。
一度初期村の自宅に戻ってきたUは、持ち物の整理を行い、チャットでマルコに連絡を取ってみることにした。
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U『マルコ君!久しぶり!今何してる?』
マルコ『おぉ、久しぶり!今は金策してるよ!』
U『そかそか!もし良かったらさ、後でもええから一緒にレベル上げとかせーへん?』
マルコ『全然いいよ!もうちょっとで目標金額に到達するから、待ってて!』
U『分かった!それじゃあフロールの村おるから、後で来てな!』
マルコ『分かった!』
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「よっしゃ、約束取れたしとりまフロール行こ。」
軽快な足取りでフロールの村に訪れたU。
フロールの村は、風の力を信仰する土地であり、自然に対する愛情が強いことが特徴である。
村の中央広場には巨大な風車があり、年中休みなく回り続け、村の電力を賄っている。
その中央広場に人集りができているのを見つけたU。
「ん?なんやあの人集りは、なんか事件でも起こったんか?」
興味本位で広場に近づく。
広場の中心で、オーガの男とドワーフの男、そしてエルフの女性が何やら言い争いをしている。
話を聞いている限り、3人でパーティーを組んでいたが、上手く連携が取れず全滅してしまい、それに腹を立てたオーガの男とドワーフの男がエルフの女性を責め立てているようだった。
一先ず3人のステータスを確認するU。
オーガ族♂ ボイルド 騎士Lv.54 状態 正常
ドワーフ族♂ エミル 魔法使いLv.55 状態 正常
エルフ族♀ メルト 狩人Lv.37 状態 正常
(3人ともそれなりに強そうやなぁ。)
鑑定していたUの耳にボイルドの怒号が響く。
「お前が上手く俺の立ち回りに合わせて動かねぇから俺がやりづらかったんだよ!!」
ボイルドは赤い顔を更に紅潮させながら怒鳴っている。
それに続いて、エミルも罵声を浴びせる。
「そうだ!君が上手く動かないからこうなったんですよ!僕はしっかりと後方支援していたのに、お陰で貯めていたゴールドが3/1になったじゃないですか!」
2人から責め立てられ、メルトは困り果てた顔をして立ちすくんでいた。
あまりの不憫さに思わずUは声を出してしまう。
「ちょっと貴方達、女性1人に対して男2人で責め立てるなんて酷いと思わないんですか?」
その言葉に気づいたボイルドとエミルは、Uの方に向き直り、声を荒らげる。
「なんだ貴様ぁ?!お前には関係ないことだろうが!引っ込んでろ馬鹿野郎が!!」
「そうですよ!貴方には関係の無いことです!黙っててください!」
2人の言葉にプチンと来てしまったUは、メルトの手を引っ張り、村の外に連れ出す。
「ちょっと、外に出ましょう。ここだと悪目立ちしてしまいます。」
メルトは驚いた表情をしながらも、言われるままに村の外に出る。
「おい、どこ行くんだテメェら!待てや!!」
急に立ち去ろうとする2人を、ボイルドとエミルが追いかける。
村の外まで来たところで立ち止まるU。
追いついたボイルドが徐にUの胸ぐらを掴む。
「お前いきなり出てきてなんのつもりだぁ?殺されてぇのかああぁん?」
さすがオーガ族、かなりの威圧感である。
「ちょっと落ち着いてくださいよ。あんな群衆の中で女性1人を責め立てるのも見栄え悪くないですか?おふたりさん。」
図らずとも煽るような口調になるU。これで悪気がないというのだからタチが悪い。
「確かにちょっと落ち着いた方が良さそうですね。ボイルドさん、一旦ここは気を沈めましょう。」
無いメガネをクイッとさせてエミルが言う。
「ちっ、分かったよ。でもこの話はしっかりケジメつけて終わらせないと俺の気が済まねぇぞ。」
少し落ち着きを取り戻したボイルドが頭をボリボリと掻いている。
静まった状況に、今までだんまりだったメルトがやっと口を開く。
「あの、私が悪かったところは確かにあったので、それは申し訳ないです。おふたりともすみませんでした。」
深々と頭を下げて、謝罪をするメルト。
