異世界生活・1日目 遂に、念願の…!
なんで異世界転生系の物語の舞台って、ヨーロッパ系が多いんですかね?
「さてと、取り敢えずギルドの場所を聞くために大通りに出たけど、誰に聞けばいいんだろうな?」
リリエッタお嬢様と別れ、大通りに出た俺は、聞きこみをするため、しばらく道行く人を眺めていたが、どうにも「人間」ってぽい格好が見当たらない。ドワーフとか獣人(ただし、獣耳っ娘ではない)っぽいのはよく見かけるんだけど…。
「あの〜すみません、今ちょっと大丈夫ですか? 少しお聞きしたいことがあるんですけど…。」
仕方がないので、近くの露天商に聞くことにした。ちなみに、こいつもドワーフだ。
「あぁ? なんだお前、もしかして新入りか?」
口調が怖いって、○クザみたいだな…。
「ええ、まあ。それでこの街の『ギルド』を探していたんですが、場所を知っていたら、教えてくれませんか?」
「ギルド? ああ、あんた冒険者か? にしては、エラくヒョロい体つきだな。
まあいい、ギルドなら、向こうに見える5階ぐらいの建物があるだろ? あれだ。」
ドワーフの露天商が指差す方に顔を向けると、確かに周りよりも一際大きなレンガ造りの建物が見えた。
…だいぶ遠いな。
「なるほど…。わざわざありがとうございます!
ちなみになんですが、ここら辺、結構ドワーフや獣人の方が多いみたいですけど、この街は大体こんなものなんですか?」
「んなわけあるか。単に、ここの区画に住んでるやつが俺みたいなヤツばっか、ってだけの話だ。全体で見れば、人族のヤツらが大半だろ。」
「種族ごとに棲み分けされているんですか?」
「そうじゃねえ。俺らとあいつらだと、種族が違うから、考えることも言葉も違えだろ?
そんなんで、気ぃ遣うのは互いに面倒だ、ってことで同じ見た目のヤツらが集まったんだよ。」
なるほどなるほど、考え方や言語の違いか。
ん? 待てよ、『言語の違い』?
「あの、言葉って皆一緒じゃないんですか?」
「ああ? 何言ってんだお前。んなわけねえだろ。
というかな、俺の方が驚いてんだぜ。人族の見た目のクセに俺とまともに会話できんだからな。てっきり、そういうのを生業にしてるヤツだと思ってたぜ。」
うっそマジかよ。俺、異世界でバイリンガルになっちゃったぜ! すげええぇっ!
「いえいえ! 冗談です、冗談。実はまあ、そうなんですよ。これぐらいしか能がなくて、何とかやらせていただいてます。」
「すげえじゃねえか。それなら、稼ぎもいいんじゃねえか? 道を教えたからよ、何かお礼ってことで、俺のモン買って行ってくれよ。」
「そうしたいのは、山々なんですどね、生憎、今はすっからかんなんですよ。またいずれお礼をさせてもらうので、今回ばかりは許してくれませんかね?」
「ちっ、まあ仕方ねえわな。だったらツケってことでよ、俺はいつでもここにいっから、よろしくな。」
「はい! では、道を教えてくれて、ありがとうございました!」
そう言って、俺はドワーフの露天商と別れた。
ムフフ、俺って、もしかして結構スゴい奴なんじゃね?マジ市場価値高くね? だったらもうこれ余裕でしょ。
そんな気分で『ギルド』を目指す俺の足取りは軽く、
時折、建物の窓に冴えない格好をしているやつが映っても、心なしかイケてるヤツに見えていた。
「遂にとうちゃーく! 待ってろよ、俺のバラ色人生!」
数分後、そんな幻想はズタズタに引き裂かれ、俺のメンタルはボロボロになっていた。
「…………。」
「ですので、今のあなたでは、望みの報酬が得られるようなクエストを受けることが出来ません。って、聞いてますか?」
ええ、きいてますとも。ホント、心に強烈に効いてますって。だからもう、勘弁して。
「もうっ! なんなんですか、あなたは! 意気揚々とやってきたくせに、今度はテーブルに突っ伏して!
今、説明中なんですから、最後まで話を聞いて下さい!」
うるさいなあ、この受付嬢。せっかく顔とかは良いのに、なんでこんなヒドイこと言うの?
「聞いてますよ。だから俺は、なんの価値も無いヤツなんでしょ。いいよもう、冒険者なんて元々俺には向いていなかったんだ。」
「だから、そうじゃなくて! ハァ、本当に面倒臭い人ですね。いいですか?
私は申し上げたのは、今のあなたの能力値では、あなたの望み通りの事をするのは、無理がある、ということです。
ですので、希望よりも低い報酬ですが、あなたに合ったクエストを紹介しようとしているんですから、ほら、顔を上げて。」
「俺に合った仕事?」
「ええ、そうです。見た所、あなたは言語能力において特に秀でた力を持っているようです。
それ以外の、普通は冒険者なら当たり前なのですが、戦闘能力であったり、サバイバル能力に関しては、基準を下回っています。そちらの方は、また後で付けて行けばいいだけの話なので、気になさらず。
それより、先程も申し上げましたが、言語能力に優れ、多少の偏りがありますが、会話も出来る。ならば、ここのギルドの通訳として働くというのはいかがですか?」
えっ? 俺ギルド職員になるの? 冒険者じゃなくて? ああ〜、なるほどね。まあ、そっちの方が安全そうだし、いっか。
「いいんですか? 俺で。」
「構いませんよ。むしろ、そういった方があまり多くなくて、丁度欲しい所ではあったんです。」
「それじゃあ、報酬もそこそこいい所に?」
「そんなにお金が欲しいんですか? 残念ですが、報酬は 1日40ドルカです。」
「ええっ〜!? そんなん、1番安い冒険者の報酬の 4分の1 ぐらいじゃないですか!?」
「ギルド職員としては、そこそこいい報酬ですけどね。そんなに嫌なら、どうぞ冒険者にでもなって下さい。ハッキリ申し上げますが、あなたは直ぐに死にますよ。」
そう言うと受付嬢さんは席を立ってさっさと戻ろうとしていた。
慌てて俺は、受付嬢さんに追いすがった。
「すいません! すいません! やります! 是非やらせて下さい! お願いです!」
振り返った受付嬢は呆れた顔をして、俺の方を見ていた。
「ハァ、本当に面倒臭い人ですね。いいですよ、それでは、明日からよろしくお願いします。その時に仕事内容などを教えますので。今日はもう帰ってもらって大丈夫です。」
そう言って受付嬢さんは仕事場に戻って行った。
やった〜! 内定だ〜!
遂にようやくこの世界で生きていく術を見つけることが出来た! もう、何も怖くない!
ってあれ? そう言えば、俺、今日この後どうすればいいんだ?
住むところもなければ、金もない。
俺はしばらく、その場で呆然と立ち尽くしていた。
※1ドルカ=50円くらいだと思っておいて下さい。あまり細かくは考えていないです。
こんばんは。流れゆくモノです。
何とか短いスパンで次話投稿出来ました。
えっ? 遅い? ごめんなさい。今はこれが限界なんです。大目に見て下さい。
さて、明日は週末! というわけですが、東京では外出自粛要請が出てるみたいですね。折角、明日映画を見ようとしていたのに、残念です。
それはさておき、読者の皆様、くれぐれも体調にはお気をつけ下さい。いつ、どこで感染するかは分かりませんからね。もうすぐ新年度が始まります。良いスタートを切るためにも、ご自分の体を大事になさって下さい。
ではでは。