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異電無頼結戦 ファントム・デストラクター  作者: 植木 早苗
序章 旅路の果て Journey’s end
5/10

第五話

『よし、セキュリティは乗っ取れたよ! 警備の警告(アラート)通信は却下(リジェクト)したし、監視カメラの映像もすべて上書きしておいたよ』


 グレムリンのネット経由でのサポートで警備員に気づかれないようにイントラのセキュリティを解除し終えたようだ。

各階の監視カメラにもハッキングしてループ映像を流すように細工も完了した。

これで階下にわざわざマッピングドローンに頼らなくても、ビルの内部構造は判明した。


『よし、データの場所も特定できたよ。目的地までナビゲーションするからよろしくね』


タイタンは状況を聞いて、階下へ向かうことにした。

真夜中にエレベーターが最上階まで動くのはどう考えても不自然なので、階段を使って地下へ向かう。

ビルは三十二階立てで、地下まで下りるにはそれなりの距離があるが、用心しながら下りる。


 階段は踊り場ごとに階層を示した数字付きのLED照明でぼんやりと照らされている。

↓31F 32F↑といった感じだ。

照明は人感センサで近づくと明るくなる。

警備員が巡回していたら、センサで明るくなった照明で誰かが階段を進んでいることがばれてしまう。


『グレムリン、階段の人感センサをオフにしてくれ』

『りょーかい。タイタンの移動にあわせて踊り場の階とその下の階をオフにしながら進むよ』


 タイタンはなるべく静かに、姿勢を低くして小走りで階段を下る。

ふと、階下から響く足音が聞こえた。タイタンは慎重に階段に手すりの下に身を隠し、踊り場の手前で待ち構える。

下の階の踊り場の照明が明るくなったところで、手すりから下を覗く。

階段を登ってくる警備員を監察する。

やや小柄だが、がっちりした体つきで口元は鋭く伸びた犬歯が、手には鋭い爪が見える。肌の色は薄い緑。

ゴブリンの警備員だ。

タイタンは手すりを乗り越え、警備員を頭上から襲いかかる。

頭上から近づく影で警備員は異常に気がついたが、もう手遅れだ。

『わるいな』、とつぶやくタイタン。

組んだ両手の拳をゴブリンの警備員の頭上にめがけて振り下ろす。

回避できずに脳しんとうを起こし意識を失う警備員。

すばやく、猿ぐつわと手足を拘束し、そのまま転がしておく。

タイタンはついでに警備員の武装を確認しておく。テーザーと警棒、ハンドガンだ。

依頼をこなすには相手を殺す事もあるが、いらない恨みを買いたくもないので、殺さないですむなら無力化するだけにとどめる。

まあ、こんな簡単に無力化されたとなると警備員の仕事はクビになり、結局、恨まれるのかもしれないが……。

再度、階下を目指す。移動中、もう一人、見回りの警備員を無力化して目的の地下一階に到着した。


 地下の入り口の扉のロックは静脈の生体認証方式でイントラ経由でも解除できない。


『このセキュリティは直接は突破できないね。生体認証のキーパターンは入手できたから、能力で突破してね』

『ああ。じゃあ、パターンデータをダウンロードしてくれ』


生体認証のパターンデータはサーバーから入手できたので、特徴点の情報をタイタンの網膜(レティナ)ディスプレイに表示する。

タイタンは右の手のひらを顔に向け、盲目ディスプレイの映像と重なるように調整する。

パターンを凝視して、特徴点を確認し、アストラル体現(エンボディ)で手のひらを薄く実体化する。

精神を集中させ、実体化した手のひらに静脈の特徴点を映像とまったく同じパターンを一つ一つ再現していった。

映像と全く同じに再現した手のひらを生体認証装置にかざす。

扉のロックは解除され、自動ドアが開く。

成功だ。

タイタンにとって目で見た構造物を自分の手で再現することは、子供の頃からずっと練習してきたことだ。

目で見て他人の技を盗む。その技術を自分のものにして更に磨き上げる。

それこそが修行とずっと言われ続けた、匠の技の世界で生まれ育った。


『グミの指より優秀だよね』とはグレムリンの言。


 地下へのセキュリティを突破した後、地下三階まで下って、ようやくデータセンターのコアに侵入した。

データセンターのコンピュータはビルのセキュリティのイントラからも断絶している。

外部から接続させないのはデータの流出を防ぐ一番の方法だ。

ここのデータにアクセスするためには、自ら足を運んで、直接データベースに接続するしかない。

不便さこそが最大のセキュリティ。

だからこそ、この仕事、始末屋ファントム・デストラクターが成り立つのだ。

このデータベースにも無線モジュールを接続し、グレムリンにハッキングを依頼する。

地下三階なので電波も届きづらいが、この無線モジュールは高出力で電波を出力するように改造されいる。

もちろん、基準を逸脱したデバイスだが、そもそもデータセンターに無断で侵入、襲撃している時点でどれだけ違法に手を染めているのかという話なので、電波の出力程度のことを気にする方がどうかしている。


『どのくらいでいけそうだ?』

『うーん、ちょっと防壁が多いね……ちょっと時間がほしいかな』


データベースにアクセス出来ないとはタイタンもグレムリンも微塵も考えていない。

いままでネット経由でグレムリンに破れなかったセキュリティはないのだ。

タイタンはグレムリンのハッキングの腕前だけは無条件に信頼している。

そのグレムリンでもここを乗っ取るのは手こずったようで、2、3分(・・・・)の時間がかかった。


『よし、セキュリティは突破してルート(管理権限)は乗っ取れたよ。あとは依頼のデータを見つければ……』



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