それを見たボイルドとエミルも渋々謝罪をする。
「はぁ、良かった、こうやって落ち着いて話せば解決できる問題でしたね!」
安心したUは、嬉々とした表情でメルトの肩を叩く。
「それじゃあ、僕はこの後約束があるので、ここら辺で!」
そそくさと去ろうとするUに、ボイルドが声をかける。
「あ、おい、ちょっと待ってくれよ。これも何かの縁だろうし、とりあえず俺らとフレンド交換でもしようぜ。」
少し照れ臭そうに言うボイルドに、Uは驚いた顔を向ける。
(なんかやけに素直な奴やな、まぁ見た目にそぐわずそんなに荒い奴ではなかったんかもな。)
心の中の言葉を胸の内に押し沈め、Uは快く提案に応じる。
「そうですね、僕も始めてそんなに時間が経ってないので、友達が欲しかったんですよ。よろしくお願いします。」
営業(?)スマイルを向け、ボイルドとエミル、そしてメルトともフレンド登録をした。
「これからはよろしくな兄弟!出会いは良くなかったが、絆深めてこうぜ!」
鋭く尖った犬歯を見せはにかむボイルドは、Uの背中をポンと叩いた。
オーガ族ということもあり、思ったより強い衝撃にUは軽くよろけてしまった。
「僕も、先ほどは声を荒げてしまって申し訳ない。これからは仲間としてよろしくお願いしますね。」
エミルもかるく口角を上げ、Uに手を差し出す。
握手を交わした後、メルトとは軽く会釈だけを済ませ、素早くマルコのもとに向かう。
再びフロールの村の広場に訪れたUは、久方ぶりのマルコの姿を探した。
以前に遊んでいた時の服装は、初期装備である麻の上下服に、どこかで拾ってきたであろうレザー製の帽子を被っていた。顔は吊り目で、少し狐のような雰囲気を纏っている人物であった。
最も、Uは未だに服装、武器ともに初期装備のままであるが…
「あれぇ、おかしいな、もう広場に着いてるって連絡あったのに見当たらへんぞ。」
必死に辺りを見回すUの背後から、久しぶりの声が聞こえてくる。
「U君!こっちだよ!久しぶりだね!」
声のする方を反射的に振り返ると、そこには少し上等な装備を身に纏ったマルコの姿があった。
以前の初期装備ではなく、中堅のプレイヤーがよく装備している鉄製の鎧、そして戦闘職特有の装備である巨大な斧を背に携えている。
「おぉ、ほんまに久しぶりやなぁ。見いひん間にめっちゃ強そうになってるし、これはかなり置いてけぼりくらってるな。」
Uは少しおどけた表情でマルコに話しかける。
「いやいや、僕なんてまだまだだよ。先輩の冒険者に色々教えてもらってるからね。」
相も変わらず爽やかな表情で、嫌味のない口調をしている。
「そういえば、U君はまだ初期装備のままみたいだね。旅人バザーならいい装備が売ってあるし、良かったらなにか奢るよ。」
先ほど金策でたんまりお金を稼いだのであろう、マルコはかなり余裕な表情でUに奢る宣言をする。
「いやいや、さすがにそれは悪いし、俺は今の装備のままで困ってへんから大丈夫やで!」
少し焦り気味に奢りを拒否するU。
何故なら、レベリングの過程で使うことのないお金は当然の如く溜まっていき、そこいらのユーザーの何倍もお金を持っていたからである。
「そう?それならいいんだけど。」
不思議そうに首を傾げたマルコだったが、すぐに切り替えて今から何をするかの提案をしてきた。
「そういえば、この町の近くに少し難易度の高いクエストがあってね、それのクリア報酬がかなりのレアアイテムなんだ。良かったらそれ一緒にやらない?」
こころなしか、先ほどより目をキラキラさせてマルコは顔を近づけてくる。
「お、おう、もちろんいいで、とりあえず離れようか…」
どことなくワンタンの雰囲気を感じ、少し距離を取ってみたUであった。
フロール村からほどなく歩いたところに、一軒の小屋が佇んでいた。
「ここがそのクエストがあるとこなん?」
訝し気な表情をしたままUは小屋へと歩を進める。
「うん。ここなんだけど、やっぱり普段は人気ないんだなぁ。」
マルコの後ろを恐る恐る着いていくと、扉の前で急にマルコが足を止める。
急に止まられたこともあり、Uは思わずマルコにぶつかってしまう。
「おお、どうしたん急に止まっt…」
[しーっ、静かに!]
マルコは口元に人差し指を当て、Uの体を腕で制す。
[この扉の向こうにクエストを受注できるNPCがいるんだけど、どうやら先客がいるみたいだ。]
耳をよーく澄ませてみると、扉の向こう側から複数人の声が聞こえてくる。
「このクエストは、どうやら頭を使う系のクエストみたいだな。」
「そうみたいね。モンスターも出てくる気配ないし、あのお婆さんが言ってた『イシュタルの伝記』とかいう書物をこの小屋の中から探せばいいんでしょ?」
「あまり舐めてかかると痛い目を見るかも知れん。慎重に周りを探すんだぞ玉兎。」
「とは言ってもさぁ、この小屋の中に書物はあるってお婆さん言ってたじゃん?どう考えても狭すぎるし、難易度高いとは思えないんだよね。」
どうやら全員で三人おり、男性二人に女性が一人のようだ。
そのうちの玉兎という、恐らく女性の人物の名前を聞いた瞬間、マルコは形相を変え、Uの腕を掴んでその場を逃げるように後にした。
小屋から2kmほど離れた場所まで来たところで、やっとマルコはその足を止めその場にへたり込んだ。
「はぁはぁ、おいおい、どうしたんやマルコ君、はぁ、急に走り出して。」
先ほどの表情を変えないまま、マルコはUの方に向き直り説明を始めた。
「ごめんよU君。ちなみになんだけど、さっきの三人組のことは知らないのかい?」
少し驚嘆の表情を浮かべながら、マルコはUに問う。
「う、うん、全く知らんなあの人らのことは。」
「そうか、結構有名なんだけどね、はは。」
少し呆れたような顔をして言うが、すぐさま真剣な表情に戻る。
さっきの三人組なんだけど、恐らく玉兎と呼ばれていた女性、あの人はこのゲームでかなり有名なクラン、【月面兎】のリーダーであり、所謂ランカーという類の人なんだ。」
「ほうほう、ランカーかぁ、ようはこのゲームで取り上げられるくらい強い人ってことやんな?」
「そう、そういうこと。それで、玉兎がいるということは、他の二人はそのクランの幹部である、同じくランカーのオサガムとササカでほぼ間違いないと思う。」
「なるほど、でもその人らがいるからって特になんか問題あったん?」
「それがね、彼らはこのゲームで影響力があるにも関わらず、一部でPKを行っているという噂が出ているんだよ。」
「なんやて…村の外やから確かにPKは出来るけど、ほんまにしてる輩がおるなんて。」
少しショックな気持ちを抑え、マルコの話を聞き続ける。
「あくまで噂に過ぎないから、本当かどうかは断言できないけど、リスクを回避するに越したことはないからね。」
「そやな、死んだらお金とか装備落としてまうもんな。」
「それに、さっきやろうとしていたクエストは報酬が良いから恐らく周回するつもりだろう。あいつらがいる限り、クエストを受注できない。」
マルコは悔しそうに拳を地面に叩きつけた。
(うーん、マルコ君悔しそうやなぁ、これはなんとかしてあげたい…)
少し悩んだ末、Uにあるいい考えが思い浮かぶ。
「そうや!いい考え思いついたでぇ!」
急に大声を上げるUにマルコは声を上げて驚く。
「うわぁ、なんだよ急に大声出して、びっくりするじゃないか!」
「ごめんて、でもほんまにいい考えやし、あいつらだけじゃなくて俺らもクエスト受注しに行こう!!」
意気揚々としたテンションのUを見て、呆気に取られるマルコ。
「えーとU君?話聞いてたよね?あいつらはランカーでPKをs…」
「大丈夫!俺のプラン通りにやれば絶対クエスト受注できるから!ちょい耳貸してや!」
言われるがままUに耳を貸すマルコ。
「はえ?そんな作戦が上手くいくとは思えないんだけども…」
「いや、俺には自信がある!ほら、善は急げって言うし、とりあえず小屋まで戻るで!」
果たして作戦とは…上手くいくものなのか…
続